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【排水たれ流し⁉】実は知らない海運業界の環境対策

大型船舶搭載のエンジン排気量はGT-Rの約5800倍。
軽自動車比較だと3万倍以上。

自動車はEVへ。発電は自然エネルギーを。レジ袋はダメ。
世の中はまさに環境規制の真っただ中ですが、海運業界の環境規制はどんなものかご存じですか?

本投稿は海運業界の対策の一つである「スクラバー」について紹介します。

◇そもそもどんな問題があるのか

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本投稿で扱う「スクラバー」(排ガス浄化装置)はエンジンからの排ガス対策のための装置のことです。
舶用エンジンでは主に重油を燃焼させます。
重油でエンジンを動かすことから排ガス中には
・硫黄酸化物(化学記号:SOx)
が含まれます。

また、重油は細かな夾雑物が多いことやSOxとの反応によって生じる塩などが原因で燃焼ガス中にPM2.5が含まれます。

硫黄酸化物PM2.5も人体に悪影響をもたらし、硫黄酸化物から生じる硫酸は酸性雨の原因にもなります。

そんな有害物質を大気放出させないための装置が「スクラバー」なのです。

※その他対策として、・低硫黄の重油を使用する、・A重油を使用する、・燃料を変更する、などの対策があります。

◇スクラバー(排ガス浄化装置)とは

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上記の画像はAlfa Lavals社から引用したスクラバーと周辺機器の図です。

スクラバーと周辺機器の動作は簡単に記すと下記です。
①エンジンからの排ガスをスクラバーへ送る
②スクラバーにて、海水を燃焼ガスに噴霧し、有害物質を溶解させる
③使用した海水はシステム内で循環もしくは海へ排出する

つまり、大気放出しない代わりに海水に混ぜて対策しているのです。

◇結局逃げてるだけじゃん

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そうです。逃げてるだけなんです。空気の代わりに海汚してんじゃんってことです。

上記にその他対策として・低硫黄の重油を使用する、・A重油を使用する、・燃料を変更するなどがあると記載しました。
「別の方法をとればいいじゃん」って思うかもしれませんが、スクラバーにもメリットがあり、その為に搭載されている。

スクラバーのメリット
・硫黄分が多く含まれている価格の安い重油を使用できる
・スクラバー搭載に伴う改造費用は掛かるが、短期間で費用を回収できる
・LNGなどの新燃料に対応するための新造船の建造コストよりも安い

つまり、既存船をそのまま使用でき、レトロフィット費用も燃料油の価格差によって回収できることから搭載されています。

◇たれ流しの問題は?

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「使用後の海水はたれ流しなんでしょ?」
そうです。しかもその排水は
・pHが3.5ぐらいとかでかなり酸性
・排出温度の実測が40℃で高温
・ガス中の物質により濁っている

などとかなり汚い水流しております。


しかし、問題ありません。
下記のリンクの調査をまとめると、

「希釈されるから問題なく国や世界の基準に対応できる。」とのことです。

調査の内容は、理論だったものだけでなく、生物を使用した実験もありますので生物への無害は実証されています。

長期的に見た場合については、仮説の域を超えることはさすがにありませんが問題ないとのことです。

この調査書を読んだ私の所感としても、短期的に見た場合問題なさそうだなぁ。って感じです。長期的視点でも信じられる調査だと思います。(長い文章なので流し見ですが...)

↓国土交通省調査報告
https://www.mlit.go.jp/common/001246881.pdf

◇問題解決⁉

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「問題ないなら解決じゃん!」と思われますが、真の意味では環境対策は完了していません。

海水で希釈して問題ない数値になるというものの、百年単位でみると蓄積していきます

また、排ガスは対策できたとしても、エネルギー問題や資源問題は解決しておりません
実際に石油由来の化石燃料に依存してます。

やはり技術の進歩は止めてはならないということですね。

◇まとめ

この記事を読んで頂いた皆さんはそう思いますか?
汚い排水はたれ流しですが、希釈されるので問題ないとのことです。

たとえ悪い印象だとしても船を嫌いにはならないでください。

船舶のエネルギー効率はすんごく高いですし、
なにより、世界の物流を支えているのは船なので...

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#エコ
#海運

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