モンゴルときもの旅日記⑧~モンゴルで『月刊 岩ときもの』*遊牧民のお宅で着物の着付けをやってみた(5)~
ツェギーさんのゲルで温かいバンシタイツァイのもてなしを受けほっと一息ついた。
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モンゴルときもの旅日記⑦~モンゴルで『月刊 岩ときもの』*遊牧民のお宅で着物の着付けをやってみた(4)~
遊牧民のお母さんが、
「私も着てみたいわ、着物。」
とリクエストをいただいた。
もちろん答えはイエスだ。
「あと2枚お着物があるから、お二人もお着物を着てみましょう♪」
道案内してくれたボルガーの妹オユントヤさんにも着物を着てもらうことに。
ヘアアレンジは引き続き美容師のツォルモンゲレルさんが担当してくれた。
しかしここで問題が起こる。
私は着物を4枚、帯を4本持ってきたのだが、着る人数を3人と決めていたので、長襦袢が1枚足りない。他の二枚は先の撮影の二人に着付けていて、次の撮影地までは着替えずに向かうことになっている。
日本にいるのならば半襟の代用として手ぬぐいを縦半分に折って襟元に添え、長襦袢を着ている風に着付けたりもできるのだが、モンゴルへは余分の手ぬぐいを持ってこなかった。唯一持ってきた手ぬぐいは私の頭の上に巻かれていて、しかも汗を吸って湿気ている。
そんなぐっしょり汗まみれの布を、他人様の首元に着付けることなんぞ失礼極まりない!
モンゴルにはハタグという、礼拝の時や新年の挨拶の時に使う細長い布があり、それを半襟に代用できるかもしれない、と頭に浮かんだ。しかし、ハタグはとても神聖なもので、首元に巻くのはもってのほか、許されない。
さあ、どうする?考えろ!考えろー!
何か代用できるものはないのか?
細長くて、色が白っぽい布。
ふと、体形補正用に持ってきた白タオルが目に入る。
これだ!!
ふんわりボリューム感のあるタオルだが、縦に半分に折れば半襟として代用できる。
これで二人に着物を着つけられるできる。あとは手を動かすだけとなった。
お化粧して、ヘアセットして、着物を着付けて、「着物の柄素敵~💛初めて着るわ~🎵」と、女子会状態でゲルの中は大盛り上がりとなり、熱気むんむん。真夏のサウナ状態と化した。(ちなみに外は零下24度)
着付けが完了し、すぐさまみんなで写真を撮りまくる。
民族衣装デールをまとった旦那さんのツェギーさんと、青色(モンゴルでも人気の高い空の色хөх өнгө)の訪問着を召した奥さん。長い時間を連れ添った二人の厚みのある人生が、オーラとなって輝いているように見える。カッコイイ。(ちょ、涙でそう・・・)そう思った時、旦那さんのツェギーさんが、
「俺は日本人の奥さんをめとったぞ~!」
と言い放ち、どっと笑いが起こった。うちの田舎の近所のおいちゃんらと変わらない面白さを放ち、国が違えど笑うポイントは同じだった。
どこまでも楽しい遊牧一家なのである。
ひとしきり写真を撮り、落ち着いたところでボルガーが、「了孔さん、もしかしたらモンゴルで初めて、遊牧民のゲルの中で遊牧民に着物を着付けた人なんじゃない?」とつぶやいた。
え?そうなのかな?もしそうだとしたら、
この日が、モンゴルと日本の文化の交流に一石を投じた記念すべき日になったのかもしれない。
これが喜ぶべきことなのか?私がやったことは果たして世の中に受け入れられることなのか?それはすぐには分からない。
そしてこの時はとにかく、次の撮影地へ向かうことを考えなければならなかった。
(つづく)
※『月刊 岩ときもの』とは、着物を着て岩場に行き写真を撮り、それを雑誌の表紙風に加工してインターネット上にアップするという活動です。紙媒体はなく、インターネット上でしか見られない雑誌で(しかも表紙ばかりがたくさん!)、コアなファンの方々からは「幻のエア雑誌」と呼ばれています。
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👘モンゴルときもの旅日記①~突然の渡航先変更~
👘モンゴルときもの旅日記②~女子トーーク!世界の民族衣装事情~
👘モンゴルときもの旅日記③~民族衣装デールの今昔~
👘モンゴルときもの旅日記④~モンゴルで『月刊岩ときもの』*遊牧民のお宅で着物の着付けをやってみた(1)~
👘モンゴルときもの旅日記⑤~モンゴルで『月刊岩ときもの』*遊牧民のお宅で着物の着付けをやってみた(2)~
👘モンゴルときもの旅日記⑥~モンゴルで『月刊岩ときもの』*遊牧民のお宅で着物の着付けをやってみた(3)~
👘モンゴルときもの旅日記⑦~モンゴルで『月刊岩ときもの』*遊牧民のお宅で着物の着付けをやってみた(4)~