子どもの会話力を引き上げるために、インタビュアーとしての仕事が役に立った話
新年明けましておめでとうございます。
すっかり年が明けてしまいましたが、昨年の思い出を記録に残したいなと思います。
2022年、子どもとの関係作りで1番力を注いだのは、会話力を引き出すために、あれこれと考え、そして奔走したことです。
5歳になったばかりの我が息子。言葉の発達がゆっくりで、現在月齢より半年遅れくらいのコミュニケーション力です。
彼は、単語やボキャブラリーのストックはそれなりに持ち合わせています。
しかし、引き出しから上手に引き出して、組み合わせてアレンジすることが苦手。
つまり、自分で自由に構文が組み立てられないのです。
そのことに気づいたのは今から1年半ほど前のことでした。
この頃から、言葉の発達に関するトレーニング(児童発達支援サービス)に通い始めて今に至ります。
今日は、言葉や会話の発達には、私の仕事が役に立つよなって思い至った。そんなお話をつづっていきます。
言葉や会話は自然に覚えるものだと思っていた
ーー子どもが言葉を習得していく過程って思ったより複雑なんだ
と気づけたのは、月齢を重ねていっても、息子との会話がなかなか広がらない日々の鈍重な変化と、保育園で見る周囲のお友達との会話力に開きが生まれていったことへの焦りから始まります。
子どもが言葉を覚えて、会話を習得していくのは、歩き始めるときのように、自然に営まれていくのかなと思っていました。
しかし、違ったのです。
言葉の一つひとつの意味はわかっていて、そのもの自体は発するのだけど、いざ会話をしようとすると口をつぐんでしまう息子。
私は、会話ができないことももちろんですが、意思を汲み取ることができないことに悩みました。
そこで、言葉のトレーニングをするために発達支援の教室に通い始めます。
その時点で月齢よりおよそ1年遅れくらいの発達度合いのスタートでした。
会話はまず一問一答式でする
しばらくすると、トレーニングの中で、息子は語彙のストックはあるけれど、どう話していいかが分からないんだということに、大人たちは気づきます。
会話をしようとすると「分からない・嫌だ・怖い」と発する息子。
そこで支援をしてくださる言語聴覚士の先生や、親、保育園の先生たちは、気持ちを確かめるために、複数の選択肢をならべて問うようになります。
「それは、嬉しかったのかな?嫌だったのかな?痛かったのかな?」と質問をすると、そこから一択を選んでくれる。
こうして、私は息子としばらくは一問一答式の会話をし続けていきます。
一問一答式を続けることで、はたと自分の仕事のことを思い出します。
「そうか、より気持ちを深掘りして聞いたり、会話を広げるには、自分が仕事でやっていることを再現してみたらよいんだよね」
私の仕事は、取材やインタビューをして記事を書くことです。インタビュイーの言葉にできない想いを引き出すために、様々な角度からあらゆる質問をして深めていきます。
もちろん粒度は違うけれど、仕事でやっていることを子どもにやってみたらよいのかもしれない……!
それからというもの、私はインタビュアーに徹して毎日息子とコミュニケーションをとるようになります。
インタビューを始めた初期の頃は、前述のように選択肢をとにかく沢山並べるようにしました。
まずは頭の中で、語彙が想像できない状態から脱してもらうことを目指していたからです。
「いい・悪い・嬉しい・楽しい・痛い・悲しい・悔しい」など、形容できる単語を並べて、確認してみる。その上で「こういう時にはこう言ってみようね」と、本人に伝えていました。
徐々に言葉が引き出せるようになってきてからは、一歩深掘りです。
「どうして(そう思ったのかな)? なんで(気になったのかな)? どうしたかった?」
と質問をし、またその質問の際に形容できる選択肢を沢山並べてみて、答えを確認します。
地道な過程ですが、これを約1年積み重ねることで、本人の中から思いが少しずつ形になり、センテンスとして生み出されるようになってきました。
教育者の実体験が身に沁みる
以前、元学校教諭の桑原昌之さんを交えて開いた、子育てゆるっと雑談会。
▼会を開いてくれた、ライター仲間の原由希奈さんの記事はこちら
その際にも、子どもの表現を豊かに広げるには、コーチングのように傾聴することが大切だという話になりました。
この傾聴する力とは、まさに日頃仕事で行っているインタビューであり、雑談会の際にも「インタビューって子育てにも役に立つね!」という話になりました。
また、先日子ども向けにイベントやYouTubeを配信しているお笑い芸人の小島よしおさんにインタビューしたときのこと。
彼もまた、子どもの可能性や表現を広げるためには「大人の質問力が大切」と話しており、その点が今でも印象に残っています。
人は自然に身につけ、学ぶ力を持っています。一方でそれが何かのきっかけで欠けていたのだとしても、関わり次第で引き出すことができる。
質問、つまりインタビューには無限の力があり、仕事にしているならこの力を日常で使わないではないよなぁと、思わずにはいられない2022年でした。
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