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一度読んだら忘れない『なぜ「あれ」は流行るのか?―強力に「伝染」するクチコミはこう作る!』

ミキサーを宣伝する動画を作るなら、あなたはどんな宣伝をしますか?刃の種類を売り出すでしょうか?商品のコンパクトさ?掃除のしやすさなんてのも便利かもしれまんせんね。

ですが全く違った、しかも50ドルという格安な宣伝費でミキサーを売り出した動画がこちらです。

この動画は全世界で視聴され、1000万回以上再生されています。

ですが、なぜこの動画はこんな爆発的に人気になったのでしょうか?大金がかかっているわけではありません。この動画が人気になったのはクチコミの力です。そしてミキサーという画期的でも何でもない商品にすらマーケティングの工夫でクチコミの力を付随することができるのです。

今回はそんなクチコミの力を紹介する『なぜ「あれ」は流行るのか?―強力に「伝染」するクチコミはこう作る!』 を紹介します。

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1944円の内容が100円で分かるのですから、94.8%引きのセールですね。

忘れない著者紹介

ジョーナ・バーガー。ペンシルベニア大学ウォートン校准教授。クチコミや社会的な要因が、製品やアイデアにどのように関係しているかを研究している、マーケティングの専門家です。2002年にスタンフォード大学を優等学位で卒業し、2007年にスタンフォード大学経営大学院を修了。

数多くの論文を一流学会誌に発表するほか、ニューヨーク・タイムズ紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、ワシントン・ポスト紙などにも寄稿し、学術的に研究が高く認められる一方で、商品やアイデアを流行らせる方法を教える「伝染」という講義が学生から評判を呼び、ウォートン校の「アイアン・プロセッサー」に選ばれている。

しかし、講義を受けられなかった人から、「論文よりもとっつきやすい読み物が知りたい」という声を聞き、本書が生まれたそうです。


こんな人は忘れない

・宣伝したいアニメや漫画がある人
・会社の商品をもっと売り込んでいきたい人
・自分のアイデアを売り込みたい人

忘れない要約

広告よりもクチコミの方が重要な理由は二つあります。

一つ目は信頼性です。広告はどんな商品も「素晴らしいー」「最高のー」などと紹介します。しかし、あなたの友人は本当に良いと思えば褒めるでしょうし、飯が不味い店のことはけなすでしょう。

二つ目はクチコミの方がターゲットが絞られるからです。相手がアニオタなら今季のオススメアニメの話をするかもしれませんが、会社の上司には野球の試合結果なんかを話すでしょう?そもそもが相手の関心のあることをしゃべろうとするので、自然と狙いが定まるのです。

多く共有されるクチコミには6つの原則があると著者は述べています

1ソーシャル・カレンシー
2トリガー
3感情
4人の目に触れる
5実用的な価値
6物語

ソーシャルカレンシー

なぜ人はクチコミをするのでしょうか?

私たちは、友人に買ったばかりの漫画の話をしたり、今季のオススメアニメについて語ったりします。人は自分語りが好きです。自分の考え、意見、経験を誰かと共有したいという欲求が、ツイッターやインスタグラムなどのSNSが流行った一因でしょう?

また、話の内容もその人物の印象を左右します。飲み会でおもしろい冗談を言えば、周りから気の利いた人だと思われます。昨日のダービーについて詳しく話せば、競馬の情報通だと思われるでしょう。

このようにクチコミは、いい印象を打ち出すための重要なツールであり、その威力は新車やプラダのハンドバッグにも匹敵します。これを一種の通貨と考え、筆者はソーシャル・カレンシー(社交通貨)と読んでいます。製品やサービスを買うためにカネを使うように、人々は、家族や友人、同僚に自分の望み通りの好印象を抱いてもらおうと、クチコミを使うのです。

したがって、話題にしてもらうために、企業や団体はソーシャル・カレンシーを鋳造する必要があります。商品やアイデアの宣伝をしながら、話し手自身の印象も良くなる術を授けるのです。それには、

①内に秘められた奇抜さを見つけ出す
②ゲーム・メカニクスを活用する
③部内者気分にさせる

という三つの方法があります。


内に秘められた奇抜さを見つけ出せるか?

奇抜なものは、それを話題にした人をより非凡な感じに見せるため、ソーシャル・カレンシーを生み出します。友人の結婚式を盛り上げたいと思う人はいても、盛り下げたい人はいないでしょう?誰だって好かれたいのです。型破りな、非凡な、あるいは愉快な話や広告を話題にすれば、型破りな人、非凡な人、あるいは愉快な人という印象を強く与えられます。話していて楽しい人というイメージが強まり、ランチのお誘いを受ける可能性や、二回目のデートの約束を相手から切り出してもらえる可能性が高まるのです。

でも奇抜な商品は、もともと奇抜だから何とかなるけど、そうじゃないものを奇抜にするのは無理なのでは?と思った方もいるかもしれません。トースターとかトイレットペーパーなんかどっこも奇抜じゃないですもんね。

ところがどっこい、どんな商品やアイデアでも、目立つ方法を考えれば、内に秘められた奇抜さを見出すことは可能です。最初に紹介したブレンドテックの動画を思い出してください。ミキサーなんて全く奇抜でもないですよね?それでも「なんでも砕ける」という奇抜さを見つけ出した結果、何百万もの人が物議をかもす動画ができあがったのです。


ゲーム・メカニクスを活用しているか?

ゲーム・メカニクスは、いい成果をあげたものを優れた存在であるように見せることで、ソーシャル・カレンシーを生み出す手助けをします。人は、自分が成し遂げたことを自慢したがるものです。ゴルフのハンディキャップや、ツイッターでのフォロワー数などはその代表例ですね。

人は自分の成し遂げたことを誇示したいがために話をします。ですが同時にその成し遂げたことに関するブランド(ツイッター)や分野(ゴルフ)についても言及するのです。こうして、ゲーム・メカニクスはクチコミの拡大を促すのですね。

ゲーム・メカニクスを活用するには、成果の数値化が必要です。ゴルフやTOEICはスコアが初めからついていますから、そのまま他者と比較することができます。しかし、そうした尺度がもともと存在しない商品やアイデアの場合、ゲーム化する必要があります。

では商品やアイデアをうまくゲーム化するにはどうすればいいのでしょうか?航空会社はゲーム化をうまく成し遂げました。マイレージ・プログラムはもともとあったしくみではありません。人が飛行機で旅をするようになってから半世紀以上が過ぎましたが、航空会社が顧客の登場距離を記録し、それに応じて特典を提供する、というゲーム化を行ったのは比較的最近のことです。

ゲーム・メカニクスを活用するには、人々が自分の成果を公の場で示せるよう仕向ける必要もあります。オンライン・ゲームメーカーはSNSでの成績披露をプレーヤーに奨励し、人々が毎日何時間もゲームで遊んでいると堂々と宣言してもいいという風潮を作りました。

よくあるゲーム化の手法としては、ステータス・システム(将棋の竜王とか)、メダル(金・銀・銅で優劣が分かる)、人気投票などもありますね。


人々を部内者(インサイダー)のような気分にさせられるか?

希少価値と限定価値は、人々をインサイダー気分にさせることで、クチコミを促します。インサイダーってのは「俺は他の知らないことを知ってるぜ!」という状態です。誰もが持っているわけではないものを手に入れると、人は自分が特別な存在で、高い地位にあるかのように感じます。そして、その商品やサービスに愛着を抱くだけでなく、ほかの人に教えるのです。

なぜ他の人に教えるのでしょう?他人に教えれば、自分の印象が良くなるからです。インサイダー情報を持っていることは、ソーシャル・カレンシーなのです。早朝からライブ物販に並んでグッズを手に入れた人が最初にするのは、他人に見せびらかすことです。「私が、それと私がゲットしたものを見て!」と。

ではインサイダー気分にさせるにはどうすればいいのでしょうか?分かりやすい例はマクドナルドの期間限定バーガーですね。月見バーガーとかマックリブとか、人気なら通年販売すればいいじゃんと思った人もいるかもしれません。しかし実際は違うのです。マックリブは一度販売されましたが、売れ行きが悪く、わずか数年でメニューから外されました。ところが10年後、マックリブを期間限定で復活させたところ、消費者は大歓喜したのです。「いつマックリブが食べられるか知るためだけにツイッターを使ってるんだ」なんて人も出るくらい。

人々にインサイダー気分を味わわせるやり方は、10年前にお蔵入りしたメニューが期間限定となるだけでバカ売れするぐらい効果を発揮するんですね。すぐには手に入らないというだけで、人はその商品をより値打ちのあるものだと考えてしまうのです。そして、それを知っている、あるいは持っているというソーシャル・カレンシーをフルに生かすために、その情報を他人に教え、クチコミは広がっていくのです。


トリガー

「東京ディズニーランド」と「味噌汁」。どっちの方がクチコミが多いと思いますか?Google トレンドで比較するとわかりますが、正解は味噌汁です。東京ディズニーランドはおもしろくて、どきどきわくわくする場所です。高いソーシャル・カレンシーを備え、さまざまな感情をかき立てます。ですが問題もあります。それは、人々がディズニーランドについて考える機会がそれほど頻繁にはない、という点です。ディズニーが好きな人でも年に数回行けばいい方でしょう。

一方、朝食や夕食で味噌汁を飲む日本人の数は計り知れません。そのうえ、買い物に行けばインスタントの味噌汁が打っています。スーパーには味噌汁用の様々な味噌が並んでいますしね。こうしたトリガーが味噌汁をより想起しやすいものにし、人々が話のネタにする確率を高めているのです。

だからこそ、背景を考える必要があります。若者に商品を売りたいなら、今若者に流行っている流行語をトリガーにすると商品が話題にされやすくなります。あるいはアイデアの生息範囲を広げるという方法もあります。「スティーブ・ジョブズといえばジーンズ」というようによく知られているトリガーとの間に新しいつながりを作り出せば、トリガーの機能はより強力になります。


感情

大勢の聴衆に向かってスピーチした時のことを思い出してください。または、自分のチームが大きな試合で勝利を目前にしたときのことでも大丈夫です。脈が速くなり、手のひらは汗ばみ、心臓がバクバク波を打っているように感じたのではないでしょうか?

こわい映画を見た時、あるいはキャンプ中にテントの外から不気味な足音が聞こえてきた時、同じ思いをしたかもしれません。すべての感覚が過敏になる、筋肉はこわばり、ありとあらゆる音、におい、動きを警戒する。これを生理的覚醒といいます。

感情の中には生理的覚醒をもたらすものがあります。興奮や楽しさ、怒りや不安といった感情ですね。大好きなバンドのライブ、自分の一番好きな曲をボーカルがタイトルコールする…、そんな状況でじっと動かず無表情でいれる人は少ないのではないでしょうか?

感情は人々を行動へとかき立てます。人は感情に突き動かされて笑い、叫び、泣き、そして話し、共有し、購入します。したがって、統計データを引用したり、情報を提供したりするよりも、感情をかき立てることが伝染の鍵となります。生理的覚醒によって、人は会話し、共有します。だからこそ、人を興奮させたり、笑わせたりする宣伝は効果があるです。


人の目に触れる

iPhoneから送られたメールには、よく最後の署名部分に「iPhoneから送信」というメッセージが入っています。既存のiPhoneユーザーは、メールを送信するたびに、相手にapple製品を宣伝することになるのです。

したがって、appleのように、クチコミを広げるためには自らを宣伝する商品を開発する必要があります。

また、人々が商品を使い終わった、あるいはアイデアを利用したあとでも認識できる行動の残滓を生み出す必要があります。デパートの紙袋って捨てるの勿体ないから、軽いプレゼントを贈る時に使ったりしませんか?紙袋によって「あ、この人○○で買い物したんだ」と分かります。それが尊敬する先輩や気になっている異性なら、「自分もそこで買い物しようかな」なんて気になるのではないでしょうか?

このように、目に見えないものを見えやすくすると、人々の話題に上がりやすくなります。appleのリンゴマークは、パソコンを閉じた状態では使っているユーザーに反対に見えてしまいます。そのかわり、使っているユーザーを通りがかった人には、正しいリンゴマークが見えるのです。他人がapple製品を使っていつと自分も使いたくなる、その心理を使って商品を宣伝しているのです。

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実用的な価値


本書で紹介されている伝染性の6原則の内、最も実践しやすいのは、この実用的な価値かもしれません。もともと多くのソーシャル・カレンシーを備えている商品やアイデアもあります。ですが、平凡なミキサーの動画をソーシャル・カレンシーのあるものにするには、それなりの労力と創造性が必要です。トリガーとの結びつきを作ったり、感情をかきたてたりするにも工夫が要ります。ですが、実用的な価値ならどうでしょう?商品やアイデアのほとんどすべてには何らかの役に立つ要素があります。お金の節約や時短、幸せになるためのヒント、健康増進の秘訣などはどれも「使える」情報です。したがって、まず自分たちの商品やアイデアになぜ人は引き付けられているのかを考えれば、実用的な価値とは何かという根本的な感覚をつかむことができます。

それよりも難しいのは、抜きんでた存在感を示すことです。おいしいレストランや便利なサイトはごまんとあります。数ある中で、目立たなければいけません。

目立つ方法としては、セールが最もよく見るでしょうか。しかしセールばかりやっていては逆にありがたみがなくなってしまいます。しかし、期間限定セールにすると、本当にいいものであるに違いないという気分にさせます。

また「100の法則」も有効です。セール時に「-%引き」という表記と「-円引き」という表記をみたことがあると思います。これをどう使い分けたらいいかというと、
商品の価格が100ドル未満なら「%」
商品の価格が100ドル以上なら「円」
で表示した方が値引き額が大きく感じます。日本なら「10000円の法則」の方が分かりやすいかもしれませんね。

このようなテクニックを使って、人々が使える情報として話題にせずにはいられないほどに、自分達の商品やアイデアが役に立つことをアピールすると伝染力は高まります。


物語

物語は宣伝している印象をあたえずに商品やアイデアについて語ることを可能にします。飲み放題で酒を飲み過ぎてしまった話をすれば、自然と飲み放題付きの居酒屋さんを宣伝することができますね。

ただし気を付けなければいけない点もあります。伝言ゲームってありますよね。最初の一人は正しい話を知っていて、そこから伝言していき、正しく話が伝わるかを競うゲームです。

心理学者のゴードン・オルポートとレオ・ポストマンは、「伝言ゲーム」の実験を行いました。すると、うわさを5~6回伝達したところで、約70%もの細かい情報が抜け落ちていたことが分かりました。
しかし、話は短くなっていただけではありません。最も重要な点を中心に研ぎ澄まされていたのです。

伝染するコンテンツを作りたければ、独自のストーリーを作るのは良い方法です。ただし、人々に覚え、伝えてほしい情報がストーリーに不可欠な要素になるようにしなければいけません。もちろん愉快な話、意外性のある話、おもしろおかしい話を作るのはいいことなのですが、その物語とコンテンツに関連性がなければ伝染力は生まれません。なぜなら、重要でない情報は伝言ゲームの最中に削られてしまうからです。

他にも面白いエピソードがいっぱい

以上309ページを要約してみました。

この本では他にも
・誰にも教えないで、と言われても…
・感情に訴えろーグーグルの戦略
・見える化ー口ひげブームの本当の意味

などなど、ソーシャル・カレンシー溢れる話がたくさん載っております。

それは本を読んでのお楽しみということで。

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