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『太陽系最後の日』読書感想。


アーサー・C・クラークの短編集。

『太陽系最後の日』
7時間後に滅亡する地球へ人類を助けるため
”「わたしはあの連中が怖いんだ…」
二十年後、その言葉は、笑い事ではすまされなかった。”
に背筋がゾクっとする。

『地中の火』
スペインによる征服によりもたらされた病原菌による悲劇に対するアイロニー。
やった方とやられた方の温度差にゾッとする。


『歴史のひとこま』
こんなに洒落たディズニーの使い方はない。
この短編集で一番好きかも。

『コマーレのライオン』
〈攻殻機動隊sac2045〉を見終えたばかりなので、かなり既視感がある。
最終的な決断が正反対なのが面白い。
思い通りにならないことを面白がらなくなってしまった人間は退化しているのか。
それとも新しい世界を受け入れる心づもりが整ったという意味で進化しているのか。
もしどちらかを選べと言われても、時代の狭間にいる私にはわからない。
我が子そのものと歩んでいけるなら思い通りにいかない人生も愛おしいけれど、生きていれば心が折れそうになる瞬間にも度々出会う。
まだ旅の途中。
考え続けることが生きる意味に繋がっていくはず。

『破断の限界』
“他者の気持ちなどわからない“
一見アイロニックなこの言葉の真意を理解するか否かで、見えてくる世界、それによる選択が変わってくる。
一方通行な私情に囚われ視野狭窄に陥った宇宙飛行士の悲劇。

『かくれんぼ』
スリリングなカーチェイスに近い楽しさがある。

『守護天使』
幼年期の終わりの元になった短編。

『時の矢』
タイムトラベラー物。
恐竜の足跡とタイヤ跡が交錯するシーンにときめく。

『海にいたる道』
陸から海へ旅立つ者とそこに残る者。
同じく地球から宇宙へ旅立つ者とそこに留まる者。
別れてからー年立ち、宇宙へ旅立った人類たちが引き金となったとあるトラブルが原因で地球が壊滅の危機に。
地球に残った人類を救うため、久方ぶりに地球に帰ってきた人類と残った人類との相違が興味深い。
ー年の短編なのに、団塊の世代とZ世代との対峙を見せられた気分になった。
常に前へ進むことが基本となっており、初老になっても少年のような身軽な好奇心を持つ宇宙から来た人類たちが団塊の世代、進化を求めず芸術と共生を敬う地球に残った人類たちがZ世代と似通っていて面白かった。


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