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言い切るセリフの大切さ

A「あのっ、今日のお昼ご飯一緒にーー」
B「あーっ!? 俺財布持ってねぇじゃん、忘れた!」
B「……ってなんか言った?」
A「う、ううん……なんでも……」
B「そっか、じゃまた明日な!」
A「わ、忘れ物なら一緒にーー」
B「んじゃ、気をつけて帰れよー!」
A「…………」
A「……はぁ」

キャラクターが何かを話しているときに、それを遮るような形で会話が進むことがある。
誰かが言いかけ、しかしそれよりも注目すべきことや主張したいこと、突発的な出来事などがあり、セリフが途中で立ち消えになる。

これは、ストーリーを前に進めるためには役に立つ。
日常的なやりとりをしながらも、ただ会話をしているだけでつまらないということを防ぎ、変に説明せずにテンポよく物語を展開していける。

しかし、これは実のところ、あまり良くないやり方だ。
何故ならば、セリフを最後まで言わないことは「謎」になるからである。
それは一般的に作者にしかわからず、ひとりよがりで、読み手のストレスになるものだ。
ヒントがあり、正解が提示されてはじめて、謎は読み手にとって気持ちの良いものになる。

だから、セリフを最後まで言わないこと、遮られることは、物語の結末を描かず尻切れトンボにする行為に等しい。
それはとにかくストレスで、連続して使えばそうするほど、作者と読み手の認識している情報のズレが大きくなってしまう。
何が結論かわからないまま物語が進行することに、気持ちよさを感じる読み手は少ない。

最終的に、そのキャラクターそのものがわからなくなる。何を考えているのかわからないキャラクターは、好かれることはない。

だから、きちんとヒントや正解を提示する予定がないのに、キャラクターにセリフを言いよどませたり、遮らせたりしてはいけない。

A「あのっ、今日のお昼ご飯一緒に……いけないかな
B「あーっ!? 俺財布持ってねぇじゃん、忘れた!」
B「……ってなんか言った?」
A「う、ううん……なんでもない、よ
B「そっか、じゃまた明日な!」
A「わ、忘れ物なら一緒にいくよ?
B「んじゃ、気をつけて帰れよー!」
A「…………」
A「……はぁ、またちゃんと誘えなかったな……

このように、全て言い切ってしまって良い。
とにかく、答えのない謎を残すことだけは避けるべきなのだ。

作者と読者の距離は、作者が思う以上に離れている。
だからついつい、セリフを言い淀ませ、遮らせても、本来言うはずだったセリフは伝わっていると思い込んでしまう。

けれど、それは難しいことだ。
そのために、言い切りは重要なのだ。
もし言い切らせたくないなら、きちんとヒントか、解答を用意しよう。

セリフが途中で切れるのは、読み手にとって「謎」である。
そういうことを認識して、キャラクターに喋らせる言葉を選んでいきたい。

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