チョコレートといっしょに

子供のころから、なぜかチョコレートが好きだ。

嫌いではないけれど甘いものはあまり多くは食べられなくて、あめちゃんひとつ、ケーキひと切れもなかなか食べきれなかった。それでもなぜか、チョコレートだけはまだよく食べていた方だと思う。

口へ放り込み、舌に乗せた刹那、とろりとして甘さと香り、そしてほんの少しの苦さが広がる。
単純な味のようでいて、奥が深い、幼い語彙では言い表せない美味さが、なんとなくとはいえ私を楽しませたのだろう。

昨年おすすめされてカカオニブを手に入れてから、ますますチョコレート、というかカカオが好きになった。
細かく砕かれた硬い粒をガリっと噛み潰すと、驚くほど強烈な苦さが口いっぱいに広がる。
「なんだこりゃ!?」と目を白黒させるけれど、ひとくち、またひとくちと口にすると、苦さにも慣れ、それとともに豊かな香りが広がり、幸福感を得る。
今ではがっつりチョコレートの気分!というときには、カカオニブを手にするようになった。

苦さ。
甘み。
香ばしい。
幸福感。
そしてそれは過去へ、未来へ。

誰かと一緒に笑いあえるときも、

やりとりや行動が徒労に終わってひとりで少し涙しているときも、

いいじゃない。
あの味に寄り掛かったって。

本当にカカオには幸福感をもたらす成分があるっていうんだし。

たくさんは食べられず、せいぜい4粒。
選んで、選んで、大事に口の中へ。

楽しい話をスパイスに、悲しい涙を隠し味に。

溶けて広がるあの味は、きっとまた私の心に少しずつ染みていく。

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