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愛着障害ってなに?

今の時代で、精神的な障害を持っている人は珍しくありません。
生まれつき持っている人もいれば、生活していく中でストレスなどを受けたことが原因で発症することもあり、決して他人事ではない存在です。

ですが、うつ病や発達障害のように、まだ世間に知られていない疾患も多くあります。

そのうちの一つに、「愛着障害(アタッチメント障害)」という物があります。

愛着障害とは?

愛着障害とは、幼少期に何らかの理由で養育者との間で愛着が形成されず、子供の精神や対人関係に問題が出ている状態です。

虐待や養育者との離別で起こることが多く、乳幼児期から幼少期に養育者と愛着を築くことが出来ないと、
過度に人を恐れる、誰に対してもなれなれしい、という症状が出てくることがあります。

愛着(アタッチメント)ってなに?

愛着とは主に乳幼児期の子供と母親を代表とする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことを言います。

子供はお腹が空いたとき、おむつが汚れたときなどに感じた驚きや恐怖を泣くことで気持ちとして表現します。
そして子供が泣くたびに、養育者がその原因を解消します。

このように養育者と子供が抱っこなどで触れ合ったり、声をかけてコミュニケーションを取る中で、子供は
「この人は自分の要求に応えてくれる」
「この人はいつも抱っこしてくれる」

など、特定の養育者を認識するようになります。

子供は生後3ヶ月までは誰に対しても笑ったりしますが、生後3ヶ月を過ぎると養育者とそうでない人を認識できるようになり、
これが「愛着形成の第一歩」になります。

この愛着を土台にして子供は成長していくので、子供の発達のために愛着形成は欠かせないことです。

愛着が必要な理由

愛着を形成することが具体的にどのように子供に影響していくのかというと、愛着の重要性は大きく分けて3つあります。

人への基本的な信頼感の芽生え
子供は特定の養育者と愛着を築くと、その愛着者に甘えたり依存するようになります。
養育者に甘えてそれを受け入れられる、というようなやりとりを繰り返すことで、人と関わる楽しさや喜びを体験していきます。

自己表現力やコミュニケーション能力を高める
愛着を形成した相手に何かを要求したり、時には相手の要求を受け入れるということを行うことで、子供は自分が求めていることをどう表現するのか楽しんだり、難しさを知ります。
これによって表現力やコミュニケーション能力を育てていくのです。

自己の存在と安全を確保する
子供は不安や危機を感じたとき、養育者を「安全基地」として自分の身を守ろうとします。
安全基地とは自分の興味や好奇心で見知らぬ世界を見るとき、子供の拠り所となる存在です。
自分の好奇心で見知らぬ世界を探索すると、不安や恐怖、心理的・身体的苦痛を感じることがあります。
そんな時に安全基地へ戻ることで、子供は安心感を得ます。

母親と愛着を築いて母親が安全基地になっている場合、母親のもとへ戻ると安心感を得て、このような探索と避難を繰り返すことで好奇心や積極性、そしてストレスなど負の感情に耐える力も身に着けていきます。

愛着障害の定義

愛着障害は
「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」
「脱抑制型愛着障害」に診断が分けられます。

どちらも5歳以前に発症するとされ、2つの違いとしては以下のように
・人に対して過度に警戒することを
「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」
人に対して過度になれなれしいことを
「脱抑制型愛着障害」
とされています。

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)

反応性アタッチメント障害は5歳までに発症し、子供の対人関係が持続的に異常を示すことが特徴です。
その異常は情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものです。
この症状は両親によるひどい無視や虐待、または深刻な養育過誤の結果として起こるとみなされています。

反応性アタッチメント障害で見られる症状の例
恐れや過度な警戒
同年代の子供との交流が乏しい
自分自身や他人への攻撃性

成長不全を起こした例もある。

脱抑制型愛着障害

脱抑制型愛着障害は5歳までに発症し、周囲の環境が大きく変化しても持続する傾向を示す、異常な社会的機能の特殊なパターンです。
例としては、
誰にでも無差別に愛着行動を示す
注意を引こうと見境なく親しげな振る舞いをする

などがありますが、仲間と協調した交流は乏しいとされています。
また、環境によっては情動障害や行動障害を伴います。

子供が愛着障害である場合の具体的な傾向

子供が愛着障害の場合、次のような態度や素振りを見せることがあります。

「反応性アタッチメント障害」の場合

反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)の場合、相手が養育者でも極端に距離を取ろうすることがあります。

その結果、
養育者に安心や慰めを求めて抱き着いたり泣きつくことがほとんどない
笑顔がなく、いつも無表情なことが多い
他の子供に興味を見せず、交流しようとしない

という様子が見られることがあります。

「脱抑制型愛着障害」の場合

脱抑制型愛着障害の場合、養育者だけでなく誰に対してもべったりくっついてしまったりすることが多く、自分を見てほしいがために不注意や乱暴な行為をしたりして、周りを困らせることがあります。

特徴的な行動としては
ほとんど知らない人でも何のためらいもなく近づく
知らない大人に抱き着いたり、慰めを求めたりする
落ち着きがなく、乱暴になる

というものが挙げられます。

2つの障害に共通して見られる態度や素振り

どちらの愛着障害でも見られることとしては、強情だったり、意地っ張り、我が儘という態度があります。
どちらの障害も子供と養育者の愛着形成が不安定なことから起こるので、愛着障害を持つ子供は養育者に甘えたりすることが出来ません。
そのため意地っ張りになったり極度な我が儘になってしまうのです。

また、子供が養育者を安全基地としてみなしていない場合、
養育者との別離や再会するとき、養育者から視線を反らして近付く
抱っこされているときに関係ない方向を見ている
見知らぬ場面に出くわしても安全基地(養育者)に向かう素振りがない

など、子供の視線や行動に違和感が見られることもあります。

愛着障害の原因

愛着障害の原因は、子供と養育者の間で愛着が上手く形成されていないことが大きく関係します。

具体的な例としては、
養育者と死別したり離別して、愛着の対象がいなくなってしまう
養育者から虐待やネグレストを受けるなど、不適切な環境で育てられた
養育者が子供に対して無関心で最低限の世話しかせず、放任している
養育者の立場の人間が複数いて、世話を焼いてくれる人が頻繁に変わる
兄弟など他の子供と明らかに差別されて育てられた

などがあります。

このように、本来愛着を形成する対象に危害を加えられたり、自分が育った環境が安全ではなかったりすると愛着の形成が阻害されてしまうのです。

特に生後6ヶ月から1歳半までの間は愛着を形成するのに大切な時期と言われており、この間に愛着の形成を阻害することが起こると、子供の成長に大きな影響が出ます。

愛着の阻害は子供と養育者の愛着が形成できないだけでなく、人に対する信頼感が芽生えなくなる原因にもなります。
一度その状態になってしまうと、愛着形成を取り戻したり修正することはとても難しいことが多く、その結果として上記のような傾向や行動が見られるようになってしまうのです。

大人の愛着障害

愛着障害は5歳になるまでに発症するものですが、子供時代を過ぎれば関係なくなる、というものではありません。
子供の頃に発症した愛着障害が治療されないと、
大人になってからも愛着障害の症状が続くことがあります。

愛着障害はただ単に
子供時代に養育者と愛着を築けなかった、ただそれだけ
というものではありません。
愛着が形成されず、それをそのままにしてしまうと、子供が大人に成長するうえでの人格形成や心の持ちようにも大きな影響を与える要因になることがあるのです。

大人で愛着障害があることは珍しいことではないですが、大人になってからも情緒や人との交流関係を作るときに苦労することがあるだけで、本人にその原因が愛着障害であるという自覚が少ないこともあります

大人の愛着障害で見られる特徴

大人が愛着障害を発症している場合に見られる特徴を項目ごとに挙げてみると以下のようになります。

情緒面

・傷つきやすい
・怒りを感じると建設的な話し合いが出来なくなる
・過去に囚われがちだったり、過剰に反応する
・物事を0か100かで捉えてしまう
・意地っ張り
 など

情緒面では他人の何気ない発言に過剰に反応してしまい、傷ついたり、過去の恐怖や失敗を極度に引きずってしまうことがあります。

また、一度頭に血が上ってしまうと何に対して怒っているのかも整理できず、周りに当たり散らしてしまうようになります。
「ある・ない」「好き・嫌い」など人や物事を極端にしか捉えられず、
「この人は苦手なこともあるけれど良いところもある」
というような柔軟な考え方が出来ないことも挙げられます。

対人関係

・親などの養育者に敵意や恨みを持つ
 または過度に従順になり、親の顔をうかがう
・親の期待に応えられないと、自分をひどく責める
・他人とのほどよい距離感が取れない
・恋人や配偶者、自分の子供をどう愛したらいいのかわからない
 など

対人関係の面では、愛着障害の原因となった養育者への態度に症状が見られる場合が多いです。
養育者に強い敵意や恨みを持つことでいつまでも反抗的な態度をとる
逆に親に対して従順すぎてしまい、大人になっても親の言いなり

という症状が表れます。

また、子供の場合と同様に、人とほどよい距離を保つことが出来ず、関係づくりに苦労する場合もあります。

アイデンティティが確立できない

大人になると仕事でもプライベートでも、自分で選択することを求められますが、愛着は自分の好奇心や積極性、自己肯定感の基礎にもなるものなので、愛着が形成されないまま大人になってしまうとアイデンティティを確立する青年期や成人期に決断で苦労する場合があります。

その結果
キャリアを上手く選択できず、時間をかけたのにわずかな見聞や情報で決めてしまう
・自分の選択に対する満足度が低い

という症状が出てきます。

愛着障害が引き起こす他の疾患

大人が愛着障害を持っている場合、他の疾患の発症原因になってしまうことが多くあります。
・うつ病
・心身症
・不安障害
・境界性パーソナリティー障害
 など

このように大人の愛着障害は生活に苦労する症状が出るばかりでなく、他の疾患を引き起こすこともあります。
ですが、大人になってからでも工夫すれば症状を和らげることは出来ますし、困りごとを克服出来たりもします。

愛着障害の治療法

愛着障害は発達障害のように生まれ持った疾患ではなく、育つ環境や養育者の影響を受けた後天的なものです。
子供と大人で少し治療は変わってきますが、改善の可能性はある障害です。

子供の愛着障害の治療法

子供が愛着障害だと診断された場合、まず行うべきことは
安全地帯の形成です。

愛着障害の子供の多くは養育者を安全地帯とみなしていないので、子供に
「養育者=安全地帯」と思ってもらえるように、親族や周りの人が親子を支援していくことが必要です。
安全地帯が出来ることで人と接することへの安心感や信頼感が生まれ、他の人との接し方や距離感が改善されていきます。

また、子供が愛着障害を起こしてしまう場合は、養育者やその家族も何らかの支援が必要だったり、別の問題を抱えていることが多くあります。
その場合は子供の治療だけでなく、
養育者や家族も含めて幅広くアプローチする必要があります

例えば虐待が原因だった場合は子供と養育者の距離を一度離してみたり、養育者の様々な悩みが原因の場合は生活保護や育児・家事サービスを利用するなど、愛着障害を生み出す全ての要因の解決策を医師やカウンセラーと探し出しましょう。

大人の愛着障害の治療法

大人になってからの愛着障害の治療では、最も大切なこととして
幼少期に得られなかったスキンシップやコミュニケーションなど愛着形成のための行動を補ってあげることです。

大人になると親と子供として接しながら甘えるのは難しい場合もあるので、その時は恋人やパートナー、学校の教師や友人などとのやり取りが愛着障害克服への第一歩となることがあります。

また、職場などで対等な人間関係を作り、自分の存在価値が認められるような環境に身を置くことで、アイデンティティの確立や自信を持つことにつながります。
それが結果的に、愛着障害の改善になる可能性があるのです。

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