現役の建築学生と取り組む、勝山の空き家活用プロジェクト/まちづくりプレイヤーに聞くvol.6
はじめに
本プロジェクトの推進メンバーは、北八建設の北川さん、関東を中心に活躍する建築・まちづくりの企画設計運営者の守屋真一さん、一級建築士の中村優太さん、建築を学ぶ大学生13名、勝山市観光まちづくり株式会社(勝山DMO)、勝山市地域おこし協力隊の西垣翔太さん。勝山には500棟ほどの空き家があるとされており、それらを活用し、まちづくりに繋げることがプロジェクトの目的です。
まちから思い出の場所が消えていく寂しさ
ー これまで勝山での空き家活用のアイデアは持ってらっしゃいましたか?そのきっかけは何だったのでしょうか?
今から3年前に勝山に帰ってきたのですが、ふと、勝山のまちが寂しくなってると感じました。以前から何となく感じていたんですが、幼い頃に学校の帰りに寄り道していた商店街がさびれていたり、良く通っていたゲームセンターがなくなっていたりと、思い出の場所が無くなっていることに気づき始めて。それに子供が遊んでいる姿もあまり見かけなくなっていて、自分が公園で遊んでいたあの景色がもう今はないんだなと。すごく寂しい気持ちになりましたね。
ー それは寂しいですね…。それがきっかけで古民家活用の発想が?
そうですね。帰ってきてすぐまちを盛り上げることを色々と構想していて、地域課題と事業(家業の建設業)を組み合わせたらどうかと考えていた時に、自然と空き家の活用事業というアイデアに繋がっていきました。勝山には500棟ほどの空き家があると言われていて、今後もさらに増えると考えると、課題解決からビジネスに繋げるチャンスは地域だからできるチャレンジだなと。
ー 個人のアイデアから会社として取り組もうと決めた理由はありますか?
役員とは空き家活用の話は何度も議論していたんですが、最初はそれがビジネスになるのかお互い分からなかったんですね。ただ、この先30年、50年とその先も家業が生き残っていくためには地元が元気じゃないといけない。他のエリアへ進出して事業を行う道もありますが、自分の中でそれは違うという想いがあって、勝山というまち(市場)を自分たちで持続させていくしか未来はないなと思い、古民家活用を会社として取り組んでいこうと決めました。
ー 会社として取り組むと決めて、まずどんなことからスタートしましたか?
古民家活用の前に社内で新しいことに前向きに取り組んでいく雰囲気を作りたくて、新しい北八を考える課、通称「あたはち課」を立ち上げました。まずはこの課を中心に、新しいことをやってみようと。私たちは建設だけでなく解体もやるので、解体して廃棄するようなものを新しく活用する糸口を見つけて、別の価値あるものへ生まれ変わらせるような取り組みを始めました。今もコツコツ続けています!
若者の意見をどんどん取り込めるプロジェクトのはじまり
ー 空き家プロジェクトとして本格的にスタートしたのは2023年ですか?
そうです、2023年の夏にスタートしました。
「あたはち課」を初めてからも古民家活用の強い想いをふつふつと抱えていて、ちょうどいいタイミングで地域おこし協力隊の西垣さんから守屋さんとのプロジェクトの話をもらいました。守屋さんとは2022年のまちのデザインスクールでお会いしていて、守屋さんのワークショップで一緒に「入船邸」に視察に行った流れもあったので、古民家活用をスタートするキッカケがその時見えましたね。守屋さんはご自身が運営されているコミュニティを通じて建築学生の繋がりを豊富に持たれていたので、やるなら今だ!と(笑)
ー ついに機が熟したのですね!プロジェクトがスタートにあたってどんな期待がありましたか?
若い人の声や意見でしょうか。勝山のまちづくりには、まだまだ若い人の声が入っていないと感じていて、社員間の中でも同じ意見が上がっていたんです。だから、これはいいチャンスだなと。それに若い人の考え方は自社の採用の面でも生かしていけると思いました。とにかく、今の若い人に何が響くのか知りたい、というのが大きな期待でしたね。
コンセプトは「発掘」
ー プロジェクトはどのようなプロセスで進めていきましたか?
全4回実施しました。
1回目は勝山に足を運んでもらい、入船邸を視察やオーナーさんによる家屋の説明、住民の方々も数名お呼びして「地域の資源を見つける(モノ、ヒト、コト)」をテーマに学生のみなさんと対話してもらいました。その成果を元に、2回目は守屋さんと学生のみなさんが設計エスキス(企画の素案)を作成してもらい、3回目はエスキスの発表、フィードバックと議論を実施しました。4回目の最終日に、更にブラッシュアップされたエスキスを元に皆でコンセプトを決めていったという流れです。
ー どんなコンセプトに決まりましたか?
コンセプトは「発掘」です。
化石が豊富に採れるジオパークの勝山から着想の起点となり、勝山のまちに点在する観光資源の発掘や、まだまだ表面に出てきていないヒトやコトをどんどん発掘していこうという主旨です。特に、「ヒトの発掘」という意味を持たせてくれたのが嬉しかったですね。
空き家改修のハード面では、今まで積み上げられてきたものを「地層」と捉えて建物に表現してくれていたり、あらゆるところに工夫が組み込まれていますよ。
ー 具体的にこの古民家の活用用途は?
ゲストハウスとチャレンジショップで考えています。
ー ちなみに、入船邸にはこれまでどんな場所だったのでしょうか?
入船邸は築100年以上の物件になるのですが、これまで料亭や宿泊施設、居酒屋など、いつの時代も人で賑わう場所として使われてきたそうです。建物があるエリア自体が水路を中心に貿易など人が行き交う場所だったので、常に人の”交流の場”であったことが伺えます。
なので、人の集まりも「地層」になっていくという想いを込めて、人と人が交流できるゲストハウスや、挑戦したい人を応援し人を盛り上げようという願いを込めたチャレンジショップという活用用途が見えてきたことは、入船邸の歴史が紡がれていくのにピッタリだなと思いました。活用が始まったら、地域の老若男女が集まっていつも賑わう場所にしていきたいですね。
空き家活用プロジェクトは始まったばかり
ー 今後、このプロジェクトはどのように進んでいくのでしょうか?
入船邸の活用プロジェクトはまだまだこれからですね。現在、守屋さんと学生さんとハード、ソフトの議論を重ねながら、改修に向けて進めていきます。これからやることは盛りだくさんですが出来上がりの姿が本当に楽しみです。
ー プロジェクトの進捗に合わせて「あたはち課」も絡めていく予定ですか?
もちろんです!今は自分がまず経験して学ばないといけないフェーズなので積極的に巻混んでいません。ですが、ようやくカタチになってきたので、徐々にみんなと連携して、北八建設の新しい未来に繋げていくつもりです。
ー 素敵ですね!最後に、プロジェクトを進めてみて北川さんの心境に変化はありましたか?
自分のまちづくりに対する熱量がぐんと上がりましたね!これからもずっと、北八建設として勝山のまちづくりに貢献することをどんどんやってみたいと思うようになりました。地域課題と事業に対する不安はまだまだありますが、ようやく進み始めたという充実感があります。あとは、こういったプロジェクトを同じ熱量で進めていける仲間とたくさん出会いたいというのが直近の目標の一つですね。興味がある方は大歓迎です!
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北川さん、貴重なお話ありがとうございました!
北川さんが熱量高く抱き続けてきた古民家活用という想いが多くの人を巻き込み、カタチになっている様子を今回のお話を通して垣間見ることが出来ました。熱量は共鳴する、そんなことも感じました。
今回のように、勝山市内ではまちづくりを進めるための事業を積極的に推進しています。今後も様々な取り組みを行ってまいりますので、最新情報をお見逃しなく!
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プロフィール
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