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寂しいけど、応援する!

 5月から一人暮らしを始めて夏休みにこちらに戻って来た息子。
 二か月近く、のんびりした後、また大学生活の再開だ。

 おや。おかしいぞ。
 自分の気持ちの変化に戸惑っている。

 5月に一人暮らしの生活が始まる前、確かに少しは寂しかった。でもそれ以上に「この子が一人でやっていけるのか」との心配が過ぎて。単に心配が勝っていたのだろうか。
 一人だと勉強しながら、料理や掃除も少しはしなければならない。公共料金の支払いや買い物も。心細くて寂しい夜もあるだろう。ちょっとしたことを喋りたい日も一人だ。
 そう思うと、「じゃあね」と部屋にぽつんと立ち尽くす心細そうな表情を浮かべた息子を見た後、涙がどうにも止まらなかった。

 でも息子のいない生活もすぐに慣れて、リズムが整っていった。無理な早起きがなくなって、メニエール症状も気候によっては出るけどそれでもうんと減った。
 夫と二人で過ごす時間もまた良いものだ。

 そう思っていたのに、息子が夏休みにこちらに戻ってくるときの「楽しみ」な気持ちと言ったら。

 皆さんも親と久しぶりに会う時に知っていてほしい。

 子供と久しぶりに会うのって、こんなにもワクワクするものなのか! 落ち着かない! ってくらいめちゃくちゃ楽しみ。

 息子の好きな物を買って置いておこう。あの料理を作ろう。これを準備しておこう。一緒にあの番組観よう。映画も楽しみだな。なんて、それはもうソワソワ。

 戻ってきてもこのご時世、あまりどこかへ積極的に出かけられず、換気の良いと言われる映画館へ何度か足を運んだ程度だったけど。
 家の中でも別々の部屋で過ごし、それほどゆっくり喋らず、お笑い番組も時々一緒に観る程度。
 そりゃ自分の世界があるし、親とは違う生活リズムや楽しみがあるだろう。
 一緒にいる時間は多くなかった。
 のに。
 今回感じる寂しさは何なのだ。

 息子も家を発つ二週間ほど前から「寂しい」と言い出す。
 互いに、互いがいない生活を自分で想像できるからだろうか。夫は前からずっと寂しがっているけど。
 「何でこんなに寂しいんだろう」夫も今回は改めて何度も言う。「大して同じ時間過ごすわけでもないのに」

 ウーン。

 息子の個性を感じるからかな。息子ならなんと答えるか。どんな風に反応するか。想像しながら喋り、やっぱりと思ったり裏切られたりするただの会話の楽しさなのだろうか。こっちがちょっとおかしなことを言っても息子は「わからない」と言いながら笑う。自分の意見を考えながら話してくれる。

 夫と私との関係ともまた違うんだよな……。
 夫は夫と息子の、私は私と息子の関係性を感じながら、喋ったり黙ったり笑い合ったりする。
 ふと気付く。
 私は息子に話を聞いてもらわないけど、夫といると自分のことをつまらない話だろうと愚痴だろうと何でも喋って聞いてもらう。でも元々よく喋る夫は、私じゃ役不足な内容でも息子に話を聞いてもらえる。息子はきっと聞き上手なんだな。夫にとってはそれもあるのかもなあ。

 「あんなに、気性が激しくて感情のままの子だったのに、いつの間にか優しい子になったよね。穏やかで、自分の考えも聞けば答えてくれるようになったね」

 二人で話しながら、ちょっと感慨深くなった。夫も私も、息子の性格や成績を誰かと比べることもせず、「こんな子だ」と本人に伝わるようには決して評価せず、忍耐強く見守ってきたものだ。

 自画自賛もしておく!

 今回は私も寂しいから、夫に「寂しいね」と共感していると、私のしょんぼりっぷりに「でも息子はその度に、一回り成長するチャンスなんだって応援したい気持ちもあるよね」と言っている。

 そうだね。そうだそうだ。

 そうやって夫と私とで奮い立たせる。

 「今日は疲れて寝たかな」「もう起きたんだろうね」「まだ寝てるんじゃない?」「寒いかな」「暑いかな」「料理してるのかな」「コンビニで買ってきたんじゃない?」なんてわかるはずもないのに、夫と息子の話をする。週末ごとに夫と「何を送ってやろうか。これ、喜ぶかなあ」とスーパーやドラッグストアでの買い物を楽しみ、それをせっせと送る。
 離れていてもずっと息子を思う日々がまたやってきた。


#エッセイ #親子 #子供 #息子 #独り暮らし #寂しい #応援

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