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ゼロから日本経済について学習しようとしたときの失敗談

僕は高校中退の現状ニートなんですが、これまで図書館で本を借りたりして日本の経済について学ぼうと努力してきました。

それで多少は国債とか金利とか市場原理とか円安とかいう話にもついていけるようになりました。しかしややこしくてつまづいてしまったポイントもいくつかあります。

そういった点をあらかじめ踏まえておくと、読書に時間も体力も割けない人でも経済を学びやすくなるかなと思ったので、ここに簡潔にまとめようと思います。


金利の決め方の変化

学び始める前、僕は 「金利は日銀だか政府だかが決めているんだなー」 とぼんやり思っていたんですが、そこにひとつややこしいポイントがありました。

1990年代より前ならばその認識でよかったのですが、それ以降、金利を日銀・政府が直接操作することはできなくなったのです。狙った金利へ誘導することしかできなくなりました。
この違いがあるのでちょっと昔の本とか読んじゃうとまずいです。「金利を下げるために国債を買い入れる」 なんていう話についていけなくなってしまいます。

更にいうと、僕の考えではこの "直接操作できない" というのは建て前のようなもので、実際にはほぼ直接コントロールしているようです。

つまり、
1: 金利を直接操作できていた時代
2: それができないしくみに切り変わった時代
3: そうは言っても結果的にはわりと直接操作してるよねの時代いま
という三段構えになっていると考えればわかりやすいと思います。


とりあえず長期金利だけ見とけばいい

安定した収入もなくローンを組んだこともない僕の第二のつまづきポイントは  「金利って結局どれを気にすればいいの?短期金利?長期金利?預金金利とか住宅ローン金利と数字が違うけどなんで?」 といったところでした。

ここは実際、多くの人が同じように感じてるんじゃないかなーと思ってるんですが、預金くらいしか金利に馴染みがない人にとって、金利が上がったとか下がったとかって言われても、それが自分とどう関係してくるのかわからないと思うんですよね。

よくニュースになるのは住宅ローン金利で、それは当事者にとっては身近なものだと思いますが、実際のところそれ以外では金利ってほぼ気にしなくていいものなんですよね。隣の隣の県の天気予報くらいの存在。

もし数千万円の大金や、数年に及ぶ大プロジェクトを動かす立場にあるなら別ですけど、そうじゃないパンピーにとっては金利が多少上下したところでほとんど生活に影響はない。

僕はそれを知らなかったので、本を一生懸命読んで 「短期金利はだいたいこのくらいが平均で、操作するにはこういう手段があって…」 みたいなことを覚えるのに労力を費やしたのですが、そんな知識はいまのところまったく役に立っていません。

唯一役に立ったと思えるのは、長期金利とはなにを指していて、それを操作するためにどんな方法が取られているのか、という知識です。(これは次で説明します)

結論、僕はいま現在、長期金利しか気にしていません。
ちなみに日経新聞の市況ページでデフォルト表示されるのも長期金利だけなので、とりあえず長期金利だけ見ておくという僕の考えもそれなりに的を射ているのかなと思っています。

日経新聞市況ページのスクショ

長期金利 = 10年物国債の売買価格

最後のややこしいポイントです。この長期金利とはいったいなんなのか。
答えを書くだけなら簡単で 「売買された10年物国債の利回り」 です。
いわば国債の株価みたいなものです。その日売買された国債の取引結果が集計されて発表されています。

ただそれがどういう意味のものなのかを金融に疎い素人が理解しようとすると、ややこしいポイントが無数に出てきて暗号解読のようになっていきます。

僕にとって一番ややこしかったのは 「金融商品」 という概念です。
たとえば、国債というのは 「国がお金を借りるときに発行するもの」 です。
借金の借用書を書いて渡すようなもので 「利子 (金利) はこのくらいで、○○年後になったら全額を返金します」 という契約書のようなものと考えられます。

いろんなややこしい要素を無視して単純に考えるなら、
1年物の国債を100万円で買って、金利が2%なら、1年後には102万円が受け取れるわけです。

これが15年物国債なら 「貸し借りの期間が15年の国債」 になります。
100万円で買って、金利が2%なら、1年間に2万円、15年分で30万円を受け取ることができます。(ここでは単利で考えます)
15年経った時点で、もともと貸した100万円も返ってくるので、受け取る金額は合計130万円ということになります。

……とこれだけなら話は簡単なのですが、実はこうした国債などの金融商品は、15年経つ前に売却することができます。
たとえば5年経った時点で、どうしてもまとまったお金が必要になったとしましょう。
この時点で自分が受け取っているのは5年分の利子の10万円だけで、まだ受け取っていない分が120万円分あります。
つまりこの残り10年の国債 (10年後に120万円がもらえる契約書) を売ることで、だいたい120万円に少し足りないくらいのお金が手に入るわけです。

この2回目以降の売買の場合は、売る相手も買う相手も国とはなんの関係もありません。ただ契約書を売買しているだけです。株を売買する一般人が、その株式会社と関係ないのと同じようなものです。

そして長期金利 = 売買された10年物国債の利回り というのは、こういった、期間の途中で売買された国債から導き出されるものです。

さて、ここで最強のややこしいポイントが出てきますが、大丈夫でしょうか、準備はよろしいでしょうか。

売買された国債の価格が高い場合、利回りは低いということです。
売買された国債の価格が安い場合、利回りは高いということです。

諦めないでください。もう少しです。
これは先ほどの途中で売られた国債 (10年後に120万円がもらえる契約書) で考えればすぐにわかります。

一度最初から振り返って考えると、
「15年後に130万円がもらえる契約書を、100万円で買った」
というのがもともとの "15年物国債" の正体でした。

5年経った時点でそれがどうなっているかというと、
「10年後に120万円がもらえる契約書」 になっています。
すでに受け取った5年分の利子 (10万円) が引かれているわけです。

重要なのはこれがいくらで売れるかです。
もしなにかの奇跡で120万円の値がついたとしましょう。
「10年後に120万円がもらえる契約書を、120万円で買った」
そんなバカがいたということです。
じゃあこの契約書を買ったことで発生する利子はいくらでしょうか。ゼロ円です。
バカは国から1年に2万円ずつ受け取り、10年後に100万円を受け取るわけですが、こんなのはタンスに120万円をぶちこんで、自分で1年に2万円ずつ取り出すのとなにも変わりません。

じゃあ妥当な線でこれが105万円で売れたとしましょう。
誰かが 「10年後に120万円がもらえる契約書を、105万円で買った」 ということになります。バカが買った価格よりも安いですね。
その人はバカと同じように1年間に2万円ずつ、10年後に100万円を受け取りますが、購入金額が安いので、15万円の利益が発生しています。

この10年間分の利益15万円が、買うときに支払った105万円の何%にあたるかというと、
15 ÷ 105 × 100 = 約14%です。
買うために支払った元手が、10年間で約14%増えたということになります。
じゃあ1年間あたりでどのくらい増えたかというと、14 ÷ 10 = 約1.4%です。

この数字が 売買された10年物国債の利回り = 長期金利 の意味です。
つまり 「国債を買うときに支払ったお金が、最終的にどのくらい増えるのか」 を1年あたりの割合で表したのが "利回り" ということです。

実際の売買では、色んな人が自分の利益を考えて国債を売買するので価格は常に変動します。
その中で実際に取引が成立した価格が基準になって、長期金利が算出・発表されるわけです。


10年物国債を買い入れるという日銀の政策

最後に、いま現在日銀がおこなっている長期金利の誘導のための政策について。

日銀は10年物国債を 「0.25%の利回りになる価格で無限に買い入れる」 という政策をおこなっています。

これまでの例でいうなら、
「10年後に120万円がもらえる契約書を、117万円で買います」
と宣言しているわけです。

117万円で買った場合、10年間の利益は3万円
3 ÷ 117 × 100 = 約2.5%
10年間で約2.5%の利益 = 1年間あたり約0.25%の利益

そうするとどうなるかというと、
日銀が117万円で無限に買ってくれるのだから、それ以下の値段で売ろうとする人はいなくなります。
国債の価格が下がらないということは、つまり長期金利が上がらないということです。
日銀が 「金利を上げないために国債を買い入れる」 という政策の意味がこれでやっと理解できるわけです。


最後に僕がこの記事を書いたきっかけだけ書いて終わります。

神保哲生さんというジャーナリストがやっている『マル激』という有料インターネット番組があります。
そこに野口悠紀雄さんという経済学者が出演していました。
僕は5年くらい前から野口悠紀雄さんの本をよく読んでいて、講演を見に行ったこともありました。

番組内での野口さんの主張は、僕にとってはとてもわかりやすいものでした。
現在の日本経済の状態を、どうして日銀や政府は誰にでもわかりやすいかたちで説明しようとしないんだという怒りも沸きました。
その怒りのエネルギーを、ヤケクソなかたちではなく、有意義なことに向けたいと思って書いたのがこの記事です。

噛み砕きすぎて実態からずれてしまう部分もあったかもしれませんし、単に僕の無知で勘違いしている部分もあるかもしれませんが、おおまかな位置づけを知るためには、シンプルでわかりやすい考え方だと自分では思っています。参考にしていただけたら幸いです。

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