見出し画像

読書記録「私たちの世代は」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、瀬尾まいこさんの「私たちの世代は」文藝春秋 (2023) です!

瀬尾まいこ「私たちの世代は」文藝春秋

・あらすじ
就職活動をしていると、私たちの世代を「マスク世代」や「ディスタンス世代」、協調性がなく何を考えているのかよく分からない若者と揶揄されることがある。

だけど、私たちだって、そうなりたくてなったわけではない。

今でもふと思う。あの数年はなんだったのだろうかと。不自由で息苦しかった毎日。多くの人から当たり前にあるはずのものを奪っていったであろう時代。

同著 3頁より抜粋

世界規模で感染症が蔓延していた時代。毎日のように通っていた小学校も休校となり、規制が緩んでも分散登校やオンライン授業ばかりだった。

公立の小学校に通う岸間冴は、お母さんが作ったマスクがクラス全員に届いていないという理由で、分散登校が始まっても不登校だった清塚蒼葉の家を訪れる。

ソーシャルディスタンスとか、15分までしか喋っちゃいけないとか、人と話すにも色々強いられていた当時。蒼葉君の家で母と3人で食べたチョコレートの味を、冴は今でも覚えている。

私立の小学校に通う江崎心晴は、母が教育熱心な人で、学校のオンライン授業の傍ら、英会話やヴァイオリンの授業を受けさせられていた。だけど、心晴自身、学校に行って授業を受けるのを何よりも待ち遠しく思っていた。

分散登校中、友達とも話をしちゃいけないと言われていた中でできた秘密の文通相手。顔も名前も知らないけれども、一斉登校が始まったら、いの一番に会おうと約束していた。だけど…。

確かに、私たちの世代は、当たり前とされていたことが出来なかったかもしれない。けれども、そんな中でも出来たことも、つながれた関係もあったんだなって。

去年、東京読書倶楽部の読書会にて紹介していただいた本。その前に同じ作家の「そして、バトンは渡された」を読んで、俄然瀬尾まいこさんの作品が好きになり、この度紐解いた次第。

作中では新型の感染症・世界規模のパンデミックなどと呼称されるが、要はコロナウイルスが蔓延していた頃のお話である。

感染症が流行した当時を振り返ってみると、リサイクル工場の現場作業員として働いていたためか、正直そこまで仕事に影響が出たとは感じなかった。

3密回避だとか、テレワークの導入だとか言われていたけれども、ただでさえ少ない人数で稼働していたし、そもそも現場に出ないと仕事にならない(遠隔操作とか導入できるほど整った設備じゃなかったし)。

それに、外出自粛やらテレワークやらで人の出入りは少なくなったものの、幸いなことにゴミ(資源)は毎日出る。

入荷量は減ったし、会社としては損失が大きかったかもしれないが、私自身給料が減ったわけではない。むしろ夜勤がなくなって働きやすくなったくらいだ。

その点で言うと、あの感染症があったからこそ良くなったことも、少なからずある。

授業はオンラインで受けられるようになった。仕事も在宅でできるようになった。外に出なくても買い物がしやすくなった。リアルで人に合わなくても、SNSやネットを通じて友達はつくれる。

作中でも語られていたが、みんながばい菌みたいなものだから、学校で汚いからって理由でいじめられることもないだろうって。

もちろん、感染症なんて広まらない方が良い。明日は我が身と怯えながら生活するよりも、感染症なんてない方が、断然良い。

だけど、それがあったからこそ、しっかり生きられた人もいるんだと思う。

感染症なんてひどいことばかりだったけど、感染症があったから密になれた相手もいて、そのおかげでできた道もある気がする

同著 246頁より抜粋

当時を振り返ると、どうしても、物事の悪い点ばかり目を向けがちではあるし、罹患した時にはあぁこのまま死ぬんだなって思ったくらい辛かった。

だけど、必ずしも悪いことだけじゃなかったし、それこそ、私が知らないだけで、そのおかげで救われた人たちだっているんだなと。

余談だが、瀬尾まいこさんの作品を読んだことがある人なら分かってくれると思いますが、家族がいい人過ぎて(特に岸間冴のお母さん)、泣いちゃうやつね。それではまた次回!

この記事が参加している募集

読書感想文

今日もお読みいただきありがとうございました。いただいたサポートは、東京読書倶楽部の運営費に使わせていただきます。