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6つの技術で上手くいく!先生初心者のための授業の教科書 7.観察の技術

 ここまで授業技術について書いてきましたが、技術が使えれば上手くいく、というわけではありません。生徒と共に、よい授業をつくっていくためにはどうしたらよいのでしょうか?

 本稿は、私の10年間の経験をもとに授業を「する」ための基本となる技術を6つにまとめた「授業技術の教科書」の第7章です。お読みいただき、書かれている技術をマスターすれば、最低限の「普通の授業」ができるようになるはずです。私が本稿を書くに至った思いなどは、1.はじめにをお読みいただければ幸いです。

 本章では、観察の技術について詳しく書いていきたいと思います。

【観察とは何か】

 観察とは、先生が生徒を見ることで、生徒の情報を集める技術です。情報を集めることで、よりよい説明、発問、指示、提示、評価を行うことができるようになります。「型」として上記の5つの技術を使いこなせるようになること。観察によって目の前の生徒に合わせて技術を応用すること。この二つの相関関係で、「授業力」を向上させることができるのだと思います。

 「生徒の情報を集める技術」ですから、集められた情報が多ければ多いほどよい観察ができたことになり、集められた情報が少なかったり、情報が間違っていたりしたら、悪い観察だったということになります。最初は授業案通りに進めたいという気持ちが強く、授業案や自分のノートばかり見てしまいます。でも、生徒の情報を集めることに意識が向くようになると、授業をすることがより楽しくなりますよ。

【どうやって観察すればよいか】

 観察の技術を用いる際のポイントは、次の3つです。

①机間巡視をする   ②アイコンタクトをとる   ③耳でも観察する

 ①机間巡視をする

 発問や指示を出して、生徒が個人作業や話し合いなどの行動をしている時間があります。この時間は机間巡視に使いましょう。机間巡視とは、机の間巡り歩いて、生徒の様子を視ることです。「巡視」という言葉を嫌って「机間指導」という先生もいますが、必ずしも指導するわけではないので、本稿では「机間巡視」という言葉を使います。

 机間巡視の際に特によく視るべきなのは、生徒のノートです。ノートに書いてある内容を視ることで、正しく理解できているか、間違っている問題はあるか、どの問題を間違えている生徒が多いかといった情報を集めることができます。間違いの傾向や正解・不正解を書いている生徒を見極められれば、その後の説明や発問を、目の前にいる生徒に合わせて進めることができます。

 また、ノートを視ることで困っている生徒を見つけ、個別に指導・支援することもできます。困っている生徒のノートは、真っ白なままのことが多いため、見つけやすいと思います。

 「生徒のノートに情報あり」と覚えておきましょう。

②アイコンタクトをとる

 最初は難しいと思いますが、先生が説明をしている間はなるべく生徒とアイコンタクトをとるようにしましょう。アイコンタクトをとることで「わかった」とうなずいているのか、「わからない」と首をかしげているのかを見分けることができます。目を細めていたり、首を前に突き出すような動きをしていたら板書や資料が見づらいのかもしれません。左右に体を傾けていたら、自分の体で板書を隠してしまっているのかもしれません。このように、生徒を視ることでたくさんの情報を集めることができます。「生徒の顔に情報あり」と覚えておきましょう。

 アイコンタクトの際、目の運び方はZ型がよいと言われます。教室後方の両端を視たら対角に視線を前に移し、そこから最後の端へと目を移していきます。教室の四隅にいる生徒は見落としがちなので、このZ型を基本にするとよいと思います。ただし大切なのは、Zという形にこだわることではなく、生徒の情報を集めることです。視線を流すのではなく、一人ひとりに視線を止めて語り掛けるようにします。そうすることで、生徒も反応を返してくれるようになります。

③耳でも観察する

 生徒の顔、ノートと、目から得られる情報は多いですが、耳から得られる情報も大切にしたいところです。私は特に「つぶやき」と「雑音」に注意を払うようにしています。

 生徒は挙手して行う発言以外にも、多くの言葉を発しています。これが「つぶやき」です。例えば何かわからないことがあった時に「ん?」とか「どういうこと?」などと、質問するわけでもなくつぶやく生徒がいます。このようなつぶやきが聞こえたら、もう一度説明しなおした方がいいかもしれません。発問に対する答えを、小声でつぶやく生徒もいます。そのつぶやきを匿名のまま拾って拡声することもできるし、「○○さん、何と言いましたか?」とつぶやいた生徒を指名することもできます(拾いすぎると発言のルールが崩れて荒れる原因にもなるので注意が必要です)。

 「雑音」とは、机やいすを動かす音や、教科書やノートをめくる音、筆記用具の音など、生徒の行動に伴って発せられる音のことです。特に個人作業を行っている場面では、机間巡視をしつつ、「雑音」に注意を払います。生徒全員が集中して課題に取り組んでいるときには、ノートに何かを書くカリカリという音しかしません。反対に指示の内容がうまく伝わらないまま個人作業に入ってしまったときや、課題が難しすぎたときには教科書をパラパラとめくる音が聞こえてきます。集中できていない生徒や課題を終わらせた生徒は、机やいすを動かすギ―という音をたてたり、ペンで遊んでカシャカシャ、落としてガシャンという音をたてたりします。聞こえてくる「雑音」によって、作業中に個別対応をしたり、次に出す指示の内容を変えたりします。

 このように、音は情報の宝庫です。「生徒の音に情報あり」と覚えておきましょう。

【まとめ】

観察、つまり「先生が生徒を見ることで、生徒の情報を集める技術」を高めるには、①机間巡視をする②アイコンタクトをとる③耳でも観察する、の3つを意識することが大切です。


 

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