見出し画像

キャラクターはキャラクターに伝えたい

 キャラクターはその心中を、「伝えるべき」言葉として発さなければならない。それは当たり前のことのようであるが、実際にはそれは中々に難しい注文だ。状況説明やテーマ性のアピールはもとより、この先の展開の示唆、実際のところはモノローグでさえ、キャラクターに違和感なく言わせるのは大変である。
 それらは全て、寒々しい説明セリフ、作者都合の独りよがりだ。つまりキャラクターのセリフとは、到底言えないものなのである。

 あらゆるキャラクターのセリフは、少なくともまず、その対象がキャラクターでなければならない。作者でもないし、作品の受け手でもない。そしてそのことは、基本的に徹底されなければならない。基本的にとは、できる限りそうであるべきということだ。あらゆる場合において、キャラクターは他のキャラクター(そして自分自身)のことを忘れてはならない。声をかけるべきはキャラクターであり、説明すべきはキャラクターに対してであり、そのセリフの意味を了解すべきは、その対象となったキャラクターであるということである(そのことをきちんと満たしていれば、同時にそのセリフが、作者や受け手に対していても多少は許される)。

 このような、キャラクターのセリフのルールが守られなければ、なんのためにそのキャラクターがいるのか、そのセリフが発せられたのか分からなくなる。遥か頭上から私達を見下ろす神と会話ができる人間がいないように、キャラクターが言葉を発するのは、その世界に存在するキャラクターに対してなのである。

※このテーマに関する、ご意見・ご感想はなんなりとどうぞ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?