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【かすみを食べて生きる 40 リハビリ病院1か月目⑰】ワレンベルグ症候群による嚥下障害のリハビリなどの記録

脳梗塞 発症1か月と7日目:リハビリ病院17日目
・食事:嚥下訓練中のため、食事は鼻からの経管栄養。水分はスプーンの半分程度を一度に10口まで飲むことが許されている。
・状態:歩行訓練中。日中、フリー歩行自立。終日、車いす・歩行器自立。
・嚥下:嚥下訓練中。首を左に向ければ1~2mlの水を飲み込める。

食事訓練をかけた嚥下造影検査まで、あと4日。
嚥下は少しずつだけど、日常生活でできることの幅は日々広がっていく。

これまでのお話はこちら『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と6日目:リハビリ病院1か月目⑯
 
発症1か月と8日目:リハビリ病院1か月目⑱>


さよなら車いす

今日の理学療法士田中さん(仮)のリハビリで、とうとう病院内であれば終日歩行器や車いすなしで歩いてよいことになったぞー!!
リハビリ病院に来た当初から悩まされていためまいが落ち着いてきたこともあり、終日フリー歩行自立となった。
ここで車いすとはおわかれ。
今までありがとう。

夜のトイレも、歩行器なしでOK!
でもこれは注意が必要。
脳梗塞後遺症の右半身のしびれは、起きてすぐ体を縦にしたときに強くでやすい。
夜起きてトイレに行く時は、まだ少しふらつきがある。
起きたら少しベッドに座って足を揺らしてみたり手でなでたりして、しびれを落ち着かせてから行く必要がある。
心配があれば歩行器で行きましょうということで、歩行器は残留。
でもこれで、売店も中庭も車いすなしでいける!
私は少し、これまでの生活に近づいた。

久しぶりの湯舟

今日の作業療法士花井さん(仮)のリハビリはお風呂評価。
待ちに待った久しぶりの湯舟!!
私には右半身にしびれの他、感覚異常がある。
温痛覚が鈍くなっていて、外からの刺激がわかりにくかったり、逆に過剰に反応したりする。
シャワーのお湯にあたっても、右はあまり温かさを感じない。
温度を感じる箇所と感じにくい箇所があるような気がしている。
この状態でお湯に入るとどうなるか。
少し怖い。
もしかすると身体がお湯に過剰反応すると痛みを感じるかもしれない。
逆にあまり感じられなかったら、右半身だけ水につかっているように感じて、これまでのお風呂の気持ちよさを感じられないかもしれない。
まるで人体実験。

今日の浴室は、家のお風呂と似たサイズ感の一人用のお風呂。
身体と頭を洗って、花井さん(仮)が入れてくれたお風呂に入る。
必ず、温度のわかる左から。
浴槽にまず左足を入れて、その後右足を入れる。
右はわかりにくいけど、冷たさを感じるほどではない。
腰をゆっくり落としてつかる。
少し暖かさを感じる。
浴槽に座り足を延ばす。
あぁ、大丈夫、お風呂、気持ちいい。
右半身は少しわかりにくいけど、ところどころで温かさを感じているようで、その情報から脳が補完してる感じがする。
結果、右半身は左半身よりは少し冷たく感じるけど「多分あたたかい」と認識。
温かいお風呂は気持ちがいい。
久しぶりに身体全体があたたまる。
5分だけだったけど、お風呂、幸せ。
そして今日のお風呂評価を持って、シャワー浴での看護師さんの見守りを終了。
シャワー浴自立となった。
これにより、週2回のお風呂日固定が解除。
朝に予約すれば、毎日シャワーを浴びてよいことになった。
私はまた少し、これまでの生活に近づいた。

門田さん(仮)とおしゃべり

同じ病室で、同じ頃に入院をした門田さん(仮)。
私の向かいのベッドが空いた時に窓際を希望され、今お向かいさんになっている。
私は日中ベッド周りのカーテンを開けているので門田さん(仮)が出入りするたびに挨拶をするようになり、最近はおしゃべりをするようになった。

門田さん(仮)は私の母と近い世代で70歳前後。
最初は入院前に家で倒れた話、入院で海外に行く予定が流れて残念だという話を何度もされていた。
次第に昔の話になっていった。
小さいころから病気がちでよく入院したけど、親の反対を振り切って資格を取って仕事をした。
結婚はせず独り身だけど定年まで働いて厚生年金をもらって自立していることは、ちょっとした自慢なのだと教えてくれた。
若いころには趣味で合唱をしていて、大きなホールで有名な指揮者で第九を歌ったこともある話もしてくれた。
耳が少し悪いようで、こちらからの話は半分くらい通らない。
同じ話を何回もする。
でも不思議と嫌じゃない。
にこにこと、とても楽しそうに話をするから、こちらも楽しくなってしまう。
自分の生き方を自分で選んできた、チャーミングでかっこいい方。
門田さん(仮)とのおしゃべりは私の癒しとなった。


ーー振り返って

言語聴覚での嚥下訓練は変化を書くのが難しいほど少しずつなのですが、理学療法、作業療法では体力が戻ってきてできることが広がっていきました。
車いすで売店に行くのは身動きがとりにくかったので、歩いていけるようになったのはありがたかったです。

お風呂、久しぶりに入る時は怖かったのですが、気持ちよく入れた時はホッとしました。
明日からお風呂予約争奪戦に参戦です。

門田さん(仮)と時々おしゃべりをする仲になりました。
この方は担当の理学療法士さんから移動の際は看護師さんを呼ぶようと言われているのですが、最初は押していたナースコールを押さずにトイレに行くようになってしまい、前々から私もこっそり心配をしている方です。

でも話をするうちに、門田さん(仮)がナースコールを押さないという判断をされるのがとても自然であるように思えてきました。
恐らく、この方はいろんなことを人に頼らず自分で何とかしてきた方。
コールを押しても看護師さんが忙しくて来れないなら自分で行こうという判断をするのはなんだかとても納得がいきました。

今は怪我をしてこれまでのようには歩けない状態なのだから、理学療法士さんの言うことを聞いて看護師さんを待つ方が安全ではあります。
でも看護師さんは忙しくて来てくれるまで待つとトイレに間に合いません。
一体どうすればよいのでしょうか。
脳梗塞発症初期におむつ問題で悩みに悩んでいた私は、門田さん(仮)を知れば知るほど、ナースコールを押さずにトイレに行く門田さん(仮)を止めることができなくなりました。


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