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#17 だから私は1人で旅に出る ~台湾一周を終えて~

台湾から帰国して、気付けばもう半年ほど経った。

この間、台湾の1ヶ月後に思いがけずマレーシア・ベトナムに行くことになり、帰ってからはすっかりクリスマスから年末ムードへ。
台湾旅行記をまとめている間に年を越して、気付けば桜が咲き始めていた。

自分で手配して海外に行くようになってから10年以上経つ。
いろんな国を訪れているうちに、ドキドキやハラハラという不安めいたものはグラデーションのように色や形を変えながら、最近ではワクワクと安心感が混在したものになってきている気がする。

もちろん今でも海外に行くときは緊張も不安もあるし、油断大敵!と思いながら注意深く過ごしているものの、慣れというのは確実に培われていて、まあ少しくらいのトラブルなら焦らずいられるようになった。

と、かっこつけてみたいのだけど、実際は今回のように到着そうそう現金がないというトラブルに遭遇すれば、どんな経験も慣れも一気に吹っ飛んで盛大にアセる。

それでも、初めて海外に行った時、初めて1人で旅に出た時、初めて自分で宿を取って、初めて航空券を手配した時のような「本当にこれで海外に行けるのか?泊まれるのか?たどり着けるのか?帰ってこれるのか?」と、何から何まで不安でいっぱいだった頃には戻れない。

でも、それでいいのだ。


初めて1人で海外に行ったのは、1人暮らしをしていた大学生の頃。確か19歳になる誕生日を含めて1週間ほど。
行先はイギリス・ロンドンだった。

親に言うと止められそうだから「友達と行く」と嘘をついて、それでも何が起こるかわからないからと、遺書を書いて、机の上に置いていった。

死ぬつもりだったわけではないけど、もし私が死んだ時、どうして私が1人でイギリスにいるのか誰もわからない状況じゃ困るだろうという思いからだった。

すでに友人たちとは何度か海外に行っていたから初めてじゃないはずなのに、1人となると、空港に向かう電車の中も、チェックインカウンターも、搭乗ゲートも、初めて来た場所みたいに感じられたのを覚えている。

搭乗ゲート前のベンチに腰掛けながら「この飛行機が爆発するかもしれない。私はロンドンに着くことなく死ぬかもしれない。」と妄想を盛大に膨らませ、万が一墜落する(もしくはハイジャックされる)となった時に何かしら言葉を残せるようにと、すぐ取り出せる場所にメモとボールペンがあることを確認した。

当時の自分ですら、なんて大げさなと思ったけど、それくらい不安と緊張でいっぱいだったのだ。
今思うと、こんな18歳可愛すぎる。抱きしめてあげたい。

結局、長いフライトを経て飛行機はロンドンにつき、美術館や博物館、服屋めぐりに興じて、歴史ある街並みを眺め、紅茶とスコーンの美味しさに感動し、テムズ川のクルーズで他の乗客と仲良くなり、靴を5足買って、最高にエンジョイした。

そこから、1人の時間を大事にするようになった。

大学に入ってから、学校やバイトや遊びの予定でスケジュールが埋まるのが楽しくて、どんな集まりにも参加したくて、人のいるところが大好きで、1人の時間がもったいなく感じていた。

それはそれでもちろん幸せな時間だったけれど、1人の時間も同じくらい大切にする価値があること、1人でしか得られない経験や見られない景色もあるのだということを10代のうちに知られたのは今でも宝物だと思っている。


台湾一周12日間。
日本人の旅行にしたらかなり贅沢な日数だろうけど、台湾一周するとなると正直かなり駆け足な日数だった。

それでも、異なる文化圏で、日本語を使わず、普段と違うものを食べ、いつもより早寝早起きで、信じられないくらい歩き回る。

そして、よく考え事をした。

移動の乗り物の中や、街中。食事中。
目に映るものだったり、それは自分の内側にあることだったり、内容はさまざまだけど、話し相手もいない道中は、いろんなことを考えた。

「別にそれ海外じゃなくても、旅行中じゃなくてもよくない?」ってことに時間を使えるのも1人だからこそ。
知らない街の、観光地でもない場所のベンチに座って、コンビニで買った決して映えない類の飲み物を片手に、ぼーっと考え事をする。

その土地の文化や人々のこと。自分の仕事や生活のこと。将来のこと。過去のこと。このあと食べたいもの。目の前をゆっくり通り過ぎていくおじいさんの人生の妄想。

これこそ私にとっては究極の贅沢。ひたすら自分との対話を繰り返した。

観光地をかけめぐり、定番グルメや話題のものを堪能するのも旅の醍醐味だけど、そういうのは誰かと一緒の方が楽しいし。

旅を終えて、明らかに脳内が、細胞が生き返ったような感覚がした。
大げさすぎるけど、本当だ。


そして、コロナ後に久しぶりの訪台でリアルに1番印象的だったのは物価の大幅な上昇

前までは、だいたいレート1元3円ちょいだったのが、今回は約4.5円。
雑に計算しても同じ値段で300円が450円、600円が900円だからね。結構違う。

それに加えて台湾国内の物価も上がっているから、前まではルーロー飯15元だったのが25元になっていたりね。そういうのがあちこちで見られた。
円安と物価高を合わせると45円が112円になるんだから、もはや倍以上。

とはいえ、台湾はとにかくごはんが美味しいし、コンビニ多いし、治安や交通の面でも観光しやすさが抜群なので、また行きたいし、人にも全力でおすすめする。

そして、今回環島してみてわかった台湾の観光におけるわかりやすさよ。

ショッピングなら台北、グルメなら台南、アートなら高雄や台東、自然なら花蓮、というように目的に応じて行き先を選びやすい。
小さい島ながら、統一されすぎず土地によってカラーがしっかりあるのがとても魅力的だったし、歩いていて面白かった。

それでいて、まだまだ行きたい場所に尽きないのも台湾のすごいところ。

そして、海外から帰ると改めて実感する日本の綺麗さと丁寧さとごはんの美味しさ。
「結局日本アゲかよ」って言わないで。そうじゃないのよ。
そりゃ日本の嫌なところも残念ながらしっかりあるよ。不満も。

でも、やっぱりトイレや街の綺麗さと、店員さんをはじめとした接客の丁寧さ、もはや世界的には爆安なのに美味しすぎるお店の豊富さ(複雑だけど)は、トップレベルだろ~そこだけはもう譲れないだろ~と思ってしまう。

それをふまえたうえでも台湾は日本人でも楽しみやすい環境だと言えるので、興味があるなら1人じゃなくていいから良き人とぜひ1度は行ってみてほしい!

最後に、今回のオファーを快く受け止め、理解し、笑顔で送り出してくれたスペシャルな夫に最大限の感謝を。
私という人間の幸せを私と同じレベルで考えてくれるところ、最高に尊敬している。

ま、そんなこんなで台湾の旅は終わり、そののち、この夫と急遽ベトナム・マレーシアに行くこととなるのだった。

おしまい





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