中村文則『土の中の子供』を読んで
私は中村文則が好きだ。今までに読んだ彼のいくつかの作品、『何もかも憂鬱な夜に』や『掏摸』、『教団X』には、空虚な生への諦めと安らかなる死への緩やかな吸引が描かれている。生と死、どちらが人に幸福を与えてくれるのだろうか。
芥川賞を受賞したらしい今作も、中村文則らしい生死の狭間にたゆたう人の姿が描かれている。ひどい虐待を受けてきた主人公が大人になり、生きる活力もなく、何もない、つまらない日常を送る。その描かれ方はリアルで、振り子のように過去と今の記憶が交錯する。(普段の記憶の思