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お父さんの熱いお風呂

子どものころ、父親と
お風呂に入るのが嫌だった。
理由は思い出せなかった。

自分がお父さんになったとき
理由がわかった。お風呂の温度だ。

冬のこの時期、年寄りは
やっぱりお風呂は熱い温度で入りたい。
だが、子どもには熱すぎるのだ。
私と一緒にお風呂に入ると、
すぐに熱いと言われ、
水で冷ます羽目になる。

そして終いには、
「お母さんと入りたい」
と言われてしまう。

兄弟二人をお風呂に入れる身としては
最初から温いと、自分がお風呂を出る頃には
体感では水近く、風邪を引きそうになる。

だからちょっと熱めにお風呂を
沸かすのだが、子どもは不満なようだ。

昨日も今日も一緒にお風呂に入るのことを
拒否され続ける私。

ああ、子どもの頃もこうして
父親を傷つけてしまったのだろう。

仕方がない。今日は温度を温くする。
お風呂というより温水プールに
入っている感覚で、
そんなに長くは入っていられない。
すぐに子どもを呼ぶ。

しかし、お風呂を見た次男は、
「熱くないよ」と言っても
湯船に入ろうとしない。

「あれがいやだ」
湯船に浮かぶ私の髪の毛を指さす。

「嫌なのは熱さだけではなかったんだ」
風呂おけで髪の毛をすくいながら、
子どもの頃の父親に自分の姿を
重ねるのだった。

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