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DCD(発達性協調運動症)の支援のポイント

【DCD】についての講義を聴きました。講師は長崎大学の岩永竜一郎先生です。以下に支援のポイントをまとめます。


DCD:発達性協調運動症(発達性協調運動障害)とは

日常生活における協調運動(手と手、目と手、足と手など、複数の身体部位を協力させて行う運動)が、本人の年齢や知能に応じて期待されるものよりも不正確であったり、困難であるという障害。

https://www.e-heartclinic.com/kokoro-info/special/speech_9.html

【状態像】

・麻痺がないのに不器用
・姿勢が崩れやすい
・文字が整わない
・体育、工作などが苦手  など

【神経発達症(発達障害)との関連】

・ADHDとの併存の割合は55.2%
(Watemberg et al.2007)

・ASD児の79%に明らかな運動面の問題
(Green et al.2009)

【支援の主軸】

今回の講義でのDCD支援の主軸は

感覚統合療法×生活動作の獲得支援

という掛け合わせでした。

【ポイント整理】

①ASDに対しての感覚統合療法のエビデンスはすでにある

②感覚統合のDCDに対する有用性に関する論文がそろそろ発表される

③感覚統合で底上げをしながらも、具体的な生活動作をダイレクトに練習した方が動作の獲得はスムーズ

→なぜなら、DCDの子どもたちは運動企画力(プランニング)が弱いから。初めての動きができないのは、運動を組み立てられないから。全く同じ動きであれば何度も繰り返せばできるようになることは多い。

そのため、野球ができるようになりたいなら、実際に野球に取り組んでいくことは必要。感覚統合だけをずっとやり続けていても、動きのプランニングはできるようにはならない。走り込み(基盤作り)をしていても、バットにボールが当たらないのと同じ。

※ただし、野球をやるにしても全ての子にいきなりバットをもたせようと言っているわけではない。子どもの発達段階を適切にアセスメントしながら、できそうな動作から段階的に取り組むことが大事。

④不慣れな運動や、次の次を読むような運動を多く経験する
→運動企画力(プランニング)そのものを伸ばす支援。

次の次を読む運動についてはどんな遊びがあるのか、詳しく知りたい内容でした。個人的にはジャングルジムやボルダリングなどをイメージしています。手でここを掴んで足をここに置く、のような運動の組み立て。飛び石なども、一列に並べずにランダムに散らし、脳内でコースを作ってから進むのもよさそうです。

⑤自己肯定感が下がることを防ぐため、体育の授業等でやるのが、「その運動をするのが初めて」の状況にならないようにする
→数週間前から家庭で予習をする、担任と先に練習するなど、先にプランニングしておくことで、体育等で、周りに全くできないところを見られずに済む。

以上、ポイント整理でした。

【さいごに】

DCDは、自分自身だけでなく周りからもできないのがはっきり見えてしまうので心理面に影響が出やすく、結構深刻です。成人期の不安や抑うつ症状などへの影響も出やすいそう。

講義の中で、
進度別に分けてない体育の授業は

(DCDのある子にとって)オリンピック強化選手の中に混じっているようなもの

という表現もありました。

岩永先生も繰り返しおっしゃっていましたが、DCDへの適切な支援がなければ、本人にとって学校生活は苦手を晒しに行く場所(苦痛を感じに行く場所)になってしまう。特に支援者側(特に学校)がDCDについての知識を備えていることが肝心ですね。自戒を込めて。

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