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今回のおすすめ本 プラトン『パイドンー魂の不死についてー』

みなさんこんばんは📚
今回おすすめするのは、プラトン『パイドンー魂の不死についてー』という本です!
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 本作は、ソクラテスが告発され刑死した後にエケクラテスとパイドンが話をする場面から始まります。パイドンはソクラテスが刑死する早朝、ソクラテスの弟子たちともにソクラテスのもとに集まっています。ソクラテスは早朝から日暮れまで「魂の不死」について哲学的対話をしたとされ、その内容がパイドンによって明かされていきます。

 ソクラテスは、人間は神の所有物であるため自殺はしてはいけないとしています。しかし、ソクラテスは刑が確定されてるとはいえ「死」を肯定的に捉えています。神の所有物である(=庇護下にある)
ことから離れてしまうのに、なぜソクラテスは平静でいられるのでしょうか。ソクラテスは「哲学者とは死ぬことの練習をしているもの」とし、死とは魂が身体から分離するだけであり、哲学者は魂となるだけで根源的に死ぬわけではない、と考えています。ここでソクラテスの友人ケベスは「人が死ぬと魂と身体が分離したとして、すぐに魂は消え去ってしまうのではないだろうか」と反論します。ここからソクラテスの哲学的説明と証明が展開されていきます。


 ソクラテスとケベスの対話の中で睡眠が例としてあげられています。人は目覚めている状態から眠りを生じさせ、眠りの状態から目覚めを生じさせます。この両者には二つの生成があるといえます。では生と死に当てはめるとどうでしょうか。生から死が生まれるのはわかりますが、死から生は生まれない(ゾンビならともかく)ことがわかります。つまり、「あの世(ハデス)が存在する」のであれば、肉体ではなく魂があの世に行き、あの世に行った魂が現世に生まれることとなります。そしてソクラテスはあの世が存在する根拠として、「生者が死んだ後に生き返らないのであれば、最後には生きている者は何もない」ことをあげています。しかし、現代ではこの考えを受容れる人は少ないでしょう。

 一方で、「学習は想起である」という説明は理解ができると思います。人が何かを見て頭に何かを想い浮かべるとき、それ以前に経験している必要があります。例えば、「怖い」という感覚は以前に怖いと感じる経験をしていることが前提として生じるものです。これを突き詰めて遡っていくと、生まれる前に何かしら「経験をしている」ことになります。ソクラテスはこれを踏まえて、学習とは「新しいものを学ぶ(経験する)」ことではなく、「すでに学んだ(経験した)ものを再把握する」ことと考え、これが想起することであるとまとめています。ここから魂が生まれる前に存在している(生まれる前に経験している何かがいる)ことが証明されます。

 次に、魂が死んだ後に存続するか証明が行われていきます。
 ケベスは前述した「魂が生まれる前に存在している」というソクラテスの話を聞き納得します。しかし、ケベスは「魂が死後も存続するとは限らないのではないか」と考えています。例えとして、衣服が挙げられています。人は生きている間に衣服が壊れると何度も衣服を交換します。衣服は人が死んだ後も、その人が身につけていた衣服は残り続けるでしょう。ここでは基本的に人が死ぬ時、人の肉体は衣服よりも先に消えてしまうことがわかります(人が死んだ後に火葬など何もしないで放置すれば衣服よりも先に肉体が滅びますね)。
 この例えは魂と身体にも当てはまります。つまり、魂は身体を乗り換える(交換する)ことを繰り返しますが、最終的には身体を残して魂が先に消えてしまうのではないかとケベスは疑問に思っています。これは魂は消耗品であり、使えば使うほど残量が減っていくイメージでしょうか。

 ソクラテスはケベスの疑問に対して、いくつか例を挙げて返しています。その一つとして「熱と冷」がわかりやすいと思います。熱は温度が高い状態であり、熱という言葉(状態)には熱の反対概念(イデア)である冷は含まれていません。同様に、生には魂が不可欠であることから、生のイデアである死には魂は含まれません。つまり、魂は不死であることを示します。そして魂が不死ならば、それ即ち魂は不滅であることとなります。


 そして、魂が不死であることが証明されたということは、死ぬことが救いにはならないということです。もし身体の死と同じく魂も死ぬのであれば、善く生きることよりも不正を犯して生きる方が楽になります(他作品でも登場しているものです)。しかし、魂は不死であり、善い生き方を行うことでしか自分自身、ひいては魂を救済することはできないとソクラテスは結論付けます。

 ソクラテス(プラトン)は基本的に二元論で証明を行っているため、そのまま鵜呑みにすることはできないと思いますが、現代では非科学的として排除されてしまう魂などの目に見えない概念は、文学や哲学として考えてみると面白いものだと思います。


是非お手に取って読んでみてください☕

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