見出し画像

半分の月がのぼる空 感想 ボーイミーツガールだけど根本は生と死の話

あらすじ

17歳の裕一は入院先の病院で本好きの絶世の美少女里香に出会う。世界一ワガママな彼女は難病を抱えていた。メディアミックスも話題となった大人気のシリーズ第一巻。

これは、男の子と女の子が出会う、普通の話。だけど、僕たちにとっては本当に本当に特別なことだった――。肝炎で入院中の高校生・戎崎裕一はエロ本集めが趣味の多田さんや元ヤンキーの看護師・亜希子さんに翻弄される日々のなか、同い年の秋庭里香に出会う。人形のように美しく本を愛する文学少女、そして女王様のようにワガママである彼女は、難しい病気をかかえていた。彼女にふりまわされながらも裕一は恋におちていく――。「聖地巡礼」を生んだ、ライトノベルの金字塔のリメイク版、イラストも新たに登場!!

https://www.amazon.co.jp/dp/B00F3TIF1Y

いろいろメディアミックスされたけど

ラノベ版が一番好きですね。ラノベ版が刊行されていた当時はSFでもファンタジーでもないラノベはめずらしい部類に入るらしく人気が出ないのではないかと作者があとがきで心配していたのが記憶に残っています。確かに当時は少なかったかもしれないけど、少し後に結構増えてとらドラなんかのヒットにつながっていったような気がします。

ラノベ版二巻のエロ本処分の話も結構好き

ラノベ版の二巻って案外評判悪いんですよね。でもしょうがないんです。主人公が親しくなった入院患者の多田というおじいさんからもらった大量のエロ本をヒロインに見つかってしまう。入院生活が長く潔癖の気があるヒロインと仲がこじれてしまう。最終的に主人公が謝り、エロ本を焼却することでヒロインに許してもらい仲直りするという内容だからです。
しかし、多田さんの情報を付け加えると話が変ってくる。多田さんは一巻で急死しているんです。その死が主人公にとって衝撃になって一巻ラストにも影響してます。つまりエロ本とはいえ親しくなった老人の形見みたいなものなんです。それをヒロインに見つかったからといって簡単に処分できるものではないと言えばないんです。
最後の焼却炉にエロ本に投げ込んでいくシーンは死人を火葬炉に見送るシーンのようにも見えます。主人公による多田さんの送り方だったんでしょう。多田さんを送る、つまり過去にしていく、忘れていく行為をヒロインのためにします。
のちに手につかめるものは一つだけみたいなフレーズが頻繁に出てきてようやく気付きますが、その一つを放さないために主人公はひとつづつ捨てていかないといけないのです。私はそのはじめの一歩を進めたこのエピソードが本当に好きなんです。
多田さんとの思いではエロ本自体じゃないのでまだ救いはありますが、そのほかはどうなんだろうと…

正直、リメイク版は解釈違い

いったんラノベ版がラストまで終わったら作者がセリフ伊勢弁にしたり、構成を少し変えたりした完全版という名のリメイクはどうしても私は解釈違いで少し苦手です。
どこが解釈違いなのかというと主人公の伊勢弁です。主人公は高校卒業したら東京の大学に行ってそのまま伊勢には帰りたくないと思っているような田舎によくいる東京にあこがれるシティボーイ気取りなんです。そんな少年がまず最初に気にするのは言葉でしょう。田舎の訛りを本当に嫌って、標準語をはなして周囲に変な子扱いされるまでが田舎のシティボーイ気取りだと思っていたので、リメイクで伊勢弁話す子になって、驚きました。
改めて読んでみたけど解釈違いだなぁ。

『半分の月』の私の解釈

ほとんどあらすじ通りのストーリーなので、特にストーリーの補足はしてきませんでしたが、ここで主人公とヒロインの情報に補足しておきます。
主人公の裕一は小さいころにお父さんをなくしており、母子家庭になってます。裕一には酒浸りで暴力的な父の記憶がほとんどだが、カメラをいじっていた時だけ優しかったのが印象に残っています。
ヒロインの里香は父を病気で早くになくなっていて、主人公と同じく母子家庭です。主人公の父親とは正反対に良い父親だったようで、また最後まであきらめず闘病して、娘に希望を見せようと頑張ります。そして最後の手段の手術に挑みその途中で亡くなってしまいます。里香の母親はそのせいで娘に対して過保護気味になっています。そして父が手術で亡くなったため里香は手術に対して臆病になっています。

こうやって見ると二人とも父親両方なくしています。あまりよくない言い方ですが、母親のみという半分欠けた家庭にいます。
また里香は病気のため普通の生活を、裕一も里香とともにあるために夢をあきらめなければなりません。やはりかけた生活が未来に待ってます。あまり希望が見えない中で生き抜いていかないといけない二人がそれでも生きていくというところがやっぱり半分に月に表れているんだなと、思います。半分同士くっついても結局半分だという解釈はあまりに残酷なため、友人たちには却下されましたが、やっぱり私はラノベ版5巻、つまり本編のラストで満月が情景描写されますが、その瞬間だけなんだよなと思ってしまします。

字面を追うのが嫌なら

ラノベ版や文春版が嫌なら映画版がおすすめです。大泉洋が出演してます。いや大泉洋が出ているからコメディテイストになっていることとか全くないのですが…
映画版は現在文春版として出ているものをさらに再構成して二時間弱の尺にして雰囲気をそのままにしています。文庫の小説四巻分をどうしても読みたくないなら映画を見るとすっきりまとまっていて『半分の月が~』の雰囲気を味わえます。

まとめ

ラノベというジャンルでは一番好きな作品について語れたのでよかったのですが、正直好きすぎると枝葉末節の部分を語りたくてしょうがなくなるので、あまり未読の方を引き付けられないような内容になりがちだとちょっと反省です。
また舞台の伊勢に一回は行って、伊勢うどんと赤福を食べたいものです。

この記事が参加している募集

映画感想文

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?