福知山マラソン2022で自己新記録を出せた理由【後編】~具体的な「持っていき方」~
さて、11月の福知山マラソンのことなのに、もうすぐ2022年が終わります。
何とか年内にはまとめないと、と何とかギリギリ駆け込めました。
というわけで、すっかり過去の出来事になりましたが…
福知山マラソンで、先頭集団のハーフ70分ペースについていって後半つぶれながらも自己記録を更新できたということ。
歳を重ね、失敗を重ね、ようやく掴みつつある自分なりの「フルマラソンへの持っていき方」が、結果に繋がったんだと思っています。
自分への備忘録としても残しておきたいですし、特に仕事や家庭で練習時間が限られている市民ランナーさんの参考になればとも思うので、関連することを長々と書いています。
主に当日のことを綴った前編はこちら
主に春から夏にかけてのことを綴った中編はこちら
練習の期分け(目安)
中編までは夏までの「走り込み期」のことを書いていました。
それからの練習の期分けはこんな感じになります。
13週前まで(8月まで):走り込み期
13週前~9週前(9月):移行期①(スピード練習)
9週前~6週前(10月中旬まで):移行期②(レース出場)
6週前~3週前(10月下旬~11月初旬):仕上げ期
ラスト3週(11月中旬~下旬):調整期
あくまでも目安です。
そこまで明確には分けていませんが、大体こんな感じです。
13週前~9週前(9月):移行期①(スピード練習)
個人的な感覚かもしれませんが、夏場はしっかり練習したとしてもすぐにはパフォーマンスが上がらず、秋に涼しくなってから調子が一気に上がるタイミングがあります。まさに走力の芽生えですね。
これは夏までの練習次第で、9月早々に芽生えることもあれば、11月くらいまでかかることもありました。今年の場合、芽生えは10月始めにありました。かなり早い方だったと思います。
これまた個人的な感覚かもしれませんが、秋になり気温が下がってくると、走りやすくなると共に少し気持ちが不安定になるようで…
あれこれ悶々としていた時期でもあったようです。
「そんなこともあったけな」と、たかだか3ヶ月しか経っていない今に思うわけなので、原因のはっきりしない悩みは受け流す方がよいのでしょう。
さて、この時期にしていた練習としては…
1つは走り込みの延長となる距離走と、もう1つはスピード移行に直結するインターバル走です。
距離走は、最終的に最大安定状態の速度(ギリギリしんどくないペース、フルマラソンペース+20秒/kmが目安)あたりで2時間くらい走れるところを目指して、少し遅くしたり短くしたりして4回くらい。
そして、10月1日に30kmを3'41/kmペースで、ある程度余裕を持っていけたときに「芽生えた」という感覚を得ました。
次にインターバルについてですが、少なくともフルマラソンを目指すにあたっては次の3点を意識しました。
1.ペースはそこまで上げない(ハーフマラソンペース+α程度)
2.本数はある程度たくさん(1kmなら10本くらいは)
3.可能であれば、レストは短めで。
これは、ダニエルズが言うところの「クルーズインターバル」の感覚で、ざっくり言うと「そこそこ速いペースで押していく力」であるLT値のトレーニングに寄せた練習です。
なので、6000m~8000mのペース走に置き換えてもよいと思います。
分かりやすくまとめているブログがあったので、詳しくしりたい方はこちらへ
9週前~6週前(10月中旬まで):移行期②(レース出場)
走力の芽生えがあり、調子が上がってきたら、とにかく大切にすることは「芽生えた走力を、目標レースまでに枯らさないこと」だと思っています。
ガーデニングと同じでしょうかね。
これについては、僕はこれまで何度も何度も失敗してきました。
失敗、つまり目標レースまでに調子を落としてしまうことの主な原因は2つあって、1つはオーバートレーニング、もう1つは本命でないレースがピークになってしまうこと。どちらも「やりすぎ」によるものです。
10月に入って、ハーフマラソンと10000mを走りましたが、どちらも「流れの中で」当日を迎えることを意識しました。
早い話が、ほぼ調整しないということ。
とはいえ、レース前のポイント練習は特に「余裕を持って、出しきらない」ことを意識しますし、2週連続レースの間は強度をだいぶ落としたし、そのあたりは臨機応変です。
また、4週に1週を目安に、落とし週間を設けていて、その週は一旦練習強度を落として身体と気持ちを回復させています。
落とし週によく入れる練習が400m×10本で、これは先程の本練習インターバルとは違ってレストをたっぷり取ります。走力向上ではなく、調子を整えることが目標です。
疲れがたまっているときは、最初の1本は80秒かかってしまい、ビクッとするのですが、たいがい徐々に身体が動くようになります。
この練習のことを勝手に「オトシゲキ」なんて言うております。
6週前~3週前(10月下旬~11月初旬):仕上げ期
ここまでの練習は、どの距離のレースを走る場合でも共通するのかもしれません。
が、この「仕上げ期」は完全にフルマラソンを走るための練習をしました。「特異的」な練習というやつですかね。
メイン練習は「本番に近いペースで走る」こと。
これは、走り込み期や移行期の「最大安定状態の速度」とも、インターバルorペース走のLT値の速度とも違い、その真ん中くらいにあたる「レース本番に近い」ペースです。
狙いは、「本番のペースに慣れること」。もう少し言うなら「本番ペースの余裕度をあげること」でしょうか。
で、その本番ペースでどれくらいの距離を走るか?ということですが…
「距離ではなく、時間」ということを、特にこの仕上げ期には大切にしています。
時間の目安は、フルマラソンの場合は60分~90分くらい。
サブ10で走るトップランナーがキロ3分くらいで30km走をしていると聞きますが、ここから「30km」をパクると(僕の場合は)やりすぎになるので、時間基準で「90分走」という形をとりました。
キツい仕上げの時期でした。
もう少し、ペースを落としてもよかったとも思います。
この時期に関わらず、同じ内容の練習を2~3回重ねると、設定が合っていれば2回目以降の余裕度が増してくるので、成長が実感できてモチベーションが上がりますね。
ラスト3週(11月中旬~下旬):調整期
練習は全て人によって合う合わないがありますが、レース前の調整ほど人によって最適解が違うものはないなという印象です。
今回、僕がかなり悩んだのが、約10日前に出場した龍神駅伝(5区16km)との両立です。
個人レースなら、「ちょっと抑えようかな」なんて調整もききますが、駅伝ではそうはいかない…しかも龍神駅伝は100%僕が出たいと志願してメンバーに入れてもらったので、もちろん全力で臨みました!
両立するための自分なりの結論はシンプルで、駅伝後は一度長いジョグだけして、あとは落としの週と同じ感覚で400mインターバルだけ入れようといもの。
割りと上手くいったと思います。
ラスト3週間の練習を羅列しますと…
11/2 90分走(最後の仕上げ練習)
11/5 20km jog
11/9 1km×10本インターバル(3'10''/km)
久々のインターバルで呼吸はキツいけど、脚は動く感覚
11/13 龍神駅伝5区 16km
11/15 30km jog
約1週間前に持久力維持を意識
11/19 400m×12本(74")
レストもたっぷり取って、かなり余裕を残しました。
11/23 福知山マラソン
こんな感じです。
テーパリングの定番は「量を減らして質は維持する」というやつですね。
三週間前から、30km→20km→10kmというイメージ。
ただ、繰り返しになりますが、特にこの最終調整は人によって最適なものが違うので、色々と試してみて一番「整う」パターンを作っていくしかないのでしょうが。
気持ちの「持っていき方」
練習の持っていき方はこれくらいですが、最後に気持ちの面について書きたいと思います。
これこそまさに、人によって持っていき方は全然違うものなので、あくまで僕の個人的な感覚になります。
以前、僕は「練習は上手くいっているのに本番に弱い」という悩みを抱えていました。
気負いすぎていたのでしょうね。その悩みをある程度払拭するキッカケになったのは、レース前日に調子が上がらなくて「もういいや、ビール飲んじゃえ」とそれまで前日には避けていた飲酒をしたら当時のベストが出たという経験です。
それからしばらく、前日には敢えてビールを飲むようにしていました。今はそのあたりは特に考えていません。
そんな経験を経て、「本番に強い」とまでは言えないまでも、「本番でもそれなりに力を出せる」くらいにはなってきました。
僕なりの、本番でしっかり力を出すポイントは…
① 普段やらないことはやらない。
② 緊張する自分を受け入れる。
③ 目標意識はワクワクする範囲に留める。
といったところでしょうか。
①普段やらないことはやらない。
大事なレースだからって普段食べない良いもの食べたり、普段しないようなストレッチをしたりしない。
実際はどうか分かりませんが、「なに食べてもそんなに変わらない」くらいの気持ちでいたらいいと思います。
② 緊張する自分を受け入れる。
大事なレースなのでそりゃ緊張しますけど、緊張してガチガチな自分自身を許すと、逆説的に緊張が緩まる経験をしました。
市民ランナーにとって、別にレースで大失敗しても大したことではないと割りきり、「こんな仕事でない(失敗してもよい)ことで緊張できるなんて幸せ」と思うと、むしろ緊張していることをプラスの力に変えられる気がしてきます。
③ 目標意識はワクワクする範囲に留める。
これが、少なくても僕にとってはとても大切な気持ちの持っていき方で…
もちろん目標を持つことで、時にキツい練習を積む際のモチベーションになりうるのですが、目標を強く持ちすぎると「目標にがんじがらめ」になります。
恥ずかしながら、僕は何度もがんじがらめになりました。
マラソンでも目標は、順位かタイムがほとんどかと思いますが、順位は他にどんな選手が出てくるかによるし、タイムは当日の気象情報にかなら左右されます。
そんな、自分でコントロールできないことに一喜一憂してもいいことはありません。
なので、当日のレース展開やコンディションによって、どういうペースでいくかを冷静に判断する必要がありますが、「目標にがんじがらめ」状態ではこの判断力が確実に鈍ります。「キツいかも、でも絶対優勝するし、 ○○分を切るし」てな具合でオーバーペース、そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。もちろん僕は何度もあります(涙)
あと、「優勝できたらいいな♪○○分を切りたいなー♪」というワクワクレベルだと、「浮き足立つ」という言葉があるとおり、身体はよく動きますが、「優勝しなきゃ!○○分切らなきゃ」という状態では、まさに身体もガチガチになり、動かなくなると思います。
ワクワクレベルで留めるために僕がしていることは、「目標があってもあまり公言せず心に秘める」ということ。自分の手帳には書きますが…
もちろん、公言して自分を追い込むことで力を発揮する人もちゃんといらっしゃるので、あくまでも僕の場合はですが。
ちなみに、この福知山マラソンの目標は…
「2時間24分台で優勝」でした。
ね、言わなくてよかったでしょ(笑)
最後に
思っていた以上に長くなってしまいました。
最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
僕が実践してしたことは、ダニエルズやリディアード理論に基づいたスタンダードなやり方で、特に目新しいことはしていませんが、実際にしてきた練習とセットで書いているので、多少は分かりやすいのではないでしょうか。
前述のとおり、僕は「長めの距離を押すのが得意だけどスピードのキレはさっぱり」という典型的なスタミナ型なので、スピード型の人には合わないかもしれませんのでご注意を。
人一倍、失敗も重ねて、ようやく掴みつつある「マラソンへの持っていき方」を参考にしていただければ幸いです。