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【かつらのお話:フィルム塗り】

人毛の植え終えた刳のチュール。
かつらは、チュールに人毛を植えただけでは結び目がほどけやすく、また毛がうまく立ち上がりません。

こんにちは。京都時代劇かつらです。

今回は立ち上がりと結び目留のお話です。

人毛は、二つ折りにしてチュールの目に引っかけ、結び留めています。昔の携帯ストラップの要領だと思っていただくとイメージしやすいと思います。

刳を全て植え終わると、豚毛のブラシを当てながら人毛をチュールの面に垂直に立ち上がらせていきます。そうすることで、結び目をしっかり締める事ができます。

その後、溶解液に溶かしたフィルム液を刷毛でチュール全体に塗っていきます。そうすることで、結び目を固着させ、チュール面よりわずかに人毛を立ち上がらせる事ができます。

フィルム液を自然乾燥させると、しっかりとした刳が完成です。

またフィルム液はチュールに厚みをもたせたり、固さを調節するのにも使用します。

天然の素材や材料の多いかつら作りで、僅かながら科学的な素材のフィルム液。

チュールに人毛をしっかり固着させるのに、親方曰く、昔は膠を塗ってみたり、ゼラチンを使ってみたりと色んな材料を試してみたそうです。

が、しかしどうも上手くいかなかったとのこと。
かつらは、何回も使用します。掛けたり外したり、糊で皮膚に着けたり外したり。そうなると膠やゼラチンでは耐久性に問題がありました。

人毛の結び目を留める
チュールから綺麗に立ち上がった刳

先人のかつら師さん達が試行錯誤の末たどりついたフィルム液。

今では当たり前の用に使用していますが、先人の苦労に感謝して使って行きたいと思っています。

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