9月28日 読書会報告
川口市出身の自称読書家 川口竜也です!
2024年9月28日(土)の夜に開催した、東京読書倶楽部の読書会の報告です!
この日は新規の方が4名、リピーターが6名の合計11名でお酒を飲みながら読書会、その名もBOOK & BOOZE!
読書会自体が初めての方からは、本好きだけが集まる空間がこんなにもアットホームになるのだと、とても楽しかったと語って頂きました。
紹介して頂いた本
さだまさし「解夏」幻冬舎
夏秋冬春、季節を巡る4つの短編集。長崎などの地方で生きる人々の葛藤と熱さを描く。
「秋桜」では、フィリピン出身の女性が農家に嫁ぐ。外国人でありながらも、その土地で頑張ると決意するも、土地柄から周囲からは白い目で見られていた。
それでも徐々に努力が認められ、こう言われる。「かつては外来だったが、今では日本でも有名になっているコスモス(秋桜)のようになりなさい」と。
川村元気「百花」文藝春秋
父は美人の奥さんと結婚し、息子を授かった後に、この世を去ってしまう。母一人子一人で過ごした泉も、いまでは大人になり、結婚している。
実家に帰ると、母の姿がなかった。公園のブランコに佇む母は、認知症を患っていた。
当然のことながら、親も歳を取るもので、いつまでも元気でいられるわけではない。親族に任せっきりにもいかず、いつかは帰らねばならない。
全員ではないしても、両親と離れて暮らす人や、地方から東京にやってきた方なら、一度は直面することではなかろうか。
魚豊「チ。―地球の運動について―」小学館
天文学が好きな主人公は、地動説を唱える罪人を監視する任務につく。当時は、天動説こそ真理であったがゆえに、異端者は処罰される運命だった。
しかし、罪人から地動説を聞くほど、それが理にかなっているように思えてくる。そして主人公は地動説の呪いに囚われてしまう。
天動説と地動説、両方の主張と正義が対立する。細い、細い可能性に賭けた人物たちの物語は、次の世代に受け継がれていく。
全8巻で完結。NHKでもアニメ化される(10月5日 午後11時45分より)ため、この機会にぜひ漫画も紐解いてみては。
トム・スタンデージ「ヴィクトリア朝時代のインターネット」早川書房
ヴィクトリア朝時代(1830〜1900年頃)に発達した電信技術。手旗信号で遠くの人に情報を送り合う考え方が、電気の力によって早く、一度に遠くまで情報伝達を可能にした。
当時は気送管技術が主流であり、主要機関同士を結ぶ配管が地下を通っていたほど。それでもなお、情報伝達を速やかに行いたいと思う人間の底力を感じる。
それだけヴィクトリア朝時代に技術が発展した世界観が、スチームパンクやネオヴィクトリアンに通じる。それを踏まえて読むと、歴史を知るのも一興なり。
坂井俊樹「〈社会的排除〉に向き合う授業」新泉社
「ダム建設のため離れた住民」「ハンセン病患者」「アイヌ民族」など、社会的排除の対象となった人々は、存在する。
かつて「教わる側」だったけれども、子どもたちに「教える側」になったとき、〈差別〉をどのように教えれば良いいのだろうか。
正しい・間違いといった二律背反で語らぬためにも、なぜそれが起きたのかという背景を考え、伝えていくことの大切さを問う。
また、「生活保護の受給者」や「夜間定時制高校の生徒」などに対する世間のイメージと、個々の人間という本当の姿を、見誤ってもならない。
原田マハ「楽園のカンヴァス」新潮社
ルソーの「楽園」に似た絵画を巡り、その絵が本物か偽物かを巡るアート・ミステリー。
本物と主張する男性にも、偽物と主張する女性にも、どちらも熱いプライドを感じる。美術の話を盛り込みながら、そのストーリーテリングに脱帽する。
教養としても良いけれども、旅行小説としても楽しめるのがこの作品のいいところ。スイスの有名なレストランや動物園なども描かれるため、ぜひ訪れてみたいと思うものです。
なお、絵画鑑賞時には、その作品の設定や人物像をつい妄想しがちだと語る紹介者。それもまた、絵画鑑賞の楽しみなり。
宮部みゆき「おそろし」角川書店
江戸時代 叔父夫婦の足袋屋(三島屋)に奉公するおちかちゃん。お客さんから不思議な話を聞き、徐々に心を溶かしていく。
百物語風に人々が物語を語り、おちかちゃんは聞き手として話を聞く。ホラーテイストであるものの、おちかちゃんが優しく解釈するため、不思議と怖さが和らぐのが良き。
初めて読書会に参加された紹介者さん。おちかちゃんのように、本好きという「聞き手」がいるからこそ、気楽に話ができました。
飴石「開花アパートメント」KADOKAWA
ときは明治時代 文明開化。西洋風の集合住宅(アパートメント)ができたのも、この頃である。中でも「開花アパートメント」は家具付き・電話付き・食堂付きと至れり尽くせりの物件である。
だがこのアパートメントの住民は、みな「訳あり」らしい。電話の交換手の女性は、かつて夫を毒殺した疑いがあるのだが…。
このアパートメントに越してきた翻訳家の藤と、探偵の助手をしているという少年が、このアパートメントの住民の謎を解き明かす。
だが、騙されてはならない。このアパートメントの住人「みな」が訳ありなのだと。
川上未映子「わたくし率イン歯ー、または世界」講談社
思考というものは、脳ではなく奥歯で行われるのだと、歯科助手として働く私は考える。目下、恋人の青木を想い続けている。
この作品の面白い、ところはタイトルから察しられるように、とにかく文体に障害、がありすぎるところ。本を読む時に感じる、リズム感が他の作品にはない独特さがあるのだ。
最近、様々なサイトから言葉を引用し、文章読み上げソフトにポエトリーリーディングさせる動画を見かけ、この感覚に似ている。ライブ感や生感が、カッコいいんですよ。
そんな不自然・障害を感じながら本を読むことに、一種の幸せを感じているのだけれども、それってどうなのだろうかとも、考えなくもない。
黒田夏子「abさんご」文藝春秋
私たちは目の前の実体に対して、何かとラベリングしがちである。例えば、コップという物に対して、たくさん形状があるにしても、抽象化して「コップ」と捉えようとする。
しかし、それは「今ここにあるもの」という解釈からは離れてしまう。本来、目の前に存在するコップは、様々な文脈の上で存在するはずなのに、言葉によって軽んじてしまいがちである。
その点、「abさんご」では固有名詞が全く無く、普通名詞もほとんどない。
傘というものを「天から降るものを防ぐもの」とすることで、そのものを切断されたものではなく、有機的につながったものとみなすのだ。
たまたま読みにくいことが面白い、という話の流れで紹介を受けた本作。一度途中で読むのを止めてしまったけれども、また読もうと思うきっかけになりました。
2024年10月の読書会スケジュール
10月12日(土) 14:00~17:00
散策×読書会
10月19日(土) 19:00~22:00
飲み有り読書会 BOOK&BOOZE!
10月26日(土) 10:00~12:00
朝活×読書会
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