心が苦しい人に対して、待つしかできない無力感
息子の友達の中で、ある一面でとても気の合う子がいる。その彼が今年度の早い段階から学校に来れなくなった。
中高一貫校だから、同じメンバーで中学一年生から楽しく学校生活を送ってきた。はず。
息子も中学一年生の時「不登校になるのかな」と思った時期があったけど、今は「めんどくせ~」とか言いつつ学校に行っている。
学校に行かなくなる理由が様々だとは認識している。そして学校に行かなくなること自体に関して、それほど「絶対反対」とは思わない。苦しい人たちの話を聞けば聞くほど、「無理に行かなくても良い」が私の意見。
ケースはそれぞれとして。
息子の学校内での交友関係や先生方との関係は、全体的に落ち着いている。割と個性の強い子が多く、男子同士が優しくて、受け入れ合う環境がある。
でも彼の思いはそういったものではなく、もっと奥が深いように推測する。本人も理由がハッキリせず、又、その苦悩を話す相手は数少なく、息子はその一人のようだ。
彼が数か月ぶりに参加した学校行事。息子の写真があったので購入しようとチェックしたら、そばに彼がいる。
痩せたなあ。
「ちゃんと食べてるのかなあ?」
息子に聞いてみたけど、「う~ん、どうなんだろうね。」
そうか。男の子同士だし、デリケートな問題だし、「ちゃんと食べてるの?」なんて聞かないよな……。
彼の姿が脳裏に焼き付いて離れない。
この無力感。
モラハラ夫の相談をしてきた奥さんでも経験したなあ。
話を聴いても聴いても、翌週にはほぼ同じ内容の繰り返し。いや厳密に言えば話していること、その一週間の出来事は違う。でも本質的なものは何も変わらない。子供たちもウチによく遊びに来て、私も可愛がっていたから、余計に心配した。
でも子供たちへの影響を心配した言葉を伝えると、ショックを受けられた。「そんな風に思って私の話を聴いていたの?」と言われて、私もショックを受けてしまった。
とにかく聴くだけで良いんだ。
と思うけれど、ダンナさんの話に、どうしても腹が立ってしまう。だって奥さんのカウンセラーじゃないよ私。いくら勉強していたって、私の友達なんだもの。友達を目の前に感情的にならないなんて、私は加減できない。
そして一緒に遊んだりご飯食べたりした子たちだもの。ダンナさんとして、お父さんとして、そんな言い方も態度もないよ。そう思っても、そのまま私の感想や気持ちを、やんわりとでも伝えられなくなった。
何もできない私。
あの気持ちを思い出してしまう。
息子の友達は、今、自分のウチでどうしているんだろう。
そこのお母さんとは学校でちょこっと声を交わした経験しかない。
ただ息子の話を聞いていると、とても優秀な子で。校内の成績も、実力を試される模擬試験も、相当良いらしい。大人しくて真面目だけど、お笑い好きな一面、議論好きな一面もある。
そして親にとっても育てやすい子だったようだ。中学の頃の様子を見聞きしても親の言うことをよく聞いていた。何なら先回りして親の意向を汲み取り、真面目にこなしてきた印象だ。勝手に何でも自分で頑張ってくれるから、親は何の心配もなかったはず。
「だから」だよ。と思われるかもしれないけど、第一子で、もって生まれた性格がそうなら、親だって「こんなものかな」と思ってしまうだろう。こんな時、軽々しく書いて良いのかわからないけど、息子みたいな子で良かったと私は思ってしまう。
息子は泣き喚いて私に抵抗すること約10年。全然言うことなんか聞かない。
子供ってこんなはずだ、男の子ってこうだろうなんて私の思惑を、ことごとく外しにかかった。親の気持ちを先回りなんかも当然しない。優しい言葉をかけるとか、男らしくとかそんな気持ちのない息子。「こんな風な子になってほしいなあ」なんて思いは早いうちに捨てた。
私は息子に、子育てや愛情の何たるかを教わったのだ。とても深く。
いや息子が今こうして落ち着いていられるのが何故なのかは、本当のところはわからない。個人個人の性格があって、人って何に影響され、何に敏感に反応するかなんて、親にだってわからない。わからなくて良いとも思う。そのために会話やコミュニケーションて存在するのだから。
周りにいる人間が、その人の力になれるなんて、特に精神的なものに関しては、そんな単純なものではないだろう。
話を聴く側って、何もできない。
心の中でそっと寄り添い応援するだけと思っても。
こんなに何もできないなんて。
見守って、いつでも手を広げて待っているよ、との気持ちがあれば充分とわかっていても。そして普段はそのようにゆったり構えていても。
それでも知り合いなら、何とかしてあげたいと思うのが人の心で。
ふと、何ともできない自分の無力感に打ちひしがれてしまう。
どうか彼が、これからの人生を自分の足で歩こうという気持ちが起きてくれますように。
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。