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『ゾティーク幻妖怪異譚』より『暗黒の魔像』感想
クトゥルフ神話大系で有名なラブクラフトの友人で、生前はラブクラフトよりずっと人気の作家であったクラーク・アシュトン・スミスの短編集から、また一篇の感想をお送りします。
端的に言うと、復讐物語です。物乞いをしていた貧しい少年が、皇帝の息子に侮辱と暴力を受け、やがて強大な力を持つ魔術師となって復讐をするストーリーです。
読んでいると、確かに皇帝の息子は悪い奴ですが、復讐する側も大概で、どっちもどっちに見えます。
結論から言うと、どちらも報いを受けて終わります。
復讐は虚しいと言うよりは、復讐は節度を持ってやるべきだと、私はそう受け取りました。過剰な憎しみや復讐心は身を滅ぼす。そんな風に思えます。
だからといって、復讐される側が、無条件で赦されるとか、悪事を忘れられるわけでもないのですが。
主人公の復讐自体は成就しますからね。自分も身を滅ぼしはするのですが、復讐される側もきっちり報いを受けるのです。
上手い構成、ストーリー展開だなあと思いました。
さらには、作り込まれたゾティーク世界の、まさに幻妖なる描写が、細部まできめ細やかに書き込まれています。純粋に西洋的というよりは、中近東あたりの文化の要素を混ぜてある感じです。
この短編集は、どの作品もオリエンタルでエキゾチックな雰囲気にあふれています。まるで現にそこに見えているような現実感と美しさがあり、それが単に残酷なだけの復讐譚ではない、一流のダークファンタジーにしているのです。
ただ、書き込まれすぎて余白がない気もします。シェアードワールドになるには、読者に自由に想像させる余地も必要なのでしょうね。
ラブクラフトのホラーは現実世界を舞台にしてはいますが、独特の設定と世界観を提供しました。クラークの創造した世界とは、いろいろな違いはありますが、自由に想像をふくらませる余地があるかどうかは大きいと思います。
今回も、最高の読書体験でした!
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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