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かすみを食べて生きる55:こんなとこにいるはずもないのに

脳梗塞 発症1か月と22日目:リハビリ病院2か月目②
食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食(昼食のみ)と鼻からの経管栄養。食事以外の時間はスプーン半分の水分を一度に10口まで飲んでよい。
状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。

いつでも捜してしまう、どっかに君の笑顔を。

これまでの記録はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と21日目:リハビリ病院2か月目①
発症1か月と23日目:リハビリ病院2か月目③>

お寺に上ろう

理学療法のリハビリ。今日は2回目の屋外歩行訓練!
今回は病院の近くのお寺まで。
このお寺は高台にあって、階段や坂を上らなければならない。
近所の学生さんがトレーニングで駆け上ったりするような場所。
私もたまに子どもと一緒に遊びに行くお寺。

午前中のまだ日差しが強くない時間帯に病院を出る。
病院からお寺までは歩いて5分。
前回の初めての屋外訓練よりは、歩道を歩きやすく感じる。
そしてお寺の階段。コンクリートの階段を登る。登る。
新緑の木々の葉が、風で揺れている。
体力が持つか心配だったけど、何とか登り切った。

理学療法士田中さん(仮)がずっと横について歩いてくれて、よろけそうになると支えてくれる。
「次に大きな段があるので気をつけてください」
「ここは歩きにくいので避けましょう」
先を見て注意をしてくれる。
言われる事を私は知っていた。
すべて数か月前、私が子どもに言った事だった。
今は言ってもらう側になっている、不思議。

そして坂も階段も、上りより下りが怖い。
上るのに体力を使いすぎて、帰りは足が少し笑っていた。
なんとか転ばずに降りれたけど、お寺の下で少し休憩をしないと病院まで帰れなかった。
歩くことよりも、歩いていると口に溜まる唾液を飲み忘れて時折急にむせることが問題だということがわかった。
普段人は無意識のうちに唾液を飲みこんでいるが、私はそれができなくなっている。
でも、お寺のぼれた!
また子どもと来れる。

山村さん(仮)ロス

同じ病棟の患者山村さん(仮)。
お会いするといつでも大きく手をあげてにこにこと挨拶をしてくれる。
夕食後から消灯までの間、山村さん(仮)は他の患者さんと一緒にデイルームでおしゃべりをしている。
私は夜、自主リハビリで病棟内を10周程歩くのだが、私がデイルームの前を通るたびに山村さん(仮)は手を振ってくれる。
おしゃべり中に申し訳ないなと思いつつ、手を振り返すこと10回。
たまにそのおしゃべりの輪に混ぜてもらうこともあった。

その山村(仮)さんが今日退院する。
ちょうど屋外歩行訓練から帰ってきた時、山村さん(仮)が見送りに来た他の患者さんと共にデイルームで家族の迎えを待っていた。
私もその輪に入れてもらって、しばらく一緒に過ごした。
家族が来て、山村さん(仮)退院の時が来た。
デイルーム横のエレベーターに乗る山村さん(仮)をみんなで見送った。
お元気で!もうお酒飲みすぎちゃだめですよ!
そして山村さん(仮)は病棟を去っていった。

その夜、私は自主練で病棟を歩いた。
いつもは1周も歩かないうちに山村さん(仮)が手を振ってくれる。
でも何周歩いても、山村さん(仮)がいない。
何度デイルームを通っても山村さん(仮)がいない。
廊下を歩くと無意識に山村さん(仮)を捜してしまう。
もう、こんなとこにいるはずもないのに。
完全に山村さん(仮)ロスとなった。

茶色の世界:お昼ごはん#11

今日もランチはミキサー食。
珍しく、おかずのお皿が3皿。
でもこれ、なんか…。

おかゆアート:茶色

おかずが、茶色の世界。
思わずおかゆにも茶色と書いてしまった。
茶色のおかずはおいしいおかず、のはず。
今日の献立はこちら。

  • 赤魚の煮付け

  • とろろ芋

  • 白菜の煮びたし

  • おかゆ

なるほど。赤魚もミキサーになると皮の赤色はなくなりつゆの茶色になるのか。
いただきます。
まずは白菜の煮びたし
お野菜煮びたし系は安定のお味と食べやすさ。
家に帰って野菜の摂取に困ったら煮びたそう。
とろろ芋はもったりだなぁ。
咀嚼してもサラサラにならず。ぐっと力を入れて飲み込む。
赤魚の煮付けはしっかりお魚の味。
赤魚って何だろう。白身っぽいけど鯛や、しいらとも味が違う。
ここまでミキサー食のお魚の食べやすさは以下の通り。
鯛>赤魚・しいら>鮭
おかゆは今日も頑張って咀嚼。
咀嚼に時間がかかるので、最近途中で味が飽きてしまう。
できればうめびしお(梅ペースト)がもう一本ほしい。
がんばって完食。所要時間50分!
とうとう1時間を切った!
ごちそうさまでした。

そして完食ができるようになり、所要時間も1時間を切ったことから、3日後より朝食も口から食べてみようということになった。
朝ごはん!どんなものが出るのかな。

ーー振り返って

お寺は木々に囲まれていて、階段を登るととても清々しい空間でした。
病院から離れてマイナスイオンを浴びてリフレッシュできました。
歩くことに集中すると嚥下がおろそかになるのは、注意が必要でした。

山村さん(仮)ロスは思いもよりませんでした。
自分がこんなに山村さん(仮)を意識して生活していたとは気づきませんでした。
1週間くらいはさみしかったです。

食事訓練が始まって11日目、もうおかゆの味に飽きてきたなどと言っています。贅沢だなぁと思います。
でもおかゆ、食べても食べても減らないんです。
うめびしお部分を早々に食べきってしまうので、途中味を変えたかったです。

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