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感覚統合のミラクル〜じぶんのことをすきと言ってくれるまで〜

連日続く長女の癇癪で
親子ともにエネルギーの消耗が激しく
このままではまずいと
市の発達相談の敷居を跨いだのは
下の子の出産を翌月に控えた
2021年の8月でした。

そこから約1年半。
長女は5歳になりました。

爆発的な癇癪は落ち着き、園や療育先の先生も驚くほど、何事にも意欲的になってきています。

この1年半を振り返って、

■(あの時の)長女に何が起きていたか
↑今回の記事はこちら

■誰が、長女に、どんなアプローチをしたのか
↑次回以降で

を書いていきたいと思います。

大きな契機は2022年5月。
発達支援.com(宇佐川研)のケースカンファレンスに長女のことを取り上げていただいたことです。長女が4歳1ヶ月の時でした。(療育に繋がる前、医療機関の受診前です。)

主訴は

・不安と緊張が強く、情緒不安定
・集団活動に参加できない
・感覚の過敏が強い
・特に、お風呂の入浴拒否があり、顔に水がかかると泣き叫ぶので母子ともにつらい

以下は事務局と共有した当時の娘の様子です。


■感覚面のエピソード

・乳児期から離乳食のスプーン拒否や、中期のドロドロの形態食の拒否などがあった。
・4歳になるまで指しゃぶりを常にしていた。
・服の裾噛み、強い歯軋り、力強い抱っこの要求がある。
・においから走って逃げることがある
・耳塞ぎをする、「(音が)うるさい」と怒ることがある

■集団でのエピソード

・集団に入ると固まったり、逃げたりする。レストランで店員さんが注文をとりにきただけでも背を向けて視線回避する。
・園での合唱の際、途中から耳を塞いでいた。塞ぐ手を降ろした後は一点を見つめて放心状態。
・保育園への引き渡し時に「ママ行かないで」と号泣し、母に抱っこを求めてしがみつく。
・1歳児クラスの時から同じ園に預けていた。2歳児クラスの時は、泣かずに登園できていた日もある。2歳児クラスの時の担任の先生のことを好きだと話していた。3歳児(年少)クラスになってからは、先生のことをこわいと言う。年中からは幼稚園に転園。
・家を出る時には泣かない。保育園の門をくぐると泣き始める。
・口癖は「こわい」、「見てるだけがいい」で、年少クラスの時は「誰もいない保育園に行きたい」と言って、登園を拒否していた。

■本人の趣味・嗜好

・「かっこいい選手(ヒーロー)になりたい」と言う。悪者をやっつける人ではなくて、なんでもできる人という意味合い。
・物語や空想が好きで、いつでもどこでも人形や自分の手指を使ってごっこ遊びをしている。
・遊び方に強いこだわりがある。「◯◯って言って」とセリフを強要するなど。

■身体について

・不器用。
・手先よりも全身を使った運動の方がぎこちなく見える。
・寝起きや夕方以降はふらつきが出やすく、不機嫌なことが多い。
・空腹時は別人格かというくらい不機嫌になる。

■認知について

・知的な遅れはなさそう。言語理解は得意そうだが、発達検査などは受けたことがないので能力のバラつきなどは不明。


発達支援.comの事務局には、こういったエピソードだけではなく、
専用のケース・プロフィール記入用紙
も記入して提出しました。

妊娠経過から、出産の時の様子発育の経過何歳のときに何ができたかというチェックリスト感覚面の偏りを洗い出すチェックリストがついていてA4で全6ページのもの。

こうした紙面での情報と、あらかじめ送っておいた長女の動画、そして、ケースカンファレンス当日のzoomでの宇佐川研メンバーとの直接のやり取り(質疑応答など)を通して、娘のつまずきどころを探ってもらい、
様々な行動の背景について、以下の5⃣つの視点で【仮説】を立てていただきました。

整理して要点を書いていきます。

※この記事は、宇佐川研の公式ではなくて、ただそこで学んでいる個人が書いているものです。勉強中なので、間違っている部分があったらすみません。間違いが発覚したら都度修正をかけていくと思います。


1⃣【触覚防衛反応】が発達を阻害しているのではないか

≪触覚防衛反応のポイント整理≫
⑴触覚機能のバランス崩れている(本能的な触覚機能が優位になっている)ことが原因

⑵触覚(皮膚感覚)の過敏の強さゆえに、触覚への刺激が極度の不快や恐怖につながっている

本能的に、触れた物や人から身を守る行動(拒否する、攻撃するなど)をとる

⑷一方で、一度触り始めると(自分からは)過剰に触るというような反応が起きる場合もある

⑸早ければ生後半年過ぎ頃から出始め、1歳半頃までには明確になる

⑹ピークは2~3歳頃が多い

最大の問題≫
他者が(時には親でさえも)不快刺激を入れる存在・恐怖の対象になり、本来、保育者と子が共感的な関わりやふれあいのなかで形成していくアタッチメント(愛着:心理的な結びつき)が十分に育たないこと

その結果、
心の安全基地をもてなくなり…

■人をこわがる・避けるなど、対人関係にゆがみが生じる
→親と離れられない、集団に入れない、登園・登校できないなどの行動につながる

■情緒が不安定になる
→ 過度の不安や緊張が生じる、癇癪が増える・激しくなる、感覚過敏が悪化するなどにつながる

触覚防衛反応は単なる"皮膚感覚の困難"に留まらず、日常生活・社会生活全般に大きく影響する。

【娘へのアプローチをどう考えたか】
娘の触覚防衛反応は極めて高く、「こわい」と言わない日がないくらい常に情緒不安定でした。対人関係においては場面緘黙を疑うほど、他人と話すことを避けていました。

まずは、
①日常生活での本人の苦痛を軽減すること
をねらいにしつつ、その先に
②情緒の安定 と
③対人関係の歪みを修正すること(愛着の形成)
を見据えて、触覚防衛反応の改善に取り組むことが必要だと考えていました。


2⃣【低覚醒】で、自己コントロールができなくなる瞬間があるのではないか

≪覚醒レベルのポイント整理≫
⑴ここでの「覚醒レベル」は、脳の生理的な活動状態を指す用語

⑵覚醒レベルが上がりすぎると興奮状態(ハイテンション)、下がると反応が鈍い状態(低覚醒の状態)になる

⑶覚醒レベルは通常、無意識のうちにコントロールしている
ex.外で遊ぶときは覚醒を上げ、部屋で本を読む時は下げる

⑷覚醒レベルの上がりやすさ、下がりやすさは人それぞれ
[覚醒レベルに影響しやすい因子]
睡眠、疲労、低血糖、気圧、服薬など

⑸医学用語の「意識レベル」に置き換えて考えると、ここでテーマになる【低覚醒】は「正常」と、その次のレベル「意識混濁・軽度(呼べばすぐ答えるが、なんとなくぼーっとしている)」の間にある。
ギリギリ正常に近い、覚醒レベルのわずかな下がり

⑹一般的に馴染みの深い「睡眠と覚醒のリズム」という文脈から、眠そうにしている姿(あくびが出ている、まぶたがとろんとしているなど)や、本人が眠いと感じている場合【覚醒レベルが下がった状態=低覚醒】として捉えやすいが、眠そう・眠いというのは低覚醒の影響を受けたひとつの姿にすぎない。

≪低覚醒の影響を受けた子供の状態像≫

普段できていたはずのことができない
★本来もっている力を発揮するのが難しい

という姿が現れる。

①注意の向けどころ(転導性、過集中、焦点付け)のコントロールができなくなっている
ex.多動性、衝動性、不注意が増す

②情緒のコントロールができなくなっている
ex.過度な緊張・不安、癇癪が起きる、不機嫌or上機嫌

③判断力を維持できなくなっている
ex.ケアレスミスが増える、無謀な行動、危険な行動

④動作や行動手順ができなくなっている
ex.段取りが悪くなる、間に合わなくなる

それに加え、
もともとのつまずきが増幅する場合もある。

⑤感覚の過敏・鈍麻・防衛反応が悪化している
感覚過敏の悪化→不快が大きくなる、触覚防衛反応や聴覚防衛反応などが出やすくなる。
感覚鈍麻の悪化→自己刺激行動が出やすくなる。

⑥自己刺激行動が増えている
→自己刺激行動とは、自分で自分の身体に感覚刺激を入れる行動

[生理的な背景]
感覚の鈍麻で起こる(脳が足りないと感じる刺激を入れて補おうとしている)
触覚防衛反応の「取り込み行動」で起きる
③脳が覚醒レベルを維持しようとして起きる

[心理的な背景]
退屈手持無沙汰ストレスフルな状況下では、生じやすい。

〇触覚への刺激
(皮膚):指しゃぶり、手噛み、爪噛み、手叩き、頭叩きなど
(粘膜):指しゃぶり(舌)、目押し、鼻に物を入れるなど

〇平衡感覚への刺激
ロッキング、首振り、くるくる回る、飛び跳ねる走り回る、飛び降りなど

〇固有覚への自己刺激
手足体の力み入れ、飛び降り時のカカト落ち、アゴ突き、歯ぎしりなど

〇内臓感覚への刺激
嘔吐、反芻、息止め、過呼吸、空気飲みなど

※標準発達児者でも生じるが、その場合は(脳が)コントロールできる。

【娘へのアプローチをどう考えたか】
幼稚園から帰ってきたあとや気圧が低い時間帯は、ぼーっとしていたり、服の裾や爪を噛んでいたり、遊びやテレビに没頭して(過集中に入って)いたりすることが多かったです。声を掛けたときに返事をしない、ふらつく、物にぶつかる、癇癪に繋がる地雷が増えるなど、普段の様子とも違いがありました。
また、眠い時と空腹(低血糖)の時は、まるで1歳半〜2歳くらいに戻ったような姿で泣いており、情緒のコントロールができない様子がはっきりと見てとれました。

一日の活動が終わったあとなら、

①極力無理をさせない(チャレンジをしない)
②環境からの刺激を減らす(テレビのボリュームを下げる、明かりを暗めにする、関わりすぎずそっとしておく、など) 

朝や活動前であれば、

③覚醒レベルを上げられるようなアプローチをする(何か食べる、平衡感覚刺激を入れる、夢中になれたり興奮できそうな物を提示する)

ことを意識して生活するようにしました。


3⃣ボディーイメージの未発達が「できなさ」・「不器用さ」をつくり出しているのではないか

≪ボディーイメージのポイント整理≫
⑴ここでの「ボディーイメージ」は「自分の体に対する実感」

⑵「ボディーイメージ」の構成要素
▶︎触覚
(皮膚表面のセンサーで感じ取る)
触覚に防衛反応や鈍麻が出ている場合
・自分の身体の輪郭イメージが育ちにくくなる
・身体の位置関係の把握をしづらくなる
ex.自分の身幅が分からず人にぶつかる、おしりを拭くことができない(拭く位置を掴めない)

▶︎平衡感覚(耳石器・三半規管で感じ取る)
平衡感覚の反応性が過剰であるor反応性が低下している場合
・自分の体の軸の傾きが分かりづらくなる。
・動いている状態が分かりづらくなる。
ex.勾配のある地面を歩いていると真っすぐ進んでいるつもりでも下がっている方に歩いていく

▶︎固有覚
(筋肉・関節のセンサーで感じ取る)
固有覚の反応性が低下している場合
・全身でも手先でも、力加減が困難になる
・全身でも手先でも、運動の範囲の調整が困難になる
ex.鉛筆で書こうとすると芯が折れる、みそ汁をよそおうとしてこぼす

⬇️もう少し詳しく⬇️
宇佐川研で感覚統合を学ばれ、発達支援.comで講師をされているモンテッソーリ教師のりっきーさんの連載記事を引用させていただきます。

感覚統合の観点で見た子どもたちの発達の要素は、下のイラストのように就学前後の6歳ぐらいにかけて徐々にピラミッドのように積み上げられていき、おおよそ就学する頃には、入ってきた情報を整理して自分の思い通りに身体を動かせたり、コントロールしたりすることが可能になっていきます。

一見、感覚とは関係がないように見える 「手先の器用さ」や「コミュニケーション」もピラミッドの下側にある土台となる感覚の要素が育っているからこそ、自然と身についていくものなのです。
りっきーの凸凹(でこぼこ)道を行こう!発達障害の子どもは増えている!? 小学1年生で12%の衝撃 より
りっきーの凸凹(でこぼこ)道を行こう!発達障害の子どもは増えている!? 小学1年生で12%の衝撃 より

↓全文はこちらから

※主としてどの感覚につまずきがあるのかを見極める視点が大切。
※今現在そうでなくても、過去に反応が過剰であったり低下していた場合も影響が出る(残る)。

【重要】平衡感覚のつまずきの出方

①姿勢調節がうまくできなくなる(低緊張)

筋緊張が低下して、重力に対して体の軸を維持・調整することができない状態

ex.姿勢が崩れやすい、すぐ寝転がる、転びやすい、しがみつきの姿勢が難しい、不安定な場所でスムーズに動けない(体の軸を保てない)

筋緊張とは、脳が無意識に調整している筋肉の緊張。意識して使ったり、筋力トレーニングで鍛えたりできるのは筋力。

②眼球運動の未発達
回転後眼振(回転すると目が回る)という反射があるように、平衡感覚と目の動きは密接に繋がっている。

平衡感覚に対する反応性が鈍いと、目を動かすための神経回路が十分に発達していかず、目を動かすことが困難になりやすい。(過剰反応のケースもある)

ex.追視が苦手(同じ行を読む、一行とばして読む、キャッチボールがうまくできない)、注視が苦手(なぞるのが苦手、字を書くのが苦手)、まなざしを合わせるのが苦手、見比べたり見渡したりするのが苦手など

周辺視あそびが現れやすい
目の横でひもを振る、光に向けて手かざしてヒラヒラさせる、プロペラの回転や電飾の灯りに惹きつけられるなど

③「姿勢不安」や「重力不安」が生じる
ジェットコースターやコーヒーカップに乗った時、発汗、血圧、心拍数などの変化が起きたり、覚醒レベルが高まったり、乗り物酔い症状が出たりするように、平衡感覚は自律神経系にも深く関わる。

自律神経系に過剰な反応を引き起こすと…

★姿勢不安:不慣れな姿勢、支持面が変化することへの不安

★重力不安:平衡感覚刺激(揺れ)に対する不安

が現れる。
これらは平衡感覚に対して脳が防衛反応をとっている状態。触覚防衛反応と併発しやすい。

一言で平衡感覚と言っても、刺激の情報は5つある。どの刺激に対して防衛反応が出るのかを細かく読み取ることが大切。

平衡感覚情報の種類
[耳石器で感じ取る情報]
①前後左右の揺れ
②上下の揺れ ※重力の情報を含んでいる

[三半規管で感じ取る情報]
③水平回転(左右、 横方向の回転)
④垂直回転 (上下縦方向の回転)頭をに倒す形の回転
⑤垂直回転(上下縦方向の回転)頭をに倒す形の回転

(3)ボディーイメージが作り出す力

①運動企画
頭の中で動作イメージを作り上げていく能力。ボディイメージが未発達だと、「反復練習した動きは習得していくことができるが、新しい動き・慣れていない動きの組み立ては難しい」という困難が生じる。"器用さ"に直結する。

②チャレンジ意欲
器用に体を動かすことができると活動への意欲が高まる。逆に、ボディーイメージが未発達で不器用さが出ていると、苦手意識が出やすい。

③視空間認知
自分の体に対する上下・左右、サイズなどのイメージが、周りの物の位置関係やサイズなどを捉えるもとになる。

④図と地の弁別
自分の体と外界とを区別するフィルター的な機能が、多くの情報から必要な情報だけピックアップする知覚機能にはたらきかける。

⑤注意の集中、持続
触られた場所に意識を向けたり、提示されたものをじっと見たりするには、感覚に注意を向けていく脳の機能(定位)が必要。ボディーイメージは定位が育つもとになる。

⑥情緒の調整
自在に動かせる体がコントロールできる”気持ち”の源になる

⑦自我の発達
生理的な自己像(=ボディーイメージそのもの)と、心理的な自己像が自我を形成する。

(4)【DCD:発達性協調運動症】という視点をもつ

日常生活における協調運動(手と手、目と手、足と手など、複数の身体部位を協力させて行う運動)が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確、あるいは困難であるという障害。

ボディーイメージの未発達や不器用さについてを考えていくときには、生来の協調運動の困難さという視点をもつことも大切。

以前まとめた記事です↓

【娘へのアプローチについてどう考えたか】
ケースカンファレンス時に、娘の運動面の発達は6〜7割という見立てを聞くことができました。当時、4歳1ヶ月でしたが、体の使いこなしは2歳半〜3歳前くらいということです。

触覚防衛反応の高さから、触覚のつまずきがボディーイメージの未発達に繋がっていることは明らかだったので、

①防衛反応の改善を通して、ボディーイメージの発達につなげる

という視点をもちました。

また、低緊張あり、目を動かすことの苦手さあり、姿勢不安重力不安ありで、平衡感覚のつまずきが大きいことが分かったので、

②平衡感覚へのアプローチは必須

だと考えました。

体に力みを入れる、歯ぎしりなどがあり、固有覚のつまずきも全くないわけではなさそうでしたが、乱暴に見えることはなく、力加減の調節も割とうまくできていたので、まずは

③触覚と平衡感覚へのアプローチを優先する

ことに決めました。

また、協調運動の苦手さ運動企画の弱さ(初めての運動の組み立てができない様子)、チャレンジ意欲の低さが際立っていたことから、触覚防衛反応とともに、これらが集団活動を避ける原因になっている可能性が高いと思い、DCDの支援の方法についても調べることにしました。


4⃣知的な能力と運動能力の乖離によるストレスを感じているのではないか

知的な能力の水準は、興味・関心・好奇心の水準と同等。やりたいことがあったとき、それをできる運動面の育ちがないと、やりたくてもできなかったり、失敗したりする経験が多くなる。

車の運転に例えると…
旅行が大好きで、全国一周したいと思った。車で行こうとしたが、いつものスーパーと家の往復以外は無理だった…という感じ。通い慣れた道しか運転できない状態では興味・関心・好奇心を満たすことができない。

【娘へのアプローチをどう考えたか】
ケースカンファレンスの中での娘の運動面の発達の見立ては、生活年齢の6〜7割でした。それに対して、認知面は年齢よりも高い可能性があるとの指摘がありました。

両者の間の開きが大きくて、本人はストレスフルな状態に陥っており、日常的な情緒不安定や癇癪に繋がっていることが考えられました。

また、自分にはできないことが理解できたり、失敗経験から自信をなくしたりしているから、集団活動への参加をしたがらない、挑戦をしたがらない、という心理的な背景がはっきりと見えてきたので、感覚統合アプローチや、DCDの支援に加えて内面のケアの必要性を感じていました。


5⃣内面世界と感覚のつまずきとの掛け合わせで自爆しているのではないか

同じようなつまずきがある子どもたちでも、その結果どのような行動をとるか、どのような問題として表面化するかは、人それぞれ。それには本人の内面世界が大きく関係している。

《内面世界のポイント整理》

(1)氷山モデル
という考え方
ある子どもの行動を理解しようとした時、目に見えている現象(出来事)は、氷山の表層にすぎない。全体像を把握し、なぜその行動が起きているのかという問いに答えを出すには、隠された部分(水面下)に何があるのかを見ることが重要という考え方。

いつか書いたメモ
◯水面上に見えているものについて
癇癪、奇声、不適切な行動、情緒不安など目に見える子どもの状態像は様々だが、集団における状態像(つまずきの表面化の仕方)は、大きく2つのタイプに分けられる。

①できない系(おとなしいタイプ)
~できない、として表れる
ex.一人で遊ぶ、輪の中に入らない、フェードアウトする

②しでかし系(やんちゃタイプ)
~しでかす、として表れる
ex.かみつく、ひっかく、ふざける、おちゃらける

※娘は、本来は「〜しでかす」として表れやすい(攻撃に転じやすい)キャラクターをもっているのですが、触覚防衛反応の強さと、運動への苦手意識から、避ける・逃げるという、できない系の状態像が現れている…というちょっと複雑な読み取りが必要でした。教えてもらわなければ分かりませんでした。詳しくはキャラクターの話のところで。

1⃣〜4⃣まで書いてきた娘の発達の凸凹の話は、全て水面下のウィークポイント(つまずきどころ)の話です。さらに深いところにあるのが本人の内面世界。この内面世界には、本人の魅力がたくさん詰まっています。
ウィークポイント(つまずき)が改善・軽減されてくると、氷が溶けて、それまで見えなかった本人の内面世界の魅力が水面上や水面近くに浮上するイメージです。

(宇佐川研の事例検討会では、氷山モデルの中でも、最深部の内面世界をとても大切にしている印象を受けます。もって生まれたキャラクターと表現されていますが、この部分は、子どもの思いであったり、その子なりの考えや価値観が詰まった大切な場所です。そこを見ずして適切な支援はできないという考え方が、私が宇佐川研を好む理由の一つです。)

(2)心的欲求(心理学)をベースに子どものキャラクターを考えるということ

心的欲求は満たされることで育つ。満たされない部分は大人になってからもくすぶり続け、複雑化する。大人の場合は自分で解決の道を切り開いていくこともできるだろうが、子どもは自分で解決する(満たす)ことはできない。だからこそ周りの人間が欲求を満たしていくこと、満たせるだけの愛着関係を築いていくことが大切。

①承認欲求:存在そのものを認めてもらいたい
→かまってキャラ

②注目欲求:私のことを見てほしい
→見ててキャラ

※この二つは誰もがもっていて、自我形成や人格形成に不可欠。幼少期にはその欲求は高く出る。満たされなかったり、傷つけられる経験をしたりすると、パーソナリティの歪みにつながる。
※触覚防衛反応で他者とスキンシップがとれないと受け入れてもらう実感を得にくく、承認欲求が満たされにくい。
※自分のことを見てほしいけれど、不器用さから、見てて!というチャンスを失っていると、注目欲求を満たす機会がなくなる。

③達成欲求:できる自分でありたい
満たされると、努力家キャラになれるが、
失敗が重なると自爆キャラ

※人からの評価ではなく、自分が設定した目標に対し、それを達成することができたかどうか・結果に納得できたかどうかということがポイント。
※失敗しても努力した過程を認めてもらえている限りは、自爆の被害は少なくてすむ。

④主導権欲求:対人関係で主導権をとりたい
→オレ様キャラ、女王様キャラ
認めてもらえないと攻撃性を伴う荒れキャラ

※幼児期は高く出やすい。

⑤同調欲求:みんなと一緒でありたい
承認欲求が満たされないと対人依存キャラ

⑥逸脱欲求:みんなと一緒はいや
アマノジャクキャラ
承認欲求が満たされないと荒れキャラ

【娘へのアプローチをどう考えたか】
娘のキャラ構成の大部分は女王様です。宇佐川研会長の木村先生にも「極めてレベル高いです」とのお墨付きをもらっています。ジャイアンのように攻撃性の高い困った姿にならない限りは娘の魅力。願わくば良君・賢帝でいてほしいので、主導権をとりたい気持ちを否定せず(時々腹も立ちますが)、いいところとして育んでいけばいいのかなと思いました。

当時、友達も先生も、みんな自分(娘)のことなんて嫌いなんだ、とよく言っていました。それは触覚防衛反応の高さから、家の外で愛着関係を形成できず、満たされることが少なかった承認欲求や、不器用さゆえに「見てて!」と自分をアピールするチャンスを失っていた注目欲求満たされなさが背景にあるのだと分かりました。

また、「かっこいい選手(なんでもできる人の意)」やヒーローを目指していた娘は、達成欲求も相当に高いので、失敗経験の多さ、それから承認欲求と注目欲求の満たされなさと相まって、完全に自爆していました。自分は素晴らしくない、自分は変だ、やらない、見てるだけがいい、そんな言葉が本当に多かったです。

本人の欲求をそれぞれ満たす視点をもちながらも、まずは自爆の傷を癒すこと、そしてゆくゆくは娘の願いでもある「努力家キャラ」の姿に近づけたら…と思っていました。そのためには、日常生活全般において

①DCD(発達性協調運動症)の支援の視点をもって本人ができることを増やすこと

②自信をつけること

を意識する必要がありました。初めから最後まで一人でできることが本当に少なかったので、どこにでも自信喪失に繋がる地雷があったからです。初めてのことや難しいものは視覚支援をしながら見通しを立てつつ、失敗をしないように先回りして調整しておく。上達を確認したら支援を減らして一人で成功できることを増やしていく。その繰り返しでした。

あと、「好きなことをとことんやる」、「得意を伸ばす」という方向のアプローチも始めました。どうしてもカバーできない苦手や困難に直面した時、好きなものや、得意なことが心の支えになると思ったからです。


長くなりましたが、以上がこの1年半に私が学んだことと、娘について考えていたことです。

冒頭に書いた困り事は、

不安と緊張が強く、情緒不安定
→不安や緊張が強いのは相変わらずだが、行事や新しいことへの挑戦などのイレギュラーがない限り、情緒が安定しているようになった。デフォルトが情緒不安定だったので大きな変化。

集団活動に参加できない
→参加するようになった。できないことがあってもそこでフェードアウトせず、次にできそうなところからまた挑戦するようになった。驚くべきことにサッカー教室に行きたいと言って、男の子たちに混ざってサッカーを始めた。試合(ゲーム)にも参加して、療育の先生と動画を観ながら泣いた。

感覚の過敏が強い
→だいぶ防衛反応が軽減された。イヤーマフを使うことはほとんどなくなった。色々な丈の服を着られるし、髪を結べるようになった。口の中の過敏さはまだ強い。愛着を形成できている大人がそばにいれば、近所の人や見知らぬ人に手を振ったり、話しかけられれば小声で応答したりできるようになった。

特に、お風呂の入浴拒否があり、顔に水がかかると泣き叫ぶので母子ともにつらい
→顔に水がかかってもパニックにならなくなった。入浴拒否がなくなった。自分で水に顔をつけられるようにもなった。

このような形で軽減・消失しています。

行動の変化ももちろん嬉しかったですが、5歳になる直前、娘が「ママ好き。パパ好き。◯◯ちゃん(妹)好き。◯◯(自分)のことも好き、ちょっとだけね🤏」と話したことが何より嬉しかったです。これがきっかけで私も自分の支援に自信がもてました。

具体的な取り組みについては次回以降の記事で書こうと思っています。(いつになるかはちょっと分からないのですが、まとめられたらいいなと思っています。)

最後まで読んでいただきありがとうございました。

★2023年4月現在は、療育や医療機関とも繋がっており、就学に備えて発達検査を受けることにもなっています。


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