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【小説】 白(シロ) もうひとつの世界  第23話

第23話

アンナが戻って行ったのを確認して僕は話し始めた。
「信じてくれなくてもいい。けれど、僕が体験した事を正直に話すよ。だから、君の知っている事を話してくれ」
「君の話、次第だ」
「もちろんそれで良い」
僕はそれから、森に出掛けた記憶の話をした。リリー、オリバー、ウィリアム、僕。の四人で出掛けた。
少し前の事なのに、もうずっと昔の様にさえ思えた。
話し終えて、長い沈黙が流れた。
その沈黙に耐え切れず、また僕は口を開いた。
「まあ……信じられないよな。普通、こんな話」
オリバーは、まだ黙ったままだ。
僕はまた独り言の様に喋り掛けた。
「まあ、僕がおかしいだけかも知れない」
するとやっとオリバーが口を開いた。
「いや……。そうか」

そうか……?
そうかってどういう事だ? 
オリバーは続けて話し出した。
「ああ、今考えをまとめていたんだ。僕の考えていた以上に、複雑になっていたから」
「どう言う事?」
「まず、扉はひとつだと仮定していたから。予想外の話で。でも、良いニュースもあった。君の話は本当だね。きっと。けれど、こっちの世界とは話が違っているね」
「どう違うの?」
「まず、君の世界ではその森自体が【囚われの森】と言われているんだろう? 扉の名前は出て来なかったけれど。こっちの世界では森はこう呼ばれている。……【禁忌の森】」
「【禁忌の森】? 確か、扉の名前は、【パンドラの箱】だったよね」
「そうだ。世界が変わってしまうから。触れてはいけない。それで、そう呼ばれるようになったらしい」

 

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