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新刊速報【2022年7月版】|柏書房営業部通信

 柏書房営業部です。一気に暑くなってきましたね。それにあわせるように今月7月は一気に新刊を刊行する、当社比新刊強化月間となっております。
 研究することの楽しみと苦しみを描いた、韓国発の科学エッセイ『くだらないものがわたしたちを救ってくれる』、日本史を貫き続けてきた「神国思想」を検証する『神風頼み』、〈日常の不気味〉と〈産むことの不思議〉をテーマとするイラスト・エッセイ『怪談未満』、人類学・考古学の知見を携えて「13か国、死への旅」に出る『葬儀!』、「進化するトイレ」シリーズ第2弾『快適なトイレ』の5点です。

『くだらないものがわたしたちを救ってくれる』

キム・ジュン 著
米津篤八 訳

営業担当・荒木から一言
 夏といえば、“自由研究” の季節。子どもたちが思い思い、自分の “好き” に没頭する絶好の機会。昆虫が好きな荒木少女も、アリジゴクに蟻を突き落としてみたり、蓑虫の蓑を剥いでみたり、ナメクジが溶ける絶妙な塩の量を調べてみたりと、今思えばかなり残酷な研究をしたものだ。
 しかし大人になった今、子どもの頃同様にそれをやろうとは思わない。「いい大人が」「そんな暇があったら」周りにそう言われるのがオチだ。子ども時代、好きなことに注いだ情熱を、大人になるまで持ち続けるのはなかなかに難しい。「好きなことだけでお金は稼げない」それが大人の常套句で、“好き” を探求できるのは子ども時代の特権か何かのように思える。
 でも、好きなことで食べて行けたらどんなに幸せだろう。子どもの頃好きだったことを続けていたらどうなっていただろう。大人になってふと後ろ髪を引かれることはないか?
 では、見に行こう。子どもの頃からの夢を叶え、自分の “好き” を貫く大人を。これは、一人の研究者の切実な思いと、未来の研究者へのエールが綴られた物語。

『神風頼み』

秦野裕介 著

営業担当・見野から一言
 「日本すごい!」「日本は特別な国」「神風が吹くからきっと大丈夫」――こんなセリフ、今まで一度は聞いたことありませんか。今は、日本すごい!的なバラエティが流行りなのか、テレビでも日本ヨイショな番組が多く放送されているように感じます。
 「日本すごい」たしかに私もそう思います。というより、そう思いたい。
それは、この日本という国は、戦争に負けても大災害が起きても必ずすごい速さで復興したし、それは日本人だからできた事なんだよ、だから日本はすごくて特別なんだよ、と、今までそう教えられてきたからかもしれません。
 でも、ほんとにそうなのでしょうか。歴史を振り返ってみても、現代の日本をみても、ほかの国と比べて日本が特別素晴らしい国(もしくはだった)とは言い切れないようだし、円安のニュースに接したりすると、むしろこれから世界から取り残されていくような感じすら……。
 ではなぜ日本人は皆、「日本は特別な国だ!」と思い込んでしまうのでしょうか。
 その謎を解くカギは、良くも悪くも日本人のこころに根付く「神風思想」にあり!というわけで、その歴史を丁寧に紐解いていくのがこの、『神風頼み――根拠なき楽観論に支配された歴史』であるわけです。
 元寇や特攻隊以外にも、神風思想は日本の歴史に深く根ざしています。その一方で、それへのアンチテーゼともいうべき思想が日本にはあったこともこの本は教えてくれます。そう、日本のほんとうの魅力はそうした歴史を知ることでこそ、はじめて理解できるんです!
 8月15日の終戦記念日に向けて、日本人に根付く神風思想の歴史を知ることで、世界に取り残されつつある日本をこれからどう変えていくことができるのか、気づきの多い本書をぜひご一読ください!

『怪談未満』

三好愛 著

営業担当・大槻から一言
 あのもわもわ(?)としたイラストが各方面の出版物に登場中の、人気イラストレーター・三好愛さんの新刊エッセイ本です! 三好さんのエッセイは、必ずしもよくあるかたちではないご自身の感覚や認識、出来事を言葉で象るように描いているのがいいな、と個人的に思っています(小学校の冬の日、掃除当番で電気をつけるほどでもない薄暗い室内の光のぐあいを「うざい」と思うとか!)。そんな三好さんが、妊娠出産子育てを経験された時のこともこの『怪談未満』には書かれています。ぜひそちらにも注目してみてください。
 現在イベント・フェアを刊行に向けて仕込んでいます。開催いただく店舗さまのリストを後日更新していきますので、皆さまぜひチェックしてみてくださいね。

『葬儀!』

ジュリエット・カズ 著
吉田良子 訳

営業担当・見野から一言
 世界各地の多様な葬儀について書かれた本、その名も『葬儀!』。何とも単純明快なタイトルですが、中身は大充実。フランス、ルーマニア、ボリビア、インドネシア……等々、世界13か国のユニークな葬儀を、歴史や文化などを踏まえながら読みやすく、コンパクトに紹介します。
 私がこの本で一番推したいのは、日本の葬儀についても取り上げられている事!
 日本人の葬儀っていえば、仏教か神道のソレでしょ、と思っていた私。
 その予想に反して、日本独自の弔いとして、東日本大震災を機に知られるようになった亡くなった方とつながるための「風の電話」と、死後49日間だけ故人の人格や顔、口癖、しぐさをロボットに憑依させる「デジタルシャーマン・プロジェクト」の二つの事例が取上げられています(もちろん「伝統的」な僧侶による読経や火葬などにふれつつも、ですが)。
 一見、「それって葬儀といえるのか!?」と、日本人の私でも戸惑ってしまう事例ではありますが、でもたしかにどちらも人の死を弔うための行為であるから、これらも「葬儀」の一種なのかな~、フランス人の著者にはこれが日本独自の文化に見えたのか~、とハッとしたり……(「デジタルシャーマン・プロジェクト」に関しては日本人の私でさえも知らなかった……)。
 逆に、本書に取り上げられている葬儀で日本人の私がびっくりしてしまったのは、ニューオーリンズの音楽葬!
 ニューオーリンズの音楽葬では、葬儀場から教会までは葬列はしっとりゆっくり進むけれど、教会から墓地までは、人々はリズミカルに踊りながら向かうそうです。通行人が葬列に加わることもあるそうで、この儀式には来世への陽気な旅立ちを祝う!という意味もあるんだとか。日本の葬儀の、しんみりしとしとした雰囲気とは全く違う、陽気で明るい葬儀も世界にはあるのだなあと少し驚いてしまいました。

 今は「死」が非日常になりすぎて見えなくなりがちだけど、弔いの仕方は時代と共に、日々変化し続けているのだなあという事に気づかせてくれる本でもあります。
 そしてライトなエッセイでありながら、巻末には文化人類学者である金セッピョル氏による解説もあります!そこも超見どころ!(例えば、上でふれたニューオーリーンズの音楽葬。ただ陽気なだけではない、その複雑なルーツについて解説してくれていて、本編を読んだあとに読むとさらに理解が深まります!)
 まさに「死の文化」を知るための入門書。コロナでまだ海外旅行に行く勇気はないよ~という方、ぜひこの本で世界中の葬儀と文化を巡る旅に出掛けませんか?

『快適なトイレ』

日本トイレ協会 編

営業担当・木村から一言
 子どもの頃、夏休みになると田舎に帰省するのが楽しみであり恐怖でもあった。母の実家は農家だったので牛を飼っていて、家の中では蠅やらアブやら、とにかく大量の虫がいた。お風呂は薪をくべて沸かしていた。寝る時は蚊帳の中。小さかった頃、そんな絵にかいたような田舎の家に泊まるとき、怖かったのは夜中のトイレだった。牛の匂いと交じっていて臭いし、汲み取り式で落ちたらと考えるとゾッとした。昭和の頃、当時の公共トイレ(便所)はいわゆる3K(暗い・臭い・汚い)に(怖い)をプラスして4Kといわれていて、この本のテーマである「快適さ」とはほど遠い場所。しかし昭和~平成~令和を経て、飛躍的にトイレ環境は進化し、今では当たり前に感じるが、不安や不満を感じないトイレに出会えるようになった。この発展の舞台裏にはいったい何があったのか。そこには十人十色の感覚でもある「快適さ」を追求し続けた努力や執念があった。技術の進化や、持続のための工夫、そしてこれからの課題も含め、トイレの未来まで考える大変興味深い一冊。

くだらないものがわたしたちを救ってくれる』は7月8日(金)、『神風頼み』は7月21日(木)、『怪談未満』『葬儀!』『快適なトイレ』7月22日(金)の配本予定です。

 一部の新刊は下記のリンクにてプロローグなど公開中です。ぜひこちらもチェックしてみてください!

 それではまた来月もよろしくお願い致します!


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