思う壷
「その壺に入ったスープは苦いんです」
子どもが飲むと死んでしまうんだってさ
まだずるずると引っ張り倒しているんだろうな
どうせ
そんなつもりないのに
そんなことになんてしたくなかったのに
明日、あの橋を渡る頃には
もう好きじゃない
そう誓っても
思う壷なんだ
試してみたこともないくせに
試してみたくもないからさ
とっくに波をすぎたと思っていても
海はそこにあるのだから
結局は同じ場所を泳いでるだけで
これから立ちそうな波まで見送るなんて
そんなのはもったいないだろ
こっちにはもうなにも
まわってこないんでしょう
回し飲みされたってよかったのに…
「わたしのことどう思ってんの」
また聞かなくても分かるようなことを何度も聞いちゃってさ
また聞かなくてもとっくに分かってるような返答が返ってきて
それなのに
モヤモヤが募っていく
そんな作業ばっかりで何がしたいのかぜんぜん分かんない
分かってくんない
こっちこそ
ちっとも分かんない
和尚さんが独り占めしたがっていただけの結末。
壺の中身を幾度となく舐めまわしてみたところで
死なないってこと
ほんとはちゃんと分かってる
「また気持ち悪いだけの自分が顔を出す」
もう、
どう足掻いたって
どう取り繕ったって
たとえ上手くいったとて
あの海はもう二度と見ることが出来ない
分かってたよ
なにもいい方向にいかないことくらい
それでもその壺にしがみつくわたしは惨めだ
ぜんぶわたしが悪かったんだ
ぜんぶわたしが悪かったんだ
苦くしてしまったのもわたしのせいだ
結局わたしが割ってしまったんだ
って
こんな感じになるところも
わたしの嫌なところだったんだろうなって
そんな現実から目を背けるために
今日も誰にも見つからないようにこっそりとその古びれた縁に口をつける
スープを飲むと眠ってしまった
それは深い深い眠りだった
もう二度と目覚めないと
はっきり言ってくれればよかったのに
それとももうすでに目が覚めていたのか
この現実世界のなかでも
もう一度目を覚まさなきゃいけなくなった。
「過ごした時間の毎日がヤケに濃かったもんだから」
「いまの生活が薄まって見えているだけなのかもしれない」
そんな錯覚をさせられる濃くも薄くもないシンプルな味がした
この空の明るさにも嫌気がさす
楽しく自由に生きてるのに
時々その味を思い出して、苦いままの自分のこころにも嫌気がさす
いくら試しても
何回舐めまわしても
思う壷
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