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読書記録「蜜蜂と遠雷」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

今回読んだのは、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」幻冬舎 (2016)です!

恩田陸「蜜蜂と遠雷」幻冬舎

・あらすじ
芳ヶ江国際ピアノコンクールに向けて各国でオーディションが行われている中、パリの会場でとんでもない演奏を披露した少年が業界を震わせた。

"風間塵"は学歴もコンサート歴もほぼ白紙だが、音楽界の世界的大御所からの推薦状が出ている。師曰く彼の音楽は『ギフト』にもなり『厄災』にもなると…。

日本会場ではもう一人注目される女性ピアニストがいた。

"栄伝亜夜"はかつて神童と呼ばれ、13歳でCDデビューを果たしたものの、母の死をきっかけに舞台から突如消えたピアニスト。今回の舞台は彼女にとって復活なのか、それとも失望なのか…。

今回のコンクールには100名近いピアニストがオーデションを勝ち残っている。

"マサル・カルロス・レビィ・アナトール"は今回のコンクールの優勝候補。卓越した演奏技術と音楽性を兼ね備えており、ピアニストとしての王道をひた進む者である。

"高島明石"はコンテスタントの中では最年長の28歳、普段は楽器店のサラリーマンとして勤務している。職業的音楽家と真の音楽家の狭間に悩みつつ、彼にしか表現できない音楽を目指す。

ピアノコンクールを舞台に、4人のコンテスタントの想いを"音楽"に込める。

かつて松坂桃李さんや松岡茉優さん主演の映画をやっていたため、そちらであらすじやストーリーは知っている方も多いであろう。読書会でも映画は観たという方は多い。

恩田陸さんの本著を読んで、私は実際にコンサートへ行って一人ひとりの演奏を聴きたくなった。

動画サイトでアップされている作業用bgmではなく、"音楽"を味わいたくなった。

本の中では勿論演奏は聴こえない。(私の学がないため)ショパンのバラッドやベートーヴェンのピアノ・ソナタと言われても実際にどんな"楽曲"が流れているのか存じ上げない。

だが、それがどんな"音楽"であるかを不思議と感じ取ることができる。

同じ譜面であっても、コンテスタント一人ひとりの個性や特徴、天性とも言うべき音楽を感じ取ることができるのは、恩田陸さんの表現が素晴らしいからであろう。

作中でも語られているが、音楽や芸術というものは優劣をつけるものではないはずだ。それゆえにコンサートとは時に残酷な側面を持つ。

だが人は"本物の美しさ"や"瞬間の美"というものを自然と求めてしまう。

目に見えず、現れてはその片端から消えていく音楽。その行為に情熱を傾け、人生を捧げ、強く情動を揺さぶられることこそ、人間に付加された、他の生き物とを隔てる、いわばちょっとした魔法のようなオプション機能なのではないか。

同著より抜粋

かつて中古CDショップの店主から伺ったことを思い出す。JAZZは人で選べるようになったら面白いと。

音楽や芸術には、それを生み出す一人ひとりの物語がある。天才や神童、鬼才と呼ばれるものの道は決して順風満帆ではなく、数々のドラマがあるに違いない。

是非とも恩田陸さんの文体で、この感動を味わってみてはいかがだろうか。それではまた次回!

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