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祇園囃子の聴こえぬ街へ・1


毎年暦が7月に入ると、それぞれの立場でそれぞれの人が、いろいろな意味で浮き足立つ京都市民。
中には勿論、「あー毎年毎年騒々しいてやっとられんわー」て人もいるかと思います。
でもそんな人も、さすがに今年は微妙な思いをしているのではないかしら。
山鉾が建たない7月がこんなにもさみしいものだとは……。


7月に入って、アーケードや百貨店のBGMがいっせいに祇園囃子に変わると、「ああ夏が来たな」と少しのげんなりさとたくさんのわくわくと共に思います。
巡行に向けて一日一日高まっていく祇園祭の日々は蒸し暑さの上り坂とちょうど同じで、やってくる本格的にカーッと日差しのきつい鍋の底のごとき暑さを思うと、「ああ……」という気持ちになる。
でも祭があれば、暑くたっていいさ、そう思えるのにな。


かつて烏丸御池近辺で働いていた頃は、仕事を終えて外に出ると、あちこちの会所からお囃子を練習する音が聞こえてきました。
それが嬉しくて、烏丸御池ですぐ地下鉄に乗らずに、四条までひと駅歩いてみたりしたものです。
巡行が近づくと、ビルの管理業者から「宵山期間中〜巡行当日まで駐車場は閉鎖します」と通知がまわってくるのが通例です。その時期は一切対応できません、みたいな業者もいるけれど、それは毎年のことだから織り込み済みで誰も気にしない。


宵々々山、宵々山、宵山と、巡行の前夜祭は3晩続く。
仕事の後に、同僚の女性3人集まって、コンビニで買ったお酒片手に屋台を流してまわったのは楽しかったな。
こいびとと待ち合わせて、あちこちの屋台を巡ってお腹を満たしたり。
山鉾から流れるお囃子と、子供の歌うちまきやお守りの売り歌。

街のスピーカーから聴こえる祇園囃子は、少し味気ない。
金気の音や笛の響きが、ナマの音とは全然違うのですね。
生の笛の音は腹の底に響くし、きんきんと鼓膜にくる鉦の音は耳の奥が痛くなる程で、いやが上にも気持ちが盛り上がる。
合間に入る掛け声がぴたりぴたりと揃うのが何とも気持ち良い。


今年は本当にさみしいな。
その穴埋めに、何回かに分けて、とりとめもなく自分にとっての祇園祭の話を書こうかと思います。
よろしくおつきあいください。

ちなみにトップ写真は長刀鉾、2011年撮影。
手前にちらちらと写っている高そうなお着物女性陣は、お稚児さんや禿の子のお母様方です。
この炎天下の中、汗も見せずにパーフェクトな着付けと一糸の乱れも無い髪で美しく微笑みつつ我が子が乗る鉾を見守る、これぞプロ母。

  

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