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「かわいい」はどこから来て、どこへ行くのか。

「かわいい」という概念について考察します。特に、なぜ男性の私が、ジェンダーの枠に縛られずに「かわいい」と感じる感性を保ち成長したか、振り返ります。

乳幼児や小動物などには、人間が見て「かわいい」と感じる「ベビースキーマ」と呼ばれる特徴が備わっています。白人の赤ちゃんの顔に関する研究は進んでいましたが、大阪大学大学院人間科学研究科の入戸野宏教授らの研究グループは、初めて日本人の赤ちゃんの顔をベースにした体系的研究を行い、「かわいさ」が個人の好みによるものではなく、複数人が「かわいい」と思うような客観的な特徴に基づくものであることを明らかにしました。

赤ちゃんの「かわいさ」は若い男性にはあまり伝わらない - GIGAZINE

上記のように「ベビースキーマ」という概念があります。あくまでも、一つの観点ですが、記事によると、若い男性は理解しにくい可能性が示されています。
人や哺乳類の子、ヒヨコなど、保護したり守ったりする必要がある存在を「かわいい」と感じる仕組みがあり、これが文化として発展したのかもしれません。
また、「かわいい」が指し示すことの中身は、童心のような純粋さや郷愁と似ています。この観点だと、なぜ「かわいい」何かが人を魅了するのか、私には関係性が理解しやすいです。
念のために明記すると、上記2点は私的な視点です。

例えば男性同士の会話の場合「そのポロシャツかわいいね」ではなく「そのポロシャツいいね、どこの?」と、異なる表現を用いるはずです。なぜでしょうか。

一つの可能性として、他人からの無躾な評価の眼差しを浴びる確率が、男性より女性の方が多い点があることを、検討出来ます。他者に見られるから、美しい装いを意識する。その際に、清潔か否か・美的か否かのように、複数の要素を意識し、「かわいい」に対する感性も磨いたのでは無いでしょうか。例えば、多感な時期に一部の女性はギャルになるし、ギャルは可愛いものを高く評価します。

鉛筆が輝いていた頃

なぜ、私は男性なのに、美しい・愛おしい・かわいいの区別がつくのでしょうか?
こんな原体験があります。私が小学校1年の時に父が鬱病で倒れたので、父が仕事をセーブして休みながら働けるようにと、母は公文のような学習塾を経営しました。在宅なら仕事・看護・育児を担えるので。
学習塾では母の方針で、月に1回、ささやかな文房具を、「よく頑張ったね」と贈っていました。勉強が出来る出来ないではなく、継続していることに対するフィードバックです。ちゃんと見てるよと。
文房具は、2020年代ならイオンに相当する大きなスーパーに、サンリオコーナーがあったので、母は定期的に買い求めていました。その時に、私もついていくことが多かったです。小学校の1年生の段階で、何かがかわいいことに対して興味があったのでしょう。一人ではサンリオコーナーになんとなく行きづらくても、「ぼくは母のお供である」という様子でついていけば 、周りの人はもちろん気にしませんし、私自身も気にしないで済むからです。
ここで確認します。周囲の誰からも「君は男の子だよな。サンリオの文房具は女の子か小さな子向けじゃないかな?」と言われていないのに、7歳の時点で、「ぼくひとりでは、サンリオコーナーに入りづらい」と認識している点です。家庭では、男の子だから何々という育て方はしていません。

これが「かわいい」物事と私の原点です。小学1年生なりの価値観で「これはぼくは好きではないな」「これはいい感じだな」と、商品を観察したり、買ってもらったりしていました。だから私は男性ではあっても、何かが可愛いことに対する感性を潰さずに大人になったのかなと感謝しています。

私自身がかわいく装いたいという欲求は一切ありません。ただ、例えば猫やデザインに関して、「美しい」と「かわいい」は別の概念なので、区別がつくことは、人生を豊かにしてくれます。このように振り返ると、ジェンダーの枠に囚われない価値観で、成長させてもらえたことは、私の視点と自由を増やしてくれました。

以上を踏まえると、「かわいい」という概念は文化・ジェンダー・個人で理解が異なる可能性があると言えますし、同時に、育った文化背景により必ずしもジェンダーで分断されるものでは無いとも言えます。矛盾することが、両立しますね。

「かわいい」は、国内だけでなく、アニメ・漫画・ゲーム・コスプレなどのサブカルを通じて海外にも広まっています。美しすぎる何々みたいに、海外のコスプレイヤーの写真がTwitterで拡散されたり、Tumblrや Instagramで、リアルタイムに日本のサブカルの影響を受けている海外の方が、画像生成AIでキャラクターや風景を公開しています。また、フランスの中学生に日本のことを質問すると、「ONE PIECE」「マリオカート」「文化がおもしろい国」と回答したケースもあります。

中国のソーシャルゲーム会社miHoYoが、『原神』(2020〜)を日本を含め、世界でヒットさせました。すでに、かわいいを含む文化の「逆輸入」は始まっているかもしれませんね。

文字を覚えた頃、傍には鉛筆がいました


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