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卒業証書をもらって誰よりも嬉しそうな子どもたち。その姿から私が得た気づきとは

何らかの家庭の事情で居場所を求める子どもたちが、安心して過ごせるようにカタリバが開設した「子どもの居場所」。そこで私は不登校児童・生徒に対する支援を行っています。

先日、「子どもの居場所」に通っていた不登校生徒たちの卒業式を挙行したときに、私の心が動いた出来事があったのでお話します。

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3月22日(金)の朝11時。続々と生徒たちが集まってきました。卒業式が始まるまで椅子に座っている生徒たちの表情はどことなく明るく、生き生きしている様子。

そんな中、久しぶりに見る顔が。

その子はしばらく「子どもの居場所」に来ていなかったため、顔をあわせたり話したりする機会が最近なかった子でした。

卒業する生徒一人ひとりが今までの思い出やこれからについて一言ずつ話す時間。彼は、「一番印象に残っているのは料理をしたことです。これからも料理について探究していきたいです」と話しました。

私はその言葉を聞いて、ハッとしました。
実は彼はもともと、1対1のコミュニケーションに苦手意識をもっていて、自分から周りに話しかけることもほとんどなかったのですが、他のスタッフや生徒と一緒に料理をしているときは「具材はこの順番で入れた方がいいよ」「片栗粉の量少し多いかも」とアドバイスすることもあり、いつもより輝いていたんです。

何がどのタイミングで成長機会になるかわからないし、彼にとっては “料理” が自信につながった。「自分はこれを頑張った」ということが一つでもあったから、卒業式に来たのではないか……そう思って胸が熱くなりました。

卒業式が無事に終わり、ひと息ついていたときに、隣にいたスタッフが一言。

「今まで参加したどの卒業式よりも、子どもたちが卒業証書をもらったときに嬉しそうにしてるね」

その言葉からも、私は大きな気づきがありました。
ここに来ている子たちは、周りの子たちと比べると学校での思い出が少ない場合が多い。そうなると、学校の卒業式に参加してもどこか自分事として捉えられないんじゃないか。

一方で、「子どもの居場所」では自分なりに頑張ったことがあるから自分事として卒業証書をもらえるし、それが嬉しさにもつながっている。不登校の子たちにとって、「子どもの居場所」で卒業証書をもらうことには、すごく意味があるんだと気づきました。

「子どもの居場所」に来る子たちの中には、なかなか自信をもてない子、自分にはできることがないと思っている子がたくさんいるけど、そんなことはない。卒業式に来ていた子はみんな何かしらのことを頑張っていたし、そこで魅力を発揮していた。
この子たちだけでなく、今「子どもの居場所」へ通っている子やこれから来る子たちにも「これは頑張れた」という武器や自信につながるものを1つでも身につけさせてあげたいなと強く思った一日でした。

今回のコラム担当:川本 海景(かわもと・みかげ)
「どんな環境に生まれ育っても、その人が自分なりの幸せをつかみ取みとれるように」を大切に、様々な分野で活動中。カタリバで不登校の子どもたちの居場所づくりに取り組む傍ら、社外でラジオ配信やコミュニティ運営などにも携わっている。

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