自分の「リーマン気質」に気づかされた商談

今日の商談は面白かった。

今日もあるデザイン会社。Webサイトの実績を見て、そのクオリティから10数人程度の会社かと思って訪れた先はマンションの一室。開けてみると白い麻素材のワイシャツに黒縁眼鏡、それにかかるくらいの前髪と「サカナクションの山口一郎さんに似てますね!」(ファンです)と言いたくなるような清潔な感じの男性が出迎えてくれた。

そこはつまりは個人事務所で、もともと秋田寛さんのもとで働いてから独立したのだといいう。(超恥ずかしながらこの方を存じ上げず、あとから調べたところ建築関係のブックデザインやモリサワパッケージなど手掛けている方。ここから輩出されたflame.の古平氏にもお会いしたことがあり、オフィスのアート性が印象的だった)

もうここから私には分からない世界なのだ。

よく考えたら周りにサラリーマンしかいない私の世界の中で「独立する」ってどういうことなんだ!?という。確かに起業する人はたくさんいるが、どうやらデザイナーは「起業」ではなく「独立」という言葉をつくるらしい。何故だか退職することを忌み嫌う文化のある場にいるために、デザイナーの独立、というものがどういうことか分からない。社員が減ってしまったら困るじゃないかとか、(それはうちの会社に限らない、どこだってそうだ)方向性の違いがあって出て行ってしまうものなのか、とか色々と気になることが多々あった。

ので、聞いてみた。

「そう聞かれるとよくわからないんですけど」

そんなトーンで始まった独立のきっかけ。

だが聞いていくうちに分かったことがある。

「デザイナーにとって、独立するのが、一人前といえる一つの指標(になることもある)」

ということだ。

ここで衝撃なのはこの言葉そのものではなくて

「いかに自分がサラリーマンの固定概念に縛られているかぁぁぁぁ」

ということである。

サラリーマンにとっての一人前とは何か、その一般的な指標は「独立」たりえないし、(だってサラリーマンなのだから。もちろん個人としての「一人前」はまた違うかもだけど)そもそも会社という制度でそれぞれの役割分担があって一つの価値を生み出せたりするわけなので、独立する!というのはとにもかくにも「何かよくわからない」のだ。さらには私は広告営業、という何かを売る仕事なので、「何か」は誰かが作ってくれなきゃ困る。

そんなわけで、まずは誰かのもとでデザイナー見習いとして修業を積み、チーフデザイナーになってそんなところで「ボスからも独立したら、というようなプッシュもなくはなかったですかねえ」というこの話に興味津々になってしまった。

私にとって、たった一人で、自分の名前で仕事をするなんて本当に凄いことだ。

当たり前のように先生の事務所から独立して、丁寧な仕事をしている(別に誰かから聞いたわけではないが、この社長を見るに仕事に丁寧でないわけがなかった。見た目も話し方もその内容も、丁寧そのものだった、奥さんが羨ましい)このデザイナー社長を心の底から尊敬した。

売れなかったけど、幸せな商談だった。

明日の商談も楽しみだ。

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