見出し画像

羽振りがいいように見えて実は厳しい会社の特徴~京都伏見の松本酒造の経営者交代に隠れた事情推測~

さて、つい先ほど大きなニュースがFBなどを通じて飛び込んできた。
京都・伏見で有名な酒蔵「松本酒造」の経営者、代表取締役社長の松本氏が臨時取締役で代表取締役を解任され、その息子で取締役の松本日出彦氏も退職するということだ。

これは松本日出彦氏当人のFBに書いてあることだが、
『そして、これまで酒造りに携わっていなかった、先代から相続した株を保有している株主の元で松本酒造が経営される流れとなりました。
このような事が起こらないよう、父と共にここ数年は株式の集約にも取り組み、酒造りに専念することによって、皆様に本物の日本酒を届けるべく、株主の理解を得ようとしていたのですが、最悪のタイミングでこのような事態が起こってしまいました。』
とある。どうしてこのような事態になったのか、推測できることはいくつかある。


① 先代から株相続し、保有している株主とは?

 ⇒普通に考えて、親族経営である会社でとなると、親族か、出資するくらいの人である。しかし、それまで酒造りに携わっていない人がいきなり入るのは中々できることではない。しかし、この人が別の酒蔵の経営者ではないかということも推測できる。土地、建物、設備など酒蔵は莫大な資金を必要とする。でも、お金は酒が売れるときにしか入ってこない(今まさに作っているお酒がお金となって入ってくるのは来年の10月以降である。もちろん、しぼりたてなど、瓶詰めして落ち着かせる(通常半月程度)前に出荷することはあるが)。

可能性としては、もともと松本酒造の「分家」であった黄桜酒造である。(こちらの社長も苗字は「松本」である)
場所も目と鼻の先である(とはいえ伏見は狭いエリアに酒蔵が密集しているのだが)し、酒蔵としては豊富な資金力もあり、近年はクラフトビールにも進出し、近年のクラフトビールブームでこちらは好調なようだ。

しかし、いくら株を持っているからといってこの時期に酒造りを主導してきた経営者親子を追い出すかというと、疑問が残る。このあたりは同業者としてやるべきことではない(黄桜の松本社長は何度かお会いして話もしたが、非常にシビアな人ではある)。となると、別の勢力がかかわっているのではないかと推測する。おそらく、VCである。

調べてみると、松本氏はカタパルト登壇などもしている。ということは、なんらかこういうVCと関係があったということだ。つまり、将来の投資としてVCを選んだ可能性が高い。

もちろん、この投資は松本酒造としてのブランディングに大いに役に立ったはずであるし、その結果松本酒造の「守破離」は京都だけでなく全国に愛好家がいる。しかし、その売り上げがVCが求めるレベルに達していたかというと厳しかったのだろう。その結果、松本氏も他の株主からの株を集めて、、、などとしていたが、肝心の黄桜酒造が株を渡すことに難色を示して(株の保有比率が高かったのかもしれない)、VCの方が黄桜に話をして、、、という流れではないだろうか。登記簿見ればこの裏が取れるので、誰か見に行ってください。

しかし、これは冷静に考えると経営の問題でどこでも起こりうる。
松本酒造ファンが離れるのは間違いないが、かといってそれ以上に「会社」としての利益が出にくいことをそのままにしていいものか。

② 資本家から見れば利益を出すことこそ正義

ちょうど今コンサルティングしている会社(水産業)も累損たくさん抱えて、銀行としては明日にでも!という状態である。しかし、もう3か月で状況は改善しそうであるが、資本家からしてみればそうもいかない。3か月後に利益が出て何もかもうまくいく保証もない。

少なくとも私がある程度動くので、その結果を見てもらえるようには説得はしているが、本日も銀行から事細かなメールが届いた。財務状況なども来週詳しく整理していくが、1円でも赤字が「明日にでもなくなる」ように、そして1円でも利益が「今日にでも生まれるように」と迫ってくる。てか、こうなってしまう前から手を打ちなさいよ、、、とは思うのだけど。てなわけで改善計画の策定をしながら実行するという高度な仕事を求められています。企業再生はこういった切った張ったの世界で日々刃を交えている状態である。今年の流行語大賞に半沢直樹系が何も選ばれていないが、航空会社再生に向けて多くの火花が散っていたシーンはだれもが覚えているだろう。しかし、あの再建計画を銀行が出したのはドラマのお話であって、実際の日本航空は債権放棄や従業員などの大リストラが行われたわけである。銀行が待ってくれることの方が少ないのが実情だ。

会社としていろいろなメディアに取り上げられたり、展示会ででかいブース出していたりと上手くいっているように見えても実は赤字続きで、VC入れて改善したように見えてても「臭いものにふたをしただけ」の会社もある。

ちなみにVCによって転売され、その買い取った会社が泡を吹いているのもたまに見かける(買い取った会社の目利きやマネジメント能力にも問題があるので同情はしないけど)。『あなたのビジネス応援するよ!』という顔をしてVC紹介してくるブローカーまがいのコンサルタントもいるのだけど。そういう人間は、この度のような事態になっても『新しいビジネスのために応援するよ!!』とかいう。VCとこういうコンサルとプロモーションなどが得意な会社(場合によってはコンサルが経営)、そして資本が入る会社にとっては一瞬「素晴らしく」見える取引先、酒蔵なら酒販会社や輸出などの企業がある程度グルになっている可能性すらある。


③ 羽振りがいいように見えて実は、、、という会社の特徴

実体験も含めて、こういう会社は注意したほうがいい。

・経営者一族だけで全ての判断が行われているが、その判断基準が古い。
・IT化が進んでいない。Slack など一般的なツールすら使っていない。

・人材はすぐ調達できるものと思っている。
・気合で人はついてくるものだと思っている。
従業員の給料は実は知名度に比べて高くない。
・CRM?なにそれ?って感じの会社(BtoBはともかくBtoBtoC、BtoCが不得手)
・地方、地域の中ではそれなりに大きい(なので勘違いしがち)
・新しいものに手を出すが、長くは続いていない(数年レベル)
・資金調達するとやたらマーケティングに力を入れるが、広告代理店などの食い物にされていることに気が付いていない(なので、やたらメディアには出るが、そのビジネスモデルでなぜこの媒体でやる?とか何故にこのキャラクター使う?という、専門家から見たら突込みどころ満載の広報活動をしている)
・株主の中にやたら同族がいる。そして、結構分散している。
・やたらVCとかの勉強会とかプロモーションの場所で、事例とかで登壇したりしている。

もちろんこういうのだけからは分からないところもあるが、会社は見た目だけではわからない。もっというと、BSやPLでも分からないところは多い。どんな会社とどのくらい取引がある?その時にどういう価格で取引が行われている?資産の中身は?適切な広告費か?内容か?


経営は理想論だけでは無理。
株主と経営者の関係は理念と想いだけではない。
しかし、お客さまが増えるためには理念が必要。
ほんっと経営者って最も楽しくない仕事の一つであり、たぶんもっとも面白い仕事。


松本酒造の件については、各方面の関係者(経営権掌握したほうも含めて)納得のいく決着を望みます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?