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読書記録「袋小路の男」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、絲山秋子さんの「袋小路の男」講談社 (2007)です!

絲山秋子「袋小路の男」講談社

・あらすじ
私は小田切考に片思いをしている。出会いは高校時代、と言っても高校でではなく、新宿にあるとあるジャズバー。カウンター席で煙草を吸いながら新聞を読む小田切を私は探した。

小田切は2浪した大学を卒業後、就職せずジャズバーでアルバイトをしながら作家を目指して小説を書く日々を送る。いわゆる型にはまった生き方が出来ないタイプの男である。

だが私と小田切の間は愛で結ばれているとか、お互いが深く思い合っているというわけではない。

私からしたらあなたのそばにいられることが幸せではあるが、小田切からしたら果たして私という女がどういう立ち位置なのか「ワカラナイ」。

二人の関係は、ロマンティックな恋愛物語ではない。出会ってから十数年経っても手を繋いだこともない。

だからこそ、些細な触れ合いが、週末のとりとめのない話が、ちょっとした電話が、幸せを感じる。

表題の他「小田切考の言い分」と「アーリオ オーリオ」を収録した短編小説集。

池袋の東京読書交換会というイベントにて、社会人の方向けに少し不思議な恋愛(?)小説を、というお話に惹かれて頂いた本。

松浦寿輝さんの解説でも述べられているが、我々の人生において、恋愛小説のような劇的な出会いや裏切り、別れというものはそうそう起こるものではない。

まあ「イニシエーション・ラブ」の時にも記したことではあるが、私自身が恋愛を経験したことが皆無であるため、深い話ができるわけではない。すべての恋愛がフィクションのようなものである。

少なくとも言えることとしたら、さりげないことに幸せを感じるべきである。

手の中に転がりこんできた十円玉の温度で、あなたの手があたたかいことを知った。

「袋小路の男」より抜粋

私だって恋愛はしたことはないが、片想いの経験ならばある。その人のちょっとした仕草や新たな発見を知ると、それだけでちょっと嬉しくなる。

二人の男女の絶妙な距離感を、絲山さんの素敵な文体で描く。ちょっとした喜びを感じてみてはいかがでしょうか。それではまた次回!

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