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生産者の想いに触れることで生まれる新しい消費の価値 #日経COMEMO #国消国産なぜ必要

日経COMEMOのこの企画 #国消国産なぜ必要 について、最近取材などでよく耳にする「人の想いに触れる価値」から考えると面白そうだなと思ったので、その観点から考えたことを書いてみます。

まず、この「国消国産」という言葉はこういう意味で使われている言葉とのことです。

ふつうは地産地消という言葉のように、「産」のほうを先に言います。ただこれでは国内で作ったものを国内で消費するというだけの意味になりかねません。そうではなく、国内の消費で必要な分を、国内で生産する。自由貿易を否定はしません。すべての食料を国内で生産するのも現実的ではありません。できるだけ国産でまかなうべきだという意味で、国消国産という言葉を使っています。

「国消国産なぜ必要」という問いに対しての回答は、パンデミックのように食料の輸出入が滞る場合に備えて必要という話だと思います。もう一つの「どうすれば国内で必要な食料を国内で供給できるようになる?」という問いを考えるにあたっては、供給側の視点で見るのではなく、食料を必要とする生活者、顧客側の視点で考えてみるとよいのではないでしょうか。

顧客の視点で国消国産を考えてみると

国産の食料ではなく海外産の食料を顧客が選ぶ理由は、価格だけでなく感情など心理面なども含めて、顧客がトータルで感じる価値が「国産の食料<海外産の食料」となっているとも考えられるのではないでしょうか。そもそも流通の問題もあると思うので、一律に述べることはできませんが、国産と海外産の食料を比較し、例えば価格に開きがあったときに、顧客が価格差を越える価値を国産の食料に感じていないのも一因にはあると考えられます。

つまり、顧客の感じる価値が「国産の食料>海外産の食料」となるためにどのような価値を国産の食料に付加できるかを考えることが、この問いへの回答を考える一つの方法ではないでしょうか。

どうすれば国産の食料の価値を高めることができるのか

価格や味のような機能的な価値を大幅に変えることができない場合、感情/情緒などの心理的な価値、個人の文脈/経験的な価値を付加することが考えられます。そのために例えば、「国産食料の安全性」を改めて伝えて信頼を得るという方法があります。しかし、この方法は今までもよく目にしていたので、これだけではその価値の差は埋まらない場合もありそうです。

価値を高めるための方法として、最近注目しているものがあります。それは、野菜や魚、肉などを生産者から直接購入できるポケットマルシェや食べチョクのようなサービスです。

農家や漁師など生産者からオンラインサービスを介して直接購入でき、産地から食料が直送されるので、新鮮、旬という側面があります。しかし、そのような機能的な価値だけではなく、生産者の顔が見える、生産者の想いに触れることができるという心理的な価値を付与できるのが大きいと考えています。

例えば、重佑さん(仮名)という生産者が育てた野菜があるとして、その野菜を育てるにあたっての想いや苦労、畑や家族の歴史、この野菜はどのような調理方法が合うのかという情報も一緒に届けられると、ただの野菜の消費以上の体験となってきます。また、このようなオンラインサービスが可能にするのは、一度きりの情報の伝達ではなく、繰り返しの交流です。

重佑さんという生産者と久介さん(仮名)という顧客が何度もメッセージのやり取りをしていく中で、今までとは違う関係が生まれていきます。野菜に関するやり取りから、普通に生活をしていたら知ることがなかったお互いのライフスタイルや考え方を知ったり、久介さんが重佑さんの畑を訪問したりと、人と人との交流により新しい価値が生まれる可能性があります。

人と人とが直接つながることで、単なる商品の提供者、受領者という関係ではなく、お互いから影響を受けることになります。商品を介してお互いの考えや「人」そのものに触れることで、また違った出会いや気づきが生まれます。生産者に興味を持つことで、コモディティ化された消費から、食料の背景や意味をも含めて消費する生活に変わってくるのではないでしょうか。

効率的な物流や販売など、中央集権的に商品を届けるアプローチは、等しく食料を行き渡らせる方法として優れています。しかし、現代の日本のようにかつてよりモノの側面では豊かになった時代では、生産者の想いを削ぎ落とさず、直接顧客に届けるような分散的な仕組みもあるべきだと考えます。

テクノロジーとサービスの進化により、生産者と顧客が直接つながることがより簡単にできるようになってきました。それは、生産者の想いを顧客に直接届けるとともに、お互いで価値を共創していくアプローチとも言えます。そこで生まれる価値が国産の食料に新たな価値を付与してくれると、我々は国産の食料を選ぶ機会が増えていくのではないでしょうか。

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Cover Photo by Dan Burton on Unsplash


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