川勢 七輝

かわせななきと申します。読書、音楽、芸術、猫が好きです。

川勢 七輝

かわせななきと申します。読書、音楽、芸術、猫が好きです。

マガジン

  • はじめまして地球さん、私オレンジジュースです

    彼氏と別れて以来、すっかり恋愛とも疎遠になっていた寧々。 彼女の唯一の楽しみは、音声SNSで親しくなった人たちとの会話やオフ会だ。 ある日、寧々がホストのルーム闖入者が現れ……。 【登場人物】※()はSNSのハンドルネーム 岩月寧々(地球) 三七歳。三年前に別れた彼が原因で夜間摂食症候群に。音声SNSで仲間を見つけたことにより、現在は落ち着いている。彼氏なし。 串田留衣(OJ) 三二歳。友人の結婚式で酔って醜態を晒すなど、破天荒な部分もあるが素直で真面目な部分も。コントラクトフードサービス企業に勤務。レズビアン。 森 胡桃(もぐぐみ) 四〇歳。アメリカ留学中にベジタリアンに。家業の豆腐屋を継ぐ。独身。 関口 菖人(ショット) 三一歳。英会話教師講。ベジタリアン。 駒井 沙穂(Koma) 三一歳。双子の母。摂食障害。 内田 雄星(ゆうせい) 二〇歳。フレキシタリアン。ゲイ。

  • メンタルがやばいときは、本をひとかじり

    だめだ、どうしても気力が湧いてこない。 本の中には、救いの言葉がたくさんあるのに、本を読むことすらできない。 そんなときに救われる、笑える、トリッキー、やべえなこいつ、感動する、さまざまな一節をご紹介します。 毎週金曜更新(仮)。

  • 「読むためのトゥルーイズム」を読み、『浮遊』を「読む」

    『文學界』にて連載がスタートした「読むためのトゥルーイズム」。この連載は、「文章をどう読んだらよいのか」を課題としている。 そこで、非常に読みやすく、おもしろいのだが、そこに書かれている内容を果たして私は本当に「読めて」いるのだろうか、と疑問がわく遠野遥さんによる『浮遊』に挑んでみようと思う。 このマガジンは、書評なんてとんでもない、とはいえ感想文でもない、そこに何が書かれているかを読むことを目的としたものである。

  • 大人だけど読書感想文

    書評という言葉を使うには、自分ごときの文書では少々憚れる。でも、面白い本が山ほどあるので誰かに伝えたい。 そうだ、読書感想文と言えば幼女を見守るあたたかい気持ちで流してもらえないだろうか?!と、そんな皆様の善意を期待してはじめました。

  • 記憶がぽろぽろ、備忘録。

    ここに書くこと。 よかったと思うこと。美味しかったもの。ネガティブなものは残さない。未来の自分へ少しでも明るい話題を提供。

最近の記事

『初めまして地球さん、私オレンジジュースです』第四話串田留衣編「悪役令嬢症状」

 虫の知らせ、とは少し違うのかもしれない。でも、昔から最悪なことが起こるときは兆候があった。小学校からの帰り道、ぼとりと鈍い音をたてて足元に雀が落ちてきた。周囲に人影はなく、おそらく空から落ちてきたんだろう。アスファルトの上で雀は暫く痙攣したあと、剥製のように硬直してしまった。怖くなって走って家に帰り、手も洗わずにリビングへ向かった。すると携帯を握りしめたまま呆然と突っ立っている母がいた。「留衣、おじいちゃんが……」そう言って母が泣き崩れた。  祖母のときもあった。友達とでき

    • 『はじめまして地球さん、私オレンジジュースです』第三話「影響は私の栄養になるのか」岩月寧々編

       やめなよ みんながいじわるみたいで 萌音 かなしい   本当に、来たんだ。 「この間はすみませんでした」  OJことオレンジジュースさんは、ルームに参加するなり開口一番謝罪の言葉を述べてきた。いやべつに、謝ることは悪くない。むしろ素直で良いことだ。ただ、彼女の謝罪を受け入れたくない自分がいた。 「いえいえ、むしろこうやってルームのメンバーが増えるのは嬉しいです、ね、地球さん」もぐぐみさんはきっと私がすぐに返事ができないと察したのだろう。代わりに破天荒な新参者をうまく対処し

      • 『はじめまして地球さん、私オレンジジュースです』第二話「清算するには凄惨を」串田留衣編

         オ オ オーレンジジュース   オレンジジュースを搾り出す  私の体から 「はじめてですか?」  キューブリックの『2001年宇宙の旅』ぜったい好きでしょ、と声に出しそうになった。出さなかった、と思う。白を基調とした近未来的な壁と床、そしてアンティーク調のソファと受付カウンター。中途半端だったらかなり如何わしい雰囲気になるけど、ここは徹頭徹尾やりきっている感じ。キューブリックへのオマージュ映画のセットと言われても納得できる。ううん、違う。そんな軽いものじゃなくて、この空

        • 『はじめまして地球さん、私オレンジジュースです』第一話「場違いは間違いじゃない」岩月寧々編

           気づかないわけなだろ 目の前に俺と萌音が歩いていたんだぞ あのさ 寧々のそういう善人面 俺正直すげぇ気持ち悪かったんだよ ずっと  ちがう ほんとうに気がつかなかったの あのね聞いてほし……  もういい これ以上話したくない 恨まれながら友達のふりするのが苦しいって 萌音泣いてたんだぞ  シンガー、だけど歌手ではない。  シンガー違いだ。  私たちの音声SNSのルーム名を冠するシンガーは、『動物の解放』『なぜヴィーガンか?』の著書で有名な哲学者ピーター・シンガーのこと

        『初めまして地球さん、私オレンジジュースです』第四話串田留衣編「悪役令嬢症状」

        • 『はじめまして地球さん、私オレンジジュースです』第三話「影響は私の栄養になるのか」岩月寧々編

        • 『はじめまして地球さん、私オレンジジュースです』第二話「清算するには凄惨を」串田留衣編

        • 『はじめまして地球さん、私オレンジジュースです』第一話「場違いは間違いじゃない」岩月寧々編

        マガジン

        • はじめまして地球さん、私オレンジジュースです
          4本
        • メンタルがやばいときは、本をひとかじり
          32本
        • 「読むためのトゥルーイズム」を読み、『浮遊』を「読む」
          4本
        • 大人だけど読書感想文
          29本
        • 記憶がぽろぽろ、備忘録。
          24本
        • Quote of the day
          12本

        記事

          「メンやば本かじり」予想外の行動力、それは救い編

           みなさんは『Let’s 太って痩せるダイエット』というドキュメンタリー番組を見たことがあるだろうか? 現在(2024.6)はAmazonprimeで視聴可能となっている。  番組冒頭に登場する、『スーパーファット』(講談社)の著者でありフィットネストレーナーのドリュー・マニング氏は、肥満である顧客が痩せないことに悩んでいた。  そう、アメリカでは肥満は国民病といわれるほどに深刻な問題だ。  アメリカほどではないが、日本でも年齢とともに体に増えていく脂肪に悩む人も──い

          「メンやば本かじり」予想外の行動力、それは救い編

          「メンやば本かじり」それでもなお編

           先日、近所のスーパーで自動ドアが開いた瞬間に 「ああ、タヒにたいわ」  とわりと大きめの独り言をこぼしました、どうも、川勢です。  みなさん、いかがお過ごしですか?  メンタルがやばいみなさん、今日も救いを求めていませんか?  そんなとき、ぜひとも読んでいただきたい本がある。  それはケント・M・キースによる『それでもなお、人を愛しなさい』だ。  ちょっと吹き出してしまったが、本書はまったくもって大真面目にこの言葉を語っている。そうなのだ。吹き出してしまった私

          「メンやば本かじり」それでもなお編

          「メンやば本かじり」脳が私にしてくれたこと編

          「あなたの頭の中は大丈夫ですか?」 「いいえ、危険です」  メンやば本かじりのページを開いてくださったみさま、突然の会話に驚いたことだろう。  これが今朝の私の脳内会話だ。  やっぱりね、そういうオチだと思ったよ、という方。安心しちゃまずいぜ。あなたの近くにこんなやばい奴がいるのに、安心できちゃうあなたの頭の中も十分危険だ。  なぜ私たち(勝手にあなたも仲間に入れましたよ)の頭の中は、つねにすでにこんなに危機的状況にあるのだ!  頭の中ではいったい何が起きているの

          「メンやば本かじり」脳が私にしてくれたこと編

          「メンやば本かじり」他者の柱を調べ、自身が壊屋だと知る編

          「メンタルがやばいときは、本をひとかじり」、わたくし頑張っております。  かれこれ一年以上続いております、  と報告する気満々だった。  だったのですが、諸事情により中止となりました。ご了承ください。 ↓中止原因  なんやー思ったより少ないなー。でも二八週間連続メンタルやばいってのは、二八週間連続アルバイト遅刻くらいの緊張感はあるな。  よしよし、今日もメンタルがやばいままいってみよう。さて、どれくらいメンタルがやばいのか、チェックが必要だ。残念なことに、会話をし

          「メンやば本かじり」他者の柱を調べ、自身が壊屋だと知る編

          「メンやば本かじり」あれはなんだったんだろう編

           思い返してみると、「おや? あれってなんだったんだろう」と思うことはないだろうか。  例えば、  私は埼玉県在住なのだが、埼玉には「川越駅」と「川越市駅」と「本川越駅」がある。はじめて川越を訪れたとき、川勢の脳内ミジンコがばっちゃばっちゃ手足を暴れさせ錯乱していた。  どれがどれやんね。  だがこれは、川勢だけではなかったようだ。  先日、一〇代の女の子二人組が電車の中でいかにもそわそわしながら話していた。 「ねぇねぇ、アナウンスで次は本川越って言っていたよね」

          「メンやば本かじり」あれはなんだったんだろう編

          「読むためのトゥルーイズム」を読み、『浮遊』を読む。第四回

           今回は『文學界』2024・5月号。「読むためのトゥルーイズム」から、遠野遥さん『浮遊』を読み進めていく。  前回までのトゥルーイズムは ■本を読むには、まずトゥルーイズム(自明)から理解していく ■取り組む課題について述べられている箇所に印をつける ■総ページ数、各章のページ数を把握する(図を作成する) ■目次を読み、各章のねらいと思われる部分を引用する  ということだった。  作成したグラフと、表がこちら。 『浮遊』には目次がないため、各章の番号と冒頭部分を目次

          「読むためのトゥルーイズム」を読み、『浮遊』を読む。第四回

          「メンやば本かじり」誕生日を迎えるには編

           誕生日、それは多くの人にとって嬉しい日なのだろう、きっと。 「やだなあ、また歳をとっちゃった」とか言っていたとしても、みんなから祝ってもらって、楽しい一日を過ごすのですね、そうなんですねうらやましいですねこんにゃろちくしょうこんにゃくにゃくにゃく。  うおやべ。タタリ神(©️もののけ姫)化してしまうところだった。  私にとって今年も誕生日はまったく楽しみではない。祝ってくれる人はおらず、自分でごはんをつくって、誰とも一言も喋らず一人寝るだけだ。  ん? 違うな。

          「メンやば本かじり」誕生日を迎えるには編

          「メンやば本かじり」番外編

           番外編である。  今日、五月五日は文豪中島敦の生まれた日だ。  ま、それとは関係なく、私のメンタルがただれておる。  よって、関係ないけど無理矢理こじつけて、中島敦生誕祭にのっかりたいという、かなり短絡的な発想だ。  とはいえ、中島敦の作品はすきである。  とくに『悟浄出世』が。  悟浄、めっちゃメンタルやばいな。なんだか仲間に思えてくるわ。  自己否定ばかりをし、心の弱い悟浄。だが、彼はただうじうじ独り言で自分をいじめるだけではなく、きちんと行動するのだ。

          「メンやば本かじり」番外編

          「メンやば本かじり」正式名称が変更されています編

           メンやば、第──あーもう無理、わかんない。  やや第二〇回目気味、で良いですか?  ただ今回は、正式なタイトルはいつもの「メンタルがやばいときは、本をひとかじり」ではなく、 「メン類がやばいめっちゃ本気で食べたくなる! かどうかは、じっくりこの本を読んでね」  なのである!  えっ?  いい、その反応、いいよ。お時間の都合上、これ以外の反応は割愛しますね。  そうなのだ。なんやねんそれと言いたくなるだろう。  今回はメンタルがやばいときに読む本ではなくて、麺

          「メンやば本かじり」正式名称が変更されています編

          「メンやば本かじり」八本脚の蝶編

          ※今回はセンシティブな内容が含まれています(残虐的、自傷行為)。  苦手な方はページを閉じてください。  メンタルが弱っているとき、とある書籍に書かれていた言葉を思い出す。 「仕事も結婚も子育てもしたし、もう人間として生まれた責任はほぼ終わったような気がする。」  この一節が私の小さな脳内で膨張し、みっちりと埋め尽くして内側を破り裂こうとする。  私は何一つ人間として生まれた責任は果たせていない。  わかっている。わかっているけど、どうしたらいいのだ。  そして私

          「メンやば本かじり」八本脚の蝶編

          「メンやば本かじり」それでもあなたはその未来を選択するのか編

           みなさんは、子どものころに読んだ本の「答え」を大人になって出せものはあるだろうか。 「ある!」と心の中で答えたあなた、声に出してええんやで。すごいやん!  もちろん私は──うん、キミのそれ、正解や。  ないない、なんもあらへん。  たとえば、子どものときもやもやが残った「答え」が出なかった本といえば、シートン動物記『オオカミ王ロボ』。  幼い私は、ただロボがかわいそうという感想しかなかった。あの悲しい結末を回避するために、どうしていいのかわからなかった。  大人

          「メンやば本かじり」それでもあなたはその未来を選択するのか編

          「メンやば本かじり」失わないと手に入らない編

           メンタルがやばいとき、自分は何もかも失った気分になる。  この世界から受け入れられていない、価値のない存在に思える。  そんなときは、自分よりももっと、想像もできないほど何もかも失った話を読むといい。  今回は茶番劇もなくさくっと進むよ。まあ、それだけ情緒不安定ってことやね。  というわけで、今日紹介したい書籍は、失うことの大切さを教えてくれる恒川光太郎氏による『夜市』だ。  夜市を知らせるのは、蝙蝠だ。しかも風にのって多くの商人が現れるらしい。  この部分だけで

          「メンやば本かじり」失わないと手に入らない編