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GDPについて

「IMF」の最新予測によれば、23年の日本の「名目GDP」はドルベースで前年比0.2%減の4兆2,308億ドル(約633兆円)となり、ドイツ(8.4%増の4兆4,298億ドル)に抜かれ、4位に転落するのだと。ちなみに、1位は米国で26兆9,496億ドル、2位は中国で17兆7,009億ドルである。円安の影響によるドルベースでの目減り、ドイツの物価上昇が主な要因とされているが、日本経済の長期的な低迷、日本の国際的影響力の低下も関係あるのは間違いないのだろう。

僕としては、日本-ドイツの順番はとりあえず置いておいて、米国・中国との格差の広がりの方にむしろ驚かされた。日本のGDPが中国に追い抜かされたのは、2010年のことであるが、それからたった13年ほどで約4倍の乖離になっているのだ。

ググっても、直近のグラフが見つからなかったので、ちょっと古いのを拝借してコピペさせてもらうことにするが、トレンドは明らかである。日本以下の国々がモタモタと停滞している間に、米国・中国のみ、グングンと経済成長しているのが見てとれる。

GDPの国別推移 名目値 ドル換算(出典:OECD資料より)

もちろん、人口の違いがあるから、単純にGDPだけを比較するのは、あまり意味がない。中国の人口は14億人であり、日本の10倍以上あるのだ。でも、13年くらいで4倍というのは、その間、どんだけ日本が足踏みをしているねんという話である。

日本-ドイツの方に話を戻すが、ドイツの人口は、日本のだいたい3分の2くらいであるから、単純に割り切れば、ドイツ人の生産性は日本人の1.5倍ということになる。かつての日本人は勤勉さが売り物であったが、国際的に見れば、既にたいして勤勉な国とは言えないということか、あるいは一生懸命頑張っても結果が伴っていない残念な国ということになるのか。

GDPというのは「国内総生産」であるので、「一定期間内に国内で産み出された物やサービスの付加価値の合計」を意味する。ざっくりと言えば、企業にとっての「粗利」みたいなものであろう。

GDPが伸びないということは、身も蓋もない言い方をするならば、儲かる仕事をやらず(やれず)、あんまり儲からない仕事ばかりやっているんじゃないのかと突っ込みたくなる。

あるいは、たいした儲けにならないことであっても、今よりももっと手数を動かせば、総額ベースの粗利は積み上がるわけであるから、そうなると、もっともっと身を粉にして働けよと言われそうである。

いずれにせよ、働き方の質・量のいずれか / あるいは両方とも他国に比べて不十分ということになるので、日本人はもっと知恵を絞り、もっとカラダも使って働くべしというシビアな結論にならざるを得ない。

こういう話をすると、別にあくせく働かなくても、日本は既に豊かだし、食べるのにも困っていないし、別にいいじゃんという意見が出そうだが、そんなに世の中は甘くない。働かざる者、食うべからずだからである。

GDPは経済活動の「フロー」を意味するし、GDPが伸びないと、税収も伸びない。税収が伸びないと、社会保障等の国民サービスに向けるおカネの原資も賄えなくなる。既に賄えていないのを、赤字国債を発行して帳尻を合わせているが、その結果、政府債務残高はどんどんと膨らんでいる。徴税権のある国と家計とは違うから、単純に比較するつもりはないが、こういうやり方が今後も持続可能かどうかに関しては疑わしい。

政府の過剰債務問題については、エライ先生方も喧々諤々と議論している話なので、僕にはこれ以上、あれこれ説明する能力はない。話を先に進める。

いずれにせよ、日本という国の将来性にまだまだ世間の信用があるからこそ、将来の税収をアテに国債を発行しても、今のところは大丈夫なのだろうが、「このまんまでホントに大丈夫なの?」と思われ始めたら、国債が消化できなくなり、日本は借金生活を続けられなくなってしまう。

国内で国債が消化できるのは、日銀がせっせと引き受けてくれていて、さらに言えば、国内の投資意欲が乏しくて、市中銀行に現預金残高が積み上がっているからであるが、「貯蓄から投資へ」となって、現預金が海外にシフトするようになったら、日本国債が国内で消化できず、海外に引き受けてもらう比率が今よりも大幅に増加するようになるかもしれない。そうなると、「日本ヤバい」となれば、アルゼンチンとかギリシアみたいに対外債務危機に陥る可能性だってある。

いずれにせよ、日本という国の将来性に対する世間の信用がまだ残っているうちに、何とかしないといけない問題であることは間違いない。

国の将来性に対する信用というのは、もっと具体的に言えば、経済成長である。成長しない国に未来はない。先ほどのグラフで説明するならば、ずっと横ばいじゃダメなのであって、右肩上がりのトレンドにならないとダメ。発行した国債の消化も危うくなる。

国の成長を端的に示す指標がGDPなのだとすれば、GDPを増やす努力が必要である。高度成長期の日本であれば、国内企業がせっせとモノづくりに励み、つくった製品を海外に輸出して外貨を稼いでいた。ドイツや韓国も同様である。今の日本は昔に比べると輸出依存度はあまり高くなくて、内需のウェイトが圧倒的に大きい。要するに国内の経済が長らく停滞しているのがすべての元凶なのだ。

したがってホントは国内企業がもっともっと活発に活動して、新しいビジネスをやって、カネ儲けに頑張ってくれたらよいのだが、日本企業の勢いは昔ほどではない。GAFAMみたいな企業は、今の日本に1社もない。

そうなると、他力本願と言われるかもしれないが、日本に海外からおカネを呼び込むしかない。海外企業が日本にやってきて、ガンガンと経済活動をやってくれれば、消費や雇用が生まれて、日本におカネが落ちるはず(=GDP が伸びる、景気も上向く)なのだが、相変わらず、日本人は発想が内向きであり、いろいろと面倒くさい規制も多くて、海外企業が進出しにくい。

それと言葉の問題もある。シンガポールや香港やインドであれば、英語を使える人材が多くて、英語でビジネスができるが、日本では日本語のようなローカル言語を使わないと仕事にならない。海外からすれば、これはかなり面倒くさい。

日本人には、とことん「島国根性」が沁みついているのかもしれない。というか、外からやってくる連中に対しては、元寇、黒船に限らず、本能的に身構えてしまうような体質がDNAレベルでプログラムされているのではないかと言いたくなる。ホントは今でも鎖国をしたいのかもしれない。あるいは、参入障壁とか言葉によって、実質的は鎖国を続行中ということなのか。

いずれにせよ、外から来る人たちは、敵ではなくて、おカネを落としてくれる、ありがたいお客さまなのである。根本的に発想を切り替える必要がある。

英国が、金融業におけるシティ、サッカーにおけるプレミアリーグのように、「ウィンブルドン化」を推進して、海外からの投資を呼び込んだようなことを、日本でもやれば良いのにと思う。他力本願、大いに結構である。おカネに色はないので、国内でおカネがたくさん回るようにすれば良いのだが、なかなかそんな風に割り切れないのが日本人である。

いろいろな規制による参入障壁、日本語という言葉の障壁、これら2つの障壁が日本経済の足かせになっているのではないだろうか。

ものは試しにであるが、どこか東京以外の大都市圏、名古屋でも大阪でも福岡でも構わないが、経済特区をこしらえて、そこは基本的にありとあらゆる規制を原則撤廃、英語を準公用語にして、外資を積極的に呼び込むようにすればどうであろう。一種の実証実験であり、ロールモデルはシンガポールである。

うまくいけば、ああだこうだと理屈をこねて、既得権益保護に凝り固まっている人たちも、考え方を改めるかもしれない。

要するに、論より証拠である。

前に「1人あたり購買力平価GDP」について書いたことがある。「1人あたり購買力平価GDP」が真の経済的豊かさの尺度だとすれば、ランキング上位に来る国の共通点は、「金融で稼いでいる国」「英語でビジネスができる国」である。

海外から人とおカネを呼び込んで、ガンガンと外貨を稼ぐには、金融と、さらに付け加えるならば、観光・レジャー産業である。これらを基幹産業に育成するつもりで、国を挙げて戦略的な取り組みを図るべきであろう。大阪がIR構想をぶち上げたことで、カジノばかりがヤリ玉に挙げられて叩かれているが、これとて打ち手としては決して悪いとは思わない。カジノを叩くのならば、公営ギャンブルもパチンコも全部叩くべきであろう。

日本人は島国根性に加えて、貧乏性で、勤勉を美徳とするところがある。観光・レジャーに力を入れろと言われても、発想自体がショボいし、スケールが小さい。日本人の発想で精一杯の「贅沢」を思い描いても、海外の富裕層の相場観とか期待水準からすれば、金額換算でケタが1つか2つ足らないのだ。

彼らにとっては、「快適さ」「特別さ」を味わわせてくれるならば、いくらカネを払っても、惜しくはないのだ。日本人としては、せいぜい頑張って、外貨を日本で少しでも多く落としていってもらうための場所や機会、ストーリーを用意するべきなのだ。

ちなみに、21年の世界の外国人観光客受入数のランキングにおいて、第1位のフランスは4,840万人に対して、日本は25万人である。金額ベースでの観光収入においても、第1位の米国(702億米ドル)、第2位のフランス(406億米ドル)に対して、日本は第29位(47億米ドル)に過ぎない。アジアでも第6位であり、マカオ、中国、韓国、インド、タイよりも下である。

世界の観光産業のGDPに占める割合は約1割程度(従業者数も同じくらいの比率)であるが、日本はいずれも7%程度くらいであるという。もっともっと、努力が必要ということである。


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