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今回のおすすめ本 プラトン『国家(上)』

みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、プラトン『国家(上)』という本です!以下では収録されている巻ごと(全5巻)に見ていきます。

「第1巻」

 本巻では、まずソクラテスとケパロスによって「老い」について議論が行われます。ケパロスは老いを否定的に捉える人が多い中、肯定的に捉えています。しかし、ソクラテスはケパロスが金銭的余裕を持っているからだと指摘します。ケパロスはソクラテスの意見に肯定しながら、「正しさ(正義)を実行した人」には金銭が最大の効用となる、と結んでいます。これに疑問(正義が常に通用するのか?)を持ったソクラテスですが、ここからはポレマルコス、トラシュマコスが次々に相手となり、「正義」についての見解について議論が展開されていきます。
 現在でも「正直者が馬鹿を見る」と言います。では不正を行うことがいいのか、感情論ではなく論理的思考(問答法)によって考察しています。

「第2巻」

 本巻では、引き続き正義について議論が展開されます。ソクラテスは正義と不正を考えるために、国家について考えてから個人に当てはめて考えることを提案します。この国家→個人という思考が今後の軸となります。まず国家は衣食住のような生活に必要なものをはじめとして、「必要性」がある物・人によって満たされ、この必要性は際限なく膨らみ、これが国同士の戦争の火種になることが示されます。そして国家を支える人(守護者)はどのように教育されるのかに議論が移ります。教育の初期においては「徳をめざす」ことを目的として物語を聞かせるべきだとソクラテスはいいます。それは徳のあるもの(神など)は必ず善き者であるからです。
 言動する基準に神(=善き者)を置けば、正義を貫く人間性を育めるということでしょうか。

「第3巻」

 本巻では、前巻の内容をさらに推し進めて議論が展開されます。ソクラテスは、特定の物事に精通することの重要性を強調しながらも、それだけを専らすることは否定します。例えば、スポーツ選手などの身体を用いる職業では、選手たちは日々スポーツだけ専念していたらどうなるでしょうか。おそらく身体のどこかを損傷したり、性格が粗野になっていったりするでしょう。後者の一因として、専念するということは「音楽を聴いてはいけない」「本を読んではいけない」など、他の分野に手を出すことが禁止されているからです。また、柔和な性格を持っていても限度を超えると怠惰な性格に堕落してしまうことも想像できると思います。ソクラテスはこうした特定の物事にのみ専念することを危険視し、善き人に必要な分野を限度を超えない範囲で調和させることを主張しています。そして国の守護者たちに、この調和を求める条件の元に法を制定することを提案します。
 本巻で述べられていることは、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」という意味に近い気がします。

「第4巻」

 本巻では、国の守護者たちに課する項目があげられていきます。まず過度に富貴・貧乏であることを避けること。次に国土は適切な大きさ、能力の高い人を家柄に関係なく登用することなど。これらは「教育と養育」が維持されることで発揮されるものとソクラテスは言います。そして国家の条件には「知恵」「勇気」「節制」「正義」を備えることとしています。前者二つについてはこれまでの議論で説明されました。節制は調和に似ているもので、国家の全ての人において必要となるものとしています。そして重要な正義について語られていくことになります。
 正しい行いをすることが正義で、それは個人でも国家でも同じという思考は理解できます。しかし、国家の方は容易くいくものではないように感じます。

「第5巻」

 本巻では、まず国家において男女が仕事を共同して行うべきかが検討されます。特定の性に固定された職というものはなく、それぞれに向いている職を全うすることが提案されます。そしてこれが実現可能かどうか、どのようにして実現可能になるのかという議論がはじまります。この議論の前提として、「完全に実現できる」ことを証明するのではなく、「どうすれば近づけるか」に重きを置いていることに注意が必要です。それは「言葉で語られる」ことと「実際にできること」には隔たりがあるからですね。現在でも「理論上は可能」のように使用される事例が散見されると思います。そしてこの議論の中でプラトン哲学の中心思想「イデア論」が本篇で初めて述べられることとなります。
 理想を達成することも大事ですが、理想を掲げて少しでも近づけていくことが堅実だと思います。世の中で理想とされていることで100%実現しているものはどれだけあるでしょうか。一人の人間でさえなかなか挙げることは難しいと感じるので、国家であればなおさらでしょう。

 本作では上巻ということもあり、「どうやって検証していくのか」という方法の説明を兼ねていた印象があります。下巻では引き続き議論が重ねられていき、理想の国家が描かれていくと思われます。一緒に追っていきましょう。

ぜひお手に取って読んでみてください☕️

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