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火星ナツミ
2022年3月29日 16:45
厳かな雨音 波紋広がる 四畳半の神殿で産まれた夕焼けと夜空の間の子微弱な陽光 柔らかな影そこから抽出された 一滴のいのち赤と黒朽ちる間際 揺れる視界最後の閃き 火花散る オレンジ濃縮した草の匂い 辺りに立ち込める願いが そこに詰まっていた
2022年3月27日 18:17
不躾に吹き抜ける風があの子の匂いを運んできたメロンパンの匂いのする髪の色強気な無知と無知からの劣等感が香ばしい格子模様を描いている彼女の口癖は”しょうがない”仕様がない使用がない枝葉がないどれかはわからないけれど絶望していることはわかるコンプレックスの結晶で化粧直しした彼女は残雪のようにまばらなお粉が不細工でそっと舐めると甘くてキンと痛い大袈
2022年3月23日 18:23
小蝿を疎ましく思わなくなったのは咽び鳴く蝉の声で目覚めたあの日から泳ぎ揺蕩う小蝿の群れは今は亡きあの人のかたちをしてた腕に塗りたての日焼け止め絡まり込む小蝿が愛おしい私はあの人を取り込むハエ取り紙表皮だから表面であり表層だけれどそれでも嬉しかったいつの間にか小蝿はほそびに変わり私の本質の一部になってしまった
2022年3月21日 16:39
腕が痺れて目が覚めたしんしんと指先に残る小波の残響を聞きながら薄暗さと仄明かるさがスウィングする隙間を怪盗の足取りで駆け抜ける何十回も異世界への扉を開く私は鏡の国アリス読んだことはないけれどそれでも腕に乗った小さな毛の塊はチェシャ猫のようでなんとなく頭がクリアになった
2022年3月19日 11:25
曖昧なニュースに町並みは遠ざかる走馬灯巡る再会の日は一瞬で不確かな足場は忽ち崩れ去り復活の合図は偽りだったことを知る目を瞑ると見えるあの景色雨の日は晴れの日より躊躇いなく土筆をつめるそんな凡庸さが孵化する前にやらなければならないことがある
2022年3月15日 15:02
“美幸ちゃん“だったか“美雪ちゃん“だったか字は忘れてしまった空の彼方から雲雀の透き通る鳴き声が聴こえる顔をあげると彼女がいたいつも誰かが隣にいていつもみんなに愛されていたこぼれ落ちる木洩れ陽のトンネルですら彼女を祝福しているように見えた美しい笑い声が印象的な女の子神を信じ神に踏み躙られそれ故により一層神を信じていた私たちは同じ寮に住んで
2022年3月12日 14:39
影を踏むように韻を踏む涙の影には透明な韻が響く因果なき関係 結ぶ韻は淫乱な狂気と隠したいあの日謎解く生命の輪隕石が落ちてきたことは知っていても潰された牛のことは誰も知らない針穴の視界がもどかしくて悔しくて張り裂けそうで今日もまた誰も彼もが韻を踏む
2022年3月9日 12:59
白日の果実は薄汚れた灰色の果肉濡れそぼった病を懐に隠し込む強かな生命体呂律が回らず羅列が乱れるお行儀良いのはもうなしで不確かなビジョン作り込んだのは自分偽物を重ね過ぎて本物が透けて見えて泣けてくる不完全な有性生殖幼年期の終わりは始まりの合図
2022年3月5日 15:52
しゃっくりが出るようにあの人の名前が飛び出てくる身体の奥底から湧き出る原子のカケラたち喉をくすぐる連なりが音に変化しビートを刻む心の誤作動から生まれるのがしゃっくりなら痙攣する横隔膜は心で言うとどの辺りになるのだろう沸騰するお湯によく似た粒だった痙攣もしこれと同じようなものだとしたらいつか蒸発して何も無くなる日が来るはずだ行き場を無くした熱がコロコロ笑う空焚
2022年3月2日 16:02
武装するオレンジ脱走するニューカマーあの日“居場所はなかった“と歌っていたのはどこの誰?思い出せない反転する魂はベヘリット拐われた魂はあの日の私を置いていく過ぎ去りし過去の傷を金継ぎで彩るのがマイブームふざけんな傷は疼いてこそ意味がある“全て取りこぼしのないように“完璧の外にこそ開くニューワールド踏みしめて再び思うココデハナイドコ