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北極圏・ラップランドひとり旅 5日目

September 17, 2019
Rovaniemi - Saariselkä - Urho Kekkonen National Park

ロヴァニエミの宿。2泊した。

昨夜はあまりよく眠れなかった。いよいよ始まる北極圏トレッキングにワクワクしていたからか、夜に食べたポテトチップスで胃もたれを起こしたからか、同室の大男のイビキがうるさかったからか、なかなか熟睡できなかった。
宿をチェックアウトしてバス停へ向かう。目的地は北極圏トレッキングの入り口の街、サーリセルカ。ロヴァニエミからは4時間半かかる。

今日もバスの中で朝ごはんを食べる

サーリセルカで世界一周中のサトルと合流する。一昨日、彼とお酒を飲んでいる時、僕と彼の北上するルートが同じなことがわかり、それなら一緒にキャンプをしようと話していた。
ロヴァニエミからヒッチハイクで到着したサトルと一緒に、街に1軒しかないスーパーで買い物をする。これから2週間、国立公園を歩くためのフリーズドライと、ビールやマッカラ(フィンランドのソーセージ)を大量に買ってバックパックに詰める。

分岐の案内

僕が歩こうとしているのはウルホ・ケッコネン国立公園と言い、フィンランドで2番目に大きな国立公園だ。国立公園はサーリセルカの街から東に広がり、その端はロシアと国境を接している。広大な土地は「ヨーロッパ最後の荒野」と呼ばれ、オコジョやトナカイ、ヘラジカの他に、肉食動物のクズリやヒグマ、オオカミも棲息している。

サーリセルカはリゾート地して有名なので、歩き始めてすぐはハイキングの人たちとよくすれ違った。皆ニコニコしながら挨拶をしてくれる。道も割と整備されているし、分岐には看板が立っているので迷うことはない。

小さな川を渡り、街のエリアを抜け、地衣類の広がる緩やかな丘を登る。振り返ると出発したサーリセルカの街が小さくなっていた。いよいよだ。いよいよ、北極圏トレッキングがスタートする。

丘の上に立った時、僕は言葉を失っていた。山はなく、見えるのはどこまでも続く丘と、広すぎる空だけだった。頭の中で想像していた景色を、目の前の景色が上書きしてゆく。あまりにも想像を超えていて現実感がない。すごい、という言葉しか出なかった。

僕たちが目指したキャンプ地は思ったよりも遠かった。歩いても歩いても辿り着かず、道を間違えたのかと思い、何度か地図で確認した。地図上では街からそう遠くないと思っていたが、縮尺が掴めずに距離を見誤っていたらしい。1時間半ぐらいで着くと思っていたのに、実際にはその倍の時間がかかった。

キャンプ地に着いた頃には16時を回っていた。太陽が沈みかけ、あたりが急に寒くなる。

国立公園にはいくつものキャンプ地があり、場所によってはハットと呼ばれる小屋も建っている。それぞれ管理人はいないが、大抵は暖を取ったり料理をするための薪が用意されており、ハイカーはそれを自由に使うことができる。僕らも薪で暖まろうと思い、キャンプ地の薪小屋を覗いてみたが、見事に1本も残っていなかった。ここはサーリセルカからも程近い(と言っても3時間は歩くが)ため、多分他のハイカーたちが使いきってしまったようだった。
地図で確認すると次のキャンプ地までは川沿いを歩いて30分ぐらいで着けそうだった。薪がないこの場所で1泊するか、薪が残っていると信じて次のキャンプ地まで歩くか。サトルと相談したけれど、歩き疲れていたのでこの場所でキャンプをすることにした。

今にも消えそうな火とマッカラ

夕闇が迫る中、急いでテントを立てる。近くに落ちていた枝を拾い集め、ファイヤーサークルで火を起こすが、木が湿気ってうまく燃えてくれない。寒い寒いと言いながらタープのポールを火吹き棒にし、交互に火を吹き続けた。

スーパーで買ったマッカラをその辺に落ちている木の枝に刺して火に炙る。苦労して熾した火で炙ったマッカラは、とても美味しかった。

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