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【小説】 白(シロ) もうひとつの世界  第17話

第17話

翌日、珍しく朝早くからリリーが家に来ていた。僕はまだベッドの中だった。
「どうしたの? こんなに早い時間に珍しいね」
「うふふ。そうかな?」
「なんだかやけに機嫌が良いね」
「ジャン、今日はお店お休みでしょ?」
「そうだけど」
「じゃあ、一緒にお出かけしよう!」
「お出かけ? どこに?」
「ご飯屋さん!」
「妖精はご飯なんて食べないじゃないか。水と太陽と空気で十分だって、前に言ってた」
「あれ? 私そんな話、してたかな? まあ、そうよ。私は食べないわ。ご飯を食べるのはジャンよ」
「僕だけ食べるの? じゃあ、なんでわざわざご飯屋さんなの?」
「だって、そこには特別な人がいるから」
「特別な人?」
リリーはくるりと飛び回って答えた。
「昨日言っていたでしょ? 会わせたい人が居るって」
「仲が良いって言っていた人?」
「そう! とても素敵な人よ」
僕は、その言葉を聞いてなんだかモヤモヤした。
 
リリーが急かすので、ベッドから出て出掛ける準備を始めた。
今日はいつもよりもきっちりとした服装を選んだ。
相手がどんな人か見定めてやる。
 
 
 
リリーの案内してくれたお店を前に、少し緊張していた。店の扉を開けてどんな人物が現れるのか。
僕は身構えたが、扉を開けて視界に入ってきたのは女性だった。
「アンナー!」
僕はその一言で、自分が勘違いしていた事に気がついた。リリーの言っていた人は、この目の前にいる女性の事だった。

「リリー!」
そう言葉を返し、僕に軽く会釈をした彼女はダークブラウンのボブヘアで、すらりと手足が長く、黒い服をカッコよく着こなしていてスタイリッシュだった。

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