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怖い話のウラ話・第13話「ドッペルゲンガー」

 あるテレビ番組を見ていた時のことです。
 あるところに、他人のドッペルゲンガーが見えると自称する霊能力者さんがおりました。太めのホストと言った感じの黒服の、意外にも軽そうな雰囲気の人でした。
 彼が、
「ドッペルゲンガーは、いつでも人混みの中にいる」
 とか言うので、取材班が同行して、東京の繁華街に出て、しばらくウロウロしていました。
 やがて、
「今日はいないっすね」
 と、あっさり。
 人混みを歩く後ろ姿をカメラは追い続けました。ふと、自称霊能力者が振り返り、
「見ようとすると、ドッペルゲンガーが警戒していなくなるから」
 とか、小さな声でつぶやきました。
 おやっ? 言い訳ですか?
 あれあれ、いつでもいるんじゃなかったの?
 その時、
「消えたドッペルゲンガーは、まだ、近くにいる筈である」
 との真面目なナレーション。
 しかし、私は、
「人間じゃないんだから、消えたら終わりやろう」
 と思いました。
 ドッペルゲンガーは、自分の姿を自分で見る幻覚のことです。他人の姿が見えても〈ドッペルゲンガー〉とは呼べません。それは霊体ではなく、幻覚の一種だそうです。もちろん、本人と見分けのつかないものを、本人を知らない人が見たとしても〈霊現象〉とすら呼べません。見分けのつかない、しかも霊体ですらないものを、どうやって見分けると言うのでしょう。
——それが、この霊能力者の凄いところやねん。
 とでも、言いたいのでしょうか?
 消えたドッペルゲンガーの消息は、その後、ようとして知れない。

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