めくるめくネコ広告の世界
インターネットの世界で、生態系の頂点に君臨する生物はなにか。
そう、ネコである。
人間がよからぬことをすると簡単に叩き潰されるネット界で、ネコだけは何をしても許される。
まさに百獣の王。
ネット民に愛されるネコ達は、Web広告の世界でもたいへん重宝される。
今日は、皆さんを魅惑のネコ広告の世界へとご招待しよう…。
の前に、ちょっとお勉強
みなさんは、"3B"という言葉をご存知だろうか。
人間が本能的に魅力を感じてしまう3種類のイメージ。
Beauty(美女、美男)
Baby(赤ちゃん、子供)
Beast(獣、動物)
これらは、人の目を留めさせ惹きつける効果があることから、広告表現として非常によく利用される。
一見、「斬新な企画」によって流行したように見える広告も、よく見るとこれらの要素が陰で効いているケースが多々あるのだ。
こちらの記事では、3つ目の要素"Beast"のうち、ネット民が3度のメシより好きな「ネコ」を活用した広告事例をご紹介していく。
CIAOちゅ~る/いなばペットフード
ずっと見てられるなぁ…。
広告戦略の話をすると、「知名度の低い商品は商品名を連呼する」というのは広告の定石だ。広告の中では商品名をしっかりとアピールしておかないと、商品が「広告が面白かった、なんとかいう商品」になりさがってしまう。
これでは売り上げが立たない。もはや広告というかボランティアだ。
飼い主の視点でネコに食べさせる様子を描くことで、世の飼い主たちに「疑似体験」をうながし、感情移入させているわけだ。
なお、この表現は商品形状が特殊だからこそ成り立つ。類似品が多い商品で同じような広告を打ったとしても、広告効果は薄いだろう。
猫バンバン/日産自動車
たまんねぇ…。
起業が世の中のためになることをすることで好感度を上げていくという、いわゆる「ソーシャルグッド」と「バズ」を見事に両立させている。
自動車産業は、さまざまな技術革新を経て各社ともそこまで大きな商品スペックの差がない「コモディティ化」の状態に陥っている。
こうした環境の中では、商品がもつエモーショナルな価値(ブランド)によって他社との差別化を図ることでしか、商品をヒットさせるのが難しい。
さらに難しいのは、自動車産業ではこの「ブランド合戦」すらも長引いているため、「ブランドのコモディティ化」の状態に至っていることだ。
そんな中での、ネコ好きに向けたブランド訴求という新鮮な切り口。これによって商品価値が向上している。
Gravity Cat(重力猫)/PlayStation
そうきたか…。
プレイステーションソフト"Gravity Daze 2"のプロモーション動画であるこちら。
ゲーム業界は激戦区。各社は世のゲーマー達の可処分時間を奪い合い、自社のゲームを買ってもらおうと必死だ。
この動画の珍しいところは、ゲーマー向けにゲームの魅力を語るのではなく、より間口を広くとって、一般大衆に向けてゲームに興味をもってもらうための心理動線を築いているところだ。
ちょっとわかりにくいかもしれないので言い換えると、動画の終盤まで何の広告なのかわからない。それゆえ、ゲーマーでない人にも「やってみたい」と思わせるチャンスを生んでいる。
舞台を現実的な空間にすることで、ゲームがもつ世界観に視聴者を没入させることを試みている。
なお、制作陣によれば、この動画を制作するにあたり「ネットでバズっているネコ動画」をひたすら分析して、そのエッセンスを詰め込んでいるらしい。
・作業の邪魔をする
・牛乳をこぼす
・カーテンに紛れ込む
などなど。あざとい(褒めてる)。
Google Home Mini Loves Cats 篇/Google
いいもんだぜ…。
この動画も、かなりあざとい(褒めてる)。
・初めて膝に乗って寝てくれる
・トイレットペーパーを転がして台無しにする
・猫用ハウスではなく段ボールを気に入る
などなど、いかにもネットでウケそうなネコの仕草のオンパレードだ。
それぞれのシーンが、商品の活用シーンにスポッとはまっているのが気持ちいい。この構成を考えるのは、なかなか大変だったはずだ。
ネコは昔いっしょに過ごした飼い主の声を覚えているのか?/カルカン
そんなん泣くやろ…。
ちょっと珍しい、実験系の動画。
一般に「飼い主の顔を3日で忘れる」といわれるネコ。本当に、そんな恩知らずなのか? オチは動画を見てのお楽しみ。
ペットフード業界も、自動車と同様に差別化が難しい。「CIAOちゅ~る」のような商品差別化も大事だが、並行して「飼い主の気持ちに寄り添った企業」というブランド価値の獲得も目指した方が、長い目で見ると企業の資産になる。
長く続くブランドを目指すためには、視聴者の感情に食い込む「深さ」が必要だ。この動画は、その条件をクリアしているように思う。
さいごに
いかがだっただろうか。
今回は、「ネコ」という切り口で広告事例を紹介してきた。
冒頭に述べた"3B"は、人間の本能に根差した戦略であるため、飽きられることがない。
世の中に知られていない商品の新たな側面を提示する広告クリエイティブの考え方はもちろん大事だが、並行してこのような普遍的な人間特性を戦略に取り入れることも、広告効果を上げていくうえで有効になる。
最後に、身も蓋もなく開き直ったネコ広告の事例を2つ紹介して終わりたいと思う。
侍ドローン猫アイドル神業ピタゴラ閲覧注意爆速すぎる女子高生/チキンラーメン
「バズる動画の要素」をすべて取り入れた、節操のなさに振り切ったWeb動画。
タイトルの通り、ネコも登場する。
おいしいのに崖っぷちキャンペーン/JACK(森永製菓)
(※動画削除済みにつき画像のみ)
もはや、いさぎよい。
以上! それでは!
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