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年末年始は京の都でパラジャーノフを


急いでこちらの宣伝を激しくやらねばなるまい、と気ばかり急いている内に始まってしまいましたよ、パラジャーノフ特集 in みなみ会館!



でも大丈夫、まだ間に合います!
年末年始は京都でパラジャーノフ祭り!!


書くのが遅れてしまったのは、師走のバタバタさも勿論なんですが、今は無き京都ルネサンスホールでの『パラジャーノフ祭』のパンフレットがどこにいったか見つけられなくて(とほほ)。
表紙はこんな感じです。

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顔が濃い……。


1991年、これが忘れもしない自分にとっての初パラジャーノフ。
だが、なんで観に行こうと思ったのかは、もう全然覚えてません。
特集上映なので期間が短くて、確実に全部観る為に朝からひとりでおにぎり持って映画館に向かい、1日で3本まとめて観ました。
観終わった後は、足が地面から数センチ浮いていて、そのまま自転車に乗ろうとしたら盛大に自転車ごとコケ、でも痛覚もイカレていてちっとも痛くなかった、という記憶が今も鮮明。

観客は自分含めて5人くらいしかいなかったな。
勿論、通しで観てたのなんて自分くらいでした。



簡単に今回の映画説明。
『ざくろの色』は、18世紀にアルメニアに実在した詩人、サヤト・ノヴァの少年時代から亡くなるまでを描いた映画。
『アシク・ケリブ』は貧しい吟遊詩人が愛する娘との結婚を彼女の金持ちの親に断られ、身を立てる為に旅に出る、というロシアのおとぎ話を元にしています。
『火の馬』はウクライナの小説が元で、いわば「ウクライナ版・ロミオとジュリエット」。
『スラム砦の伝説』は、砦を建てるのに失敗を繰り返し、人柱を立ててやっと成功したという土地の伝説を元にした話です。

ちなみに『スラム砦の伝説』、人柱を選ぶのに占いをするのですが、
「 砦を建てる為には美青年の生贄が必要だ 」
とのご宣託が下った際の、
「 ひらめいた! それって俺だよね! 」
と大変な得心顔で頭を半回転させる主人公・ズラプが何とも良いです。



初鑑賞の後は、映画館でかかる度に観ました。
日程の都合で全部は無理な時でも、『ざくろの色』だけはかかさず観に行く。
理屈とか理由とか一切なく、ただただ好きです。
人も色も空も音も大地も風も、流れる血すらも、何もかもが美しい。

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ただ、デジタルリマスタリングした後、ちょっと色が滲んでるような、ピントがボケたような感じがあるのが気にはなる……。
今回の映像はどうかな。クリアになっていることを祈ります。


とにかく最初から最後まですべてが好きなのですが、特筆すべきはやはりソフィコ・チアウレリのこの背筋の伸びた、ただならぬ透徹感だと思う。
特に詩人と王妃、一人二役で想いを寄せ合うくだりがずば抜けて素晴らしい。
殆どまばたきをせず、相手にまっすぐに向けられるそのまなざし。
なめらかな迷いの無い指の動き。
一切の触れ合いもないけれど、確かに交わされる愛と欲望。


音楽も素晴らしい。
青年詩人と王妃が愛を育むシーンの「編み針の歌」も好きですが、「狩りの前の祈り」の賛美歌らしき曲が特に好きです。「アレルヤ」の響きに胸がぎゅうっと絞られる。踊りは何が何だか謎だけど(笑)。


人の人生にいくつかの幸運あれど、わたしの人生で特に大きなラッキーのひとつは10代の内に映画館でパラジャーノフを観られたこと。
やわらかい蝋にぎゅうっと印璽を押すように、こころに深くぴっちりと刻まれました。
お若い皆様、そして幾つになっても美しい映画にときめく若いお心の持ち主の皆様、今すぐみなみ会館へGoですよ!

   

   

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