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読書記録「傲慢と善良」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、辻村深月さんの「傲慢と善良」朝日新聞出版 (2022) です!

辻村深月「傲慢と善良」朝日新聞出版

・あらすじ
婚活で出会い、結婚の日取りまで決めていた彼女が突然姿を消した。

坂庭真実さかにわまみはこれまで付き合ってきた人と違い、真面目で、素直で、善良であった。きっとこの人と結婚するのだと、朧気ながら考えていた矢先のことだった。

彼女は前々から誰かに見られている気がすると言っていた。恐らく地元にいた頃の人だろうと話していたが、誰がとは聞いていなかった。

ストーカーに監禁されているのか、はたまた自らの意思で姿を消したのか・・・・・・・・・・・・・は分からない。それでも、彼女を探さねばならない。彼女のためにも、自分のためにも・・・・・・・

読書会で何度も紹介を受け、前々から気にはなっていたが、どうも紐解く勇気がなかったけれども、この度ようやく紐解いた次第。

ご存じの方も多いと思うが、この作品は婚活をテーマにした作品である。

彼女の足取りを追うために、かつてお見合いした人や職場の友人関係を当たるのだが、彼女がどんな相手を選んだのか、そもそもなぜ婚活を始めたのかなどを深掘りしていく。

お恥ずかしい話、これまでロクに恋人のいない人生を送ってきたため、一つひとつの言葉がグサグサと私の胸を刺す。

例えば、真実の足取りを追おうと、かつて利用していたという結婚相談所を訪ねた際、西澤はふと「結婚できる人とそうでない人の違いは何か」と聞くシーンがある。

「うまくいく人は、自分が欲しいものがちゃんとわかっている人です。自分の生活を今後どうしたいきたいのか見えている人。ビジョンのある人」

同著 129頁より抜粋

私も知り合いから、結局川口はどんな人と付き合いたいのかと、聞かれることがある。いい加減恋人の一人くらい連れてこいとも。

でも、これまで人と付き合ったことのない私が、どんな人と付き合いたいのかと考えること自体、何か申し訳ないと考えてしまう。むしろ、こんな自分と付き合ってくれるの?って思ってしまう。

かと言って、誰でも良いと言ったら嘘になる。自分から誰か良い人を探そうと思うと、自分の外見や性格と比較して、相手を評価してしまう。自分と付き合える人は、この人しかいないのかと。

いい子でありたいと思っているくせに、自己評価は高い。

善良であり、傲慢なのである。

一見すると相反するような考え方が、同じ人間に備わっている。

自分も真実と同じように生きてきたから、すごく共感してしまう。

自分で決めるという生き方をしてこなかったから、いい子でいることを選択してしまったから、いわゆる、普通の恋愛というものをしてこなかったから、どうやって人を好きになるのかも、よく分からない。

理解しようとした。理解しようとしたよ。出会う人たちと、ちゃんと向き合おうとした。――だけど、理解できるほどのものを、みんな、見せてくれなかった気がする。理解の仕方が、私にはわからなかった。

同著より抜粋

相手を傷つけたくないという善良さと、でもこの人とは付き合えないという傲慢さ。

みんなはどう思っているかは分からないが、どうしてもこんな風に考えてしまう自分がいる。共感してしまう自分がいる。

でも、少なからず同じように考えている人がいるってだけでも、救われる。自分だけじゃないんだって。恋愛が難しいと考える人はいるんだって。

そう考えるのもまた、傲慢かも知れないが。それではまた次回。

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