京都時代劇かつら

京都にて 映画·TV·舞台·イベント等のかつらを製作しています。 【完全フルオーダー】…

京都時代劇かつら

京都にて 映画·TV·舞台·イベント等のかつらを製作しています。 【完全フルオーダー】の本格時代劇かつらです。 役者さんのみならず、一般の方の【時代劇コスプレ用】また、飾って楽しむ【豆鬘】も製作しています。かつら製作の過程や、こぼれ話など綴ってまいります。

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【かつらのお話:プロローグ】

知人から勧められ 今日から少しずつ時代劇で使用される鬘のお話を 綴っていこうかと思います。 はじめまして。こんにちは。 京都時代劇かつらです。 プロローグの今回は、軽く自己紹介を。 私はまだまだテレビ時代劇が盛んな頃 ふとしたきっかけで鬘の修行に入りました。 もう四半世紀以上も前の事です。 その頃はまだテレビ時代劇はもちろんの事、映画、舞台芝居も今よりずっと活気がありました。 今ではレジェンドと呼ばれる役者・スタッフもまだまだ現役で、撮影所では常に2、3本同時に撮影

    • 【かつらのお話:イナセのかつら】

      床山さんからキレイに結い上がってきました。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 前回、コテ当て櫛入れしたかつらはイナセのかつらでした。 前シリーズの御家人のかつらは武士の髪型で、鬢髱がピチッとひっつめてありました。 今回のかつらは鬢髱がゆったり膨らみのある町人のかつらです。その町人のかつらでもこの髪型はイナセと呼ばれています。 イナセのかつらは時代劇で頻繁に出てきます。 一番はご存知『銭形平次』です。 神田明神下に恋女房お静と住まいする平次親分。 子分・八五郎の

      • 【かつらのお話:コテ当て櫛入れ】

        鬢裏に簑も付け、前回部品付けは全て終わりました。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 今回は部品付けの終わったかつらに、コテ当て櫛入れをしていきます。 馬櫛という、とても歯の粗い櫛で全体に櫛入れして電気コテを当てて人毛の癖をとります。 コテを当て櫛入れすると毛流れが整い、とても綺麗な艶がでてきます。 今は電気コテを使っていますが、以前は平コテを電熱器で直に熱して使っていました。 とても高温になるコテは、温度の加減を見誤ると大惨事となります。人毛が焦げなくなってしま

        • 【かつらのお話:立役鬢簑付け】

          前回は鬢裏に簑穴を開けていきました。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 今回はその簑穴に鬢簑を付けていきます。 鬢簑は裏簑とも呼ばれ、太めの白糸に人毛を互い違いに編み込んであります。 人毛を扱う業者さんにお頼みすると、1m簑として納品されます。簑の幅が約1mあるためです。今回の鬢簑は立役ですので、毛足は約26吋(約66cm)ほどです。 立役の鬢裏の長さに合わせ鬢簑を編み込んで、木綿針と絹糸を使い縫い付けていきます。 この時の力加減が重要で、弛すぎると結髪の力に耐

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        【かつらのお話:プロローグ】

          【かつらのお話:鬢簑穴開け】

          刳のチュールを中剃りの地金に貼り終わりました。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 今回はその鬢裏に、簑を付ける為の簑穴を開けていきます。 簑穴は、穴開けで等間隔に開けていくのですが、その時に気をつけないといけないことがあります。穴開けを無理やり抜かないことです。 穴開けには針の付いたオスと、受けの付いたメスが両側それぞれに付いています。 地金に穴を開けた時、オス針は地金を貫くのですが、そのオス針を地金から無理やり抜いてグネると、金属疲労でオス針が折れてしまうのです。

          【かつらのお話:鬢簑穴開け】

          【かつらのお話:刳の貼り付け】

          前回刺し終わった刳のチュールを暈し貼りの下段取りの出来た地金に貼り付けました。これは前シリーズの御家人のかつらと同じ要領です。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 人毛を植え付け、フィルム液で固着させたチュール。 平面であるチュールを立体な顔に添うように貼ります。 絞るように貼るとよく言うのですが、チュールの両端をほんの僅かですが内側に向くようずらして貼るのです。 その動作を絞ると言い表しています。 当然ながら、絞ると僅かに刳が後退します。折角役者さんに合わせてとっ

          【かつらのお話:刳の貼り付け】

          【かつらのお話:フィルム塗り】

          人毛の植え終えた刳のチュール。 かつらは、チュールに人毛を植えただけでは結び目がほどけやすく、また毛がうまく立ち上がりません。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 今回は立ち上がりと結び目留のお話です。 人毛は、二つ折りにしてチュールの目に引っかけ、結び留めています。昔の携帯ストラップの要領だと思っていただくとイメージしやすいと思います。 刳を全て植え終わると、豚毛のブラシを当てながら人毛をチュールの面に垂直に立ち上がらせていきます。そうすることで、結び目をしっかり締

          【かつらのお話:フィルム塗り】

          【かつらのお話:襟簑付立役鬘】

          綺麗に立役の襟簑が付け終わりました。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 襟簑は結い上がる髪型や鬢付け油の量の違いで付ける枚数が変わります。鬢付け油の量が多ければ毛量が引き締まります。 襟簑の枚数が少なければ髱が割れやすく形が保ちにくくなります。ですから舞台の鬘は簑の枚数は多め。 鬢付け油の量が少なければ、それほど毛量はいりません。テレビや映画の鬘は鬢付け油はそれほど多く付けませんので枚数は少なくても髪型は保たれます。 舞台の鬘と、映像の鬘。実は油の量が全然違うのです

          【かつらのお話:襟簑付立役鬘】

          【かつらのお話:立役襟の簑付け】

          前回貼りました襟毛の糊も乾きました。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 今回はここに立ち役の簑を付けていく。そんなお話です。 女形の襟簑付けと同じく、革鞄や革靴の手縫いのイメージです。緩すぎず、きつすぎず、結い上げた時に髱が綺麗に出るよう加減してつけます。 使う糸は絹糸です。和裁で使う細い絹糸ではなく太目の強い絹糸です。 絹糸は強くしなやかなので、簑を編んでいる絹糸とも相性よく鬘を長持ちさせてくれます。 その絹糸を爪弾きしてヨリを詰めて蝋引きします。 この太めの絹

          【かつらのお話:立役襟の簑付け】

          【かつらのお話:襟毛貼り】

          下貼りの終わった地金に襟毛を貼っていきます。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 御家人の鬘は髱毛と共に襟毛は羽二重に植えてありました。今回は襟毛だけ直接地金に張り付けていきます。 貼り付ける毛はもちろん人毛である程度の長さのある人毛を切り調毛・製毛していきます。 以前もお話しましたが、この時切る前の材料毛の長さは吋(インチ)で切って部品毛になると寸(曲尺)と変わります。 調毛・製毛した部品毛に糊をかまし部品毛を均等にのばしたら、手際よく襟部分の地金に張り付けます。

          【かつらのお話:襟毛貼り】

          【かつらのお話:下貼り】

          襟の簑付け穴もあけ、組み立ても終わった地金に下貼りをしていきます。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 下貼りには、木綿裂、薄染した羽二重を貼っていきます。 刳のチュールを貼る箇所の下貼りは前回の御家人と同じく羽二重です。 そしてぐるりは黒の木綿裂を貼っていきます。 木綿裂は生地屋さんで購入した鐘毛斯の黒を使います。これは木綿100%で、晒しより目が細かく詰まっているので、耐久性が大変よいです。 また必要以上に張りがなく、とても綺麗に貼れるのが特徴です。 目が粗い

          【かつらのお話:下貼り】

          【かつらのお話:襟の簑穴】

          前回、間違い探しになりました。お分かりになった方はいらっしゃいましたでしょうか。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 答えは、【襟の簑穴】でした。 御家人の鬘は襟羽二重が付くので、簑穴が開いていませんでしたが、今回のこの中剃りの鬘には襟に簑穴が開いています。 穴は穴開けで等間隔に開けていきます。付ける簑の枚数によって簑穴の段数が変わります。 付ける簑の枚数は、鬘の種類によって変わります。映像の鬘は結いが小ぶりで鬢付け油も少なめなので、枚数は少なくなります。 舞台の

          【かつらのお話:襟の簑穴】

          【かつらのお話:中剃りの地金】

          中剃りの鬘は時代劇の立ち役(男性の役)では定番中の定番の形です。 頭部の真ん中を剃っているので中剃り(なかぞり)の鬘といいます。 こんにちは。京都時代劇かつらです。今回は中剃りの地金のお話です。 中剃りですので女形の地金と違い左右毎に頭合わせをしていきます。 と、ここまでで、「ん?あれ?」と思われた方もおられるでしょうか。前にも中剃りの鬘の地金見たけどなあと。 前回までにご紹介していた御家人の鬘と今回ご紹介の鬘の地金。 この時点ではほぼほぼ一緒なのですがこれからの作

          【かつらのお話:中剃りの地金】

          【かつらのお話:襟毛】

          襟毛はかつらの襟足の部分の毛で、女形のかつらにはありませんが立ち役のかつらにはほぼ付いています。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 今回は襟毛のお話です。 ごくたまに、 『時代劇を見ていると、かつらの襟から俳優自身の毛が出ているけど、どうして?』 『時代劇のかつらは前は自然なのに、後ろは自分の毛を出しっぱなし』 などの疑問やご指摘があります。 実のところ、あの毛は俳優さんの地毛でも出しっぱなしでもなく、わざわざ作っている【かつらの襟毛】なのです。 映像のかつら

          【かつらのお話:襟毛】

          【かつらのお話:刷毛先】

          前回、御家人の鬘が完成しました。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 御家人の鬘は武士の髪型ですが、身分や役柄を如実に現している部分があるとご説明しました。 今回はその部分、【刷毛先】のお話です。 【刷毛先】は(はけさき)と読みます。 髷の先端部分の名称です。 画像は銀杏の葉っぱが開いた雰囲気の形、【小銀杏】などと呼ばれる形です。 テレビ時代劇では一番よく見る刷毛先の形で、俗にカマボコ型などと視聴者に言われたりします。 中村主水、渡辺小五郎、田

          【かつらのお話:刷毛先】

          【かつらのお話:御家人】

          前回まで製作していた立ち役の鬘も床山さんにお渡しし、綺麗に結い上がってきました。 こんにちは。京都時代劇かつらです。 前回で鬘師の仕事の終わった中剃りのかつら。一目で分かる、侍・武士の鬘へと結い上がり完成しました。 侍のこのかつら、映画の業界では、【御家人】または【かっつけ】などと呼びます。 御家人のかつらは、鬢(びん:両側頭部)も、髱(たぼ、つと:後頭部)も綺麗にピッチリと結い上げます。 御家人は一見、ただ纏めて髷を折れば良いように見えるので勘違いされやすいのです

          【かつらのお話:御家人】